“日常生活に潜む危険”をミニチュア彫刻で表現
トーマス・ドイルの日本初個展「HOLD YOUR FIRE」

ニューヨークを拠点に活動しているアーティスト、トーマス・ドイルさんの日本初個展が、東京・渋谷のDIESEL ART GALLERYで開催されている。

会場には、高さ2メートルにも及ぶ大きな作品に加え、ミニチュアの数々、マクロ撮影によってフィギュアのディテールを捉(とら)えた写真作品などが並ぶ。

本展のメイン作品であるミニチュアアート「Mire」は、宙に浮いた三つの家が地上に開いた巨大な穴に吸い込まれていくようにも見える異様な状況下で、帰宅途中とおぼしき男女が傾く家に歩みを進める光景を描く。

当たり前のように繰り返している私たちの日常は、意図しない、あるいは予期しない事柄によって突如一変し、いとも簡単に覆されてしまうことを表現している。

他の作品にも「不穏さ」があふれている。例えば、一見ありふれた住宅の前を歩く二人組を描いたミニチュアアート。しかし、作品の裏側に回ってみると、安全であるはずの家の中には武装した人間が潜んでいる。

家の前で子供たちが遊ぶすぐ側には塹壕(ざんごう)があり、戦闘服に身を包んだ軍人らが何やら会話をする、不穏な臭いが漂う作品もある。

これらの縮尺模型によって構成された小さな作品には、ドイルさんが感じた「孤立」「別離」「危機」のイメージが込められているが、それは「家庭」や「安定」を求める普遍的な願いでもあるという。

平和な日常や安定した家庭、人間同士が憎み合う戦争や不安定な情勢など、視点を変えることであらわになる世界のさまざまな側面。幸せと、それを脅かす危機は、隣り合わせで存在していることが、この展示からうかがえるだろう。ギャラリー内は、さまざまな角度から作品を眺めながら回遊できるレイアウトになっている。小さなフィギュアたちが現代社会へ訴えかける警鐘に、耳を傾けてほしい。

(文・山田敦士)

PROFILE

Thomas Doyle (トーマス・ドイル)

アメリカ・ミシガン州出身。1976年生まれ。現在はNY在住。画家、版画家としての経験と、幼少期から魅了され続けている縮尺模型を織り交ぜて創られるドイルの作品。1/100~1/43スケールで制作された彫刻の数々は、自然による静かな惨事にさらされた人物が多く描かれる。ドイルの作品はこれまで、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの美術館やギャラリーで展示されており、「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」「ニューヨーカー」「ニューズウィーク」などの誌面にも登場している。2009年にはウェスト・コレクション「購入賞」を受賞、マクダウェル・コロニーのフェローシップも獲得。http://www.thomasdoyle.net

 

EXHIBITION
HOLD YOUR FIRE Thomas Doyle(トーマス・ドイル)

2018年11月23日(金)〜2019年2月13日(水)
DIESEL ART GALLERY
東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti B1F
11:30-21:00(休館日:不定休)
入場無料

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