筋トレとの距離感

『筋肉体操』で話題の小林航太さん 東大出身、仕事は弁護士……でも「自信がないから筋トレしてた」

2018年8月27日から4日間にわたってNHKで放送された5分番組『みんなで筋肉体操』は、筋生理学者の谷本道哉さんが指導者となり、俳優の武田真治さんら3人の男性が筋肉トレーニングの見本を示す内容だ。

NHKが突然始めた筋肉番組にネット上はざわつき、番組の決めぜりふ「筋肉は裏切らない」は、昨年のユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされるほどの盛り上がりを見せた。

当番組に出演し、一躍ブレークしたのが小林航太さん。筋肉の見栄えを競う大会に出場するほか、コスプレイヤーとして各所でたくましい肉体を生かしたコスプレを披露している。東大出身、本業は弁護士という小林さんに、筋肉、筋トレとの向き合い方について聞いた。

「細マッチョ=ガリガリ」と感じていた

――小林さんは、まさに昨年から続く筋トレブームの決定打となった『筋肉体操』に出演されていました。放送後、反響はいかがでしたか?

小林航太(以下小林) 街中で何度か「出てましたよね」と声をかけられたり、こうしてメディア出演の話をいただいたり、結構みんな見てるんだな、と思いました。「弁護士がこんな番組に出るなんて」と批判があるかと思ったのですが、そういう反応は意外となかったですね。

小林航太さん

――筋トレ歴はどれくらいになりますか?

小林 13年3月の終わりくらいからなので、もうすぐ6年になります。法科大学院に進学する直前ですね。もともと僕はコスプレをやっていて、その年の頭のイベントに出たとき、『ジョジョの奇妙な冒険』のカーズをやりました。評判は良かったのですが、当時はまだ細くて、よくいえば細マッチョ、悪く言えばガリガリでした。たまたまそのときに知り合った人が、すごく鍛えた肉体でマッチョなキャラのコスプレをやっているのを見て、自分の体が恥ずかしくなったんです。せっかく筋肉のあるキャラをやるんだったら、自分もちゃんと筋肉をつけてやりたいな、と。それで筋トレを始めました。

――「細マッチョはつまりガリガリ」という認識がすごいですが、最初はコスプレのためだった、と。でも、そのまま細いキャラクターをやる道もあったはずで、そこで筋肉をつける道を選んだということは、もともとマッチョなキャラが好きだったのでしょうか?

小林 そうですね。「筋肉かっこいいな」という思いはありました。それと、コスプレイヤーの男性は数が少ない。せっかく男なんだから、筋肉のついた雄々しいキャラをやりたかった。

――そこからどうやって筋トレを始めたのでしょう。

小林 最初は、地元の公営トレーニング施設に通ってました。ベンチプレスができたりダンベルがあったり、機械もあって最低限必要な器具はそろっていたし、常連の親切なおじさんたちがやり方を教えてくれるんです(笑)。週2、3日は通うようになりました。それこそ器具の使い方がわからないし、重たいものも扱えなくてやきもきしましたが、初めての時より二度目、二度目よりも三度目のほうが重いものが扱えるようになって、それを繰り返していくうちに自然と続けられました。

――筋トレってどうしても「キツくて苦しいもの」と思ってしまいますが、鍛えることはすぐ楽しくなりましたか?

小林 最初は見よう見まねでいろいろやって、体はめちゃくちゃ痛くなりましたよ。1、2週間ではそこまで変化はなかったけど、「とりあえず結果が出るまで続けてみよう」と思ってました。体の変化って、3の単位で来るんです。3週間、3カ月、3年、って。僕の場合は、トレーニングがわかるようになってきて結果が伴ってくるようになるのに3カ月くらいかかった気がします。そこからハマって楽しくなっていきました。

ハードなトレーニングの積み重ねの末、この凛々(りり)しい肉体に。肩がパンパンでシャツがはちきれそうです

ハードなトレーニングの積み重ねの末、この凛々(りり)しい肉体に。肩がパンパンでシャツがはちきれそうです


いつもの姿になってもらいました。見事な逆三角形です

いつもの姿になってもらいました。見事な逆三角形です

自信があったら筋トレはしない

――考え方やメンタルの強さなど、筋肉がついたことで内面的な変化はありましたか?

小林 まず、当然ですがあらためて、地道にコツコツと努力を続けることの大事さは肌身で実感しましたね。続けた分だけ素直に体に反映されますし、手を抜けばそれが反映される。食事についても同じで、いい加減なことをしてると体に出る。日々の積み重ねがどれだけ大事かを再認識しました。それと、多少体の見栄えがよくなって、自分に自信が持てるようになりました。

――それ以前はあまり自信がなかった?

