ノジュール

<第65回>絶品ご当地鍋を目指して真冬の旅へ

松葉ガニ

贅沢(ぜいたく)に盛られた絶品の松葉ガニを鍋でいただく、冬の王道とも言えるひと品

寒い冬の大定番・鍋料理は、その土地ごとの“いちばんおいしい食材”を味わえる料理。旅先で楽しむその醍醐味(だいごみ)は、何物にも代えがたいものがあります。立ち上がる湯気の向こうに旅情が香る、この時季わざわざ足を運んで食べたい逸品から、味と個性が際立つよりすぐりの鍋と宿をご紹介します。

露天風呂付きの大浴場

「なごみの香風の宿 さだ助」の露天風呂付きの大浴場はもちろん温泉だ

まず最初は、冬の海の幸の代表ともいえるカニから。丹後半島から島根県沖の日本海に生息するズワイガニは「松葉ガニ」と呼ばれ、猟の解禁は11月。日本海のなかでもこのエリアはとくにおいしいカニが育つ環境に恵まれ、濃厚で上品な甘みがある松葉ガニは、クセがなくさまざまな調理法で楽しめます。なかでも、だしに凝縮されたうまみの出るカニ鍋は、最高の食べ方と言えるでしょう。兵庫県香住地区にある、創業から約50年の温泉宿「なごみの香風 さだ助」は、地元でも数少ないカニの仲買人が営む宿。

雑炊

カニのだしがたっぷりの雑炊は至福の味わい

目利きの主人によって選ばれたカニの味の確かさにほれ込んで、毎年通う常連客も少なくないというカニの名宿です。刺身(さしみ)、焼きガニ、ゆでガニと、抜群の鮮度だからできる多彩な食べ方は産地ならではで、松葉ガニらしい濃厚な味と香り、甘みとコクが相まって、口福な時間が堪能できます。そしてお目当てのカニ鍋は、たっぷりの昆布だしに野菜とカニを入れてポン酢でいただきましょう。カニの上品さを最大限に引き出したシンプルな食べ方は絶品そのもので、カニのうまみを吸った野菜のおいしさもまた格別です。カニ肉のたっぷりと入った雑炊で締めくくった後は、宿の温泉で極上のひとときをどうぞ。

比良山荘


「比良山荘」は3/15までの冬季は食事のみ。春になったら泊まりがけで出かけたい

「クマほど上品な肉はないと思うんです」。そう語るのは、滋賀県大津市の山あいにある宿「比良山荘」の3代目ご主人、伊藤さん。夏はアユ、冬はジビエなど四季折々の山の幸をいちばんおいしい状態で提供しているこの宿には、全国から舌の肥えた人たちが集まってきます。もともとは猟師の間だけで食べられていたクマの肉が子どもの頃から大好きだったというご主人が、この知られざる美味を多くの人に味わってほしいと試行錯誤の末に完成させたのがクマの鍋。

月鍋

新鮮なクマの肉からは灰汁(あく)が出ないので、だしが最後まで澄んでいる

ツキノワグマの鍋ゆえに「月鍋」と命名されました。食べられるのは猟期が始まる11月から。イノシシ100頭に対してクマ1頭が同じ価値と言われたくらいに貴重なクマ。山でいちばんおいしいものを食べている強いクマしか使わないというご主人のこだわりは、最高な肉質の鍋となって訪れる人たちを喜ばせています。

クマの肉

脂のたっぷりと乗った白身が多いほど、クマの肉はおいしいと言われる

薄切りにしたクマの肉は、純白の白身に少量の赤身のコントラストが美しく、ちょうどいい火加減のところで、クマ肉をしゃぶしゃぶのように野菜のスープにくぐらせていただきます。獣臭さはまったくなく、口に広がる脂の甘さがだしのうまみと相まって思わず頬(ほお)が緩むおいしさ。脂が溶けただしで炊いたネギやセリもおいしい、とても贅沢(ぜいたく)な鍋と言えるでしょう。

仙台牛のテールスープ

仙台牛のテールスープは、セリのうまみが引き立つシンプルな味付け

宮城県は名取市を中心にセリの名産地として知られています。そのセリを葉、茎、根までたっぷり入れたセリ鍋は、そのシンプルなおいしさからこの数年で広がってきた比較的新しいご当地鍋です。

オーベルジュ 別邸 山風木

「オーベルジュ 別邸 山風木」の自家源泉掛け流しの温泉

「オーベルジュ 別邸 山風木」は、地元の農家から特別に仕入れた有機無農薬栽培のセリを使った鍋で注目の宿。普通は捨ててしまう根っこも根菜に似た、土のいい香りとほのかな苦みがクセになる味わいで、人気を呼んでいます。1日以上煮込んで丁寧に仕上げた仙台牛のテールスープをベースにしただしに入れていただくセリは、シャキシャキとした歯応えと爽やかな薫りが口いっぱいに広がり、ひと足早く春の気配を感じさせるまさに逸品。夕食時には季節や料理に合わせた地酒やワインが用意されていて、好みのものを無料でいただけるのもうれしいサービスです。

クエ鍋

クエは皮と身の間にコラーゲンがたっぷり。甘みと歯応えが特徴だ

天然の本クエといえば、その希少さと質の高さから「幻」とも称される最高級の海の幸。その天然本クエを求めて、秋から3月末にかけて全国から食いしん坊たちが訪れるのが、和歌山県湯浅にある「小宿 栖原温泉」です。明治25年の創業以来「紀州のかくれ湯」として愛されてきましたが、現在は和歌山県の新鮮な魚介を楽しめる料理宿として親しまれ、ここでは“クエ尽くし”のコースが人気です。なかでもクエ鍋は、そのいかつい姿からは想像もつかないほどに上品な味わい。コラーゲンたっぷりの脂を蓄えた身のプリプリとした歯応えが見事で、うまみが口の中いっぱいに広がります。自家製ポン酢がさらにクエの脂のうまみを引き立てて、日本酒が進むことうけあい。鍋を堪能した後のお楽しみは、ここでも雑炊をどうぞ。凝縮しただしを余すところなく味わって、この絶品鍋の締めくくりとしましょう。

小宿 栖原温泉

「小宿 栖原温泉」の客室は全5室。和洋さまざまなタイプがそろっている

「鍋と宿」特集のほかにも、ノジュール1月号は巻頭で「寿(ことほ)ぎの京都 “美”のこころ」を大特集。多くの文化財が特別公開される「京の冬の旅」のコンセプト「京都にみる日本の絵画」を主軸に、芸術美、伝統美、自然美から和食の美まで。モデルプランやストーリーのある旅を通して、冬の京都の持つ凛(りん)とした美しさをご紹介しています。さらに第3特集では、今年の「いい旅」をおススメする「ベストGO! 2019 旅の達人が選ぶ旬な旅先」をご紹介。旅のトレンドと旬のお出かけ先を、12カ月カレンダーを入れて分かりやすくお伝えしています。誌面の一部は、立ち読みページのあるホームページからもご確認いただけますので、ぜひご覧ください。

■ノジュール:鉱物学の専門用語で硬くて丸い石球(団塊)のこと。球の中心にアンモナイトや三葉虫の化石などの“宝物”が入っていることがある。

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