小林 そうですね。特に大学時代なんかは6年も学部にいてくすぶっていた自覚があったので、自信はまったくなかったです。筋トレしてる人ってナルシストに思われがちですが、自分の周りを見ている限りでは全然そんなことないですね。今の自分に自信がないからこそ、筋トレをして自分が理想としている外見に近付こうとしている。自信があったら筋トレはしないんじゃないかな。

小林航太さん

――毎日地道にトレーニングして、同じことを繰り返すうちにできることが増えていくのは、ある種の成功体験だし、自信はつきそうですね。

小林 でも、筋トレは比較的短期間で結果が出るものなので、成功体験としてはちょっと特殊かと思います。たとえば資格試験だったら、それに向けて勉強して合格して初めて結果が出たと言える。筋トレは短期間で大なり小なり成果が目に見えてくるので、これに似た成功体験はあまりないかもしれません。

――ちなみに、当初の目的だったコスプレでは、筋肉がついたことでできるキャラクターの幅は広がりましたか?

小林 いや、それが逆なんですよね。体形にこだわるようになると、今の体で細いキャラはできないし、マッチョなキャラだと「まだ筋肉が足りない」って思うようになってしまって。

ゲーム作品「ストリートファイターIV」のキャラクター「エル・フォルテ」のコスプレ。ポイントはレスラーっぽい肉付き、マスク越しの表情。15年開催の東京ゲームショウにて。(写真提供:本人)

ゲーム作品「ストリートファイターIV」のキャラクター「エル・フォルテ」のコスプレ。ポイントはレスラーっぽい肉付き、マスク越しの表情。15年開催の東京ゲームショウにて。(写真提供:本人)


ゲーム作品「Fate/Grand Order」のキャラクター「オジマンディアス」のコスプレ。こだわりは「肌の色(日サロで焼きました)」とのこと。ニコニコ超会議2018にて。(写真提供:本人)

ゲーム作品「Fate/Grand Order」のキャラクター「オジマンディアス」のコスプレ。こだわりは「肌の色(日サロで焼きました)」とのこと。ニコニコ超会議2018にて。(写真提供:本人)

筋トレは「オタク」的な趣味だ!

――コスプレは一般的にオタク趣味と見られる傾向にありますが、一方で筋トレはアクティブというか、あまり「オタク」のイメージとは結びつかないように思います。その点についてはどうお考えですか?

小林 いや、筋トレってオタク趣味ですよ。だって、いろんな細かいことにこだわるわけじゃないですか。トレーニングのメニューもそうだし食事もそう。自分の好きなことを突き詰めていくわけですから、完全にオタクですよ、これは。しかも自分ひとりで完結する世界で、相当内向的な趣味だと思います。

小林航太さん

――最近では、筋トレをしていない人も『筋肉体操』を見てツイッターで盛り上がっていたり、筋トレ格言集のような書籍が売れていたり、“筋肉を愛しすぎている人”のニーズの高さを感じます。

小林 近いようで遠いからこそ面白がれるというのもあるのではないでしょうか。筋トレしている当事者からすると、“筋トレ万能説”(*)みたいに言われても、「そんな万能じゃないしな」と冷静に見てしまうので……。

*筋トレがフィジカル面の向上のみならず、ビジネス、恋愛、人間関係など多様なシーンで悩みの解決や状況改善、成功に寄与するとする考え方のこと。ツイッターアカウント「Testosterone」氏が発信する筋トレ哲学や、2016年に発売され10万部を超えるヒットを記録した『筋トレが最強のソリューションである』(ユーキャン/著者:Testosterone)などがきっかけとなり、広がりを見せている。

――ちなみに、お仕事で筋肉が役に立つ場面はありますか?

小林 正直、ないです!(笑) 見た目のおかげでお客さんに覚えてもらいやすいというのはありますが、そのほかは全然……。何か生かせないかと思いますが、まだなかなかそういう場面はないですね。あっ、仕事が忙しくても肩は凝らないです。鍛えてるんで!

小林航太さん

PROFILE

斎藤岬

1986年、神奈川県生まれ。編集者、ライター。月刊誌「サイゾー」編集部を経て、フリーランスに。編集を担当した書籍に「別冊サイゾー『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」『DEATH MATCH EXTREME BOOK 戦々狂兇』など。

自己啓発系の筋トレ本がヒット 筋トレは果たして“万能”なのか?

トップへ戻る

羽田圭介「筋トレより大事なことがある」 ビルダー以外の過剰な筋トレは不毛と結論

RECOMMENDおすすめの記事