私の一枚

気象予報も酒場放浪も「大切なのは仕事を愛すこと」 葉加瀬太郎の演奏を聴いて気づいた弓木春奈

気象予報も酒場放浪も「大切なのは仕事を愛すこと」 葉加瀬太郎の演奏を聴いて気づいた弓木春奈

先生からレッスンを受ける弓木さん。手元には目印のシールが

2年前に趣味でバイオリンを始めました。この写真はまだ習い始めたばかりの頃。よく見ると、指で押さえるところに目印のシールがついていますよね。少しでも違うところを押さえると音が狂ってしまうので、最初のうちはこのシールが頼りです。

大人になってから新しいことを始めることは勇気がいります。私が通った教室の先生は、まずは演奏を楽しむことを教えてくれました。最初は音を出すだけでも難しくて、ギーギー鳴ってばかり。でも、教本通りに進めるのではなく、“自分の好きな曲を弾きましょう”と言ってくれました。私は葉加瀬太郎さんの演奏をきっかけにバイオリンに興味を持ったので、「葉加瀬さんの曲が弾きたいです!」と先生にお願いして、そこからレッスンが始まりました。

人を魅了する力に感動した「エトピリカ」

葉加瀬さんの音楽に興味を持ったのは大学1年生の時。スポーツの授業の準備体操でストレッチをしている時に、葉加瀬さんの「エトピリカ」という曲が流れたんです。“なんて癒やされる、人を惹(ひ)きつける曲なんだろう”って感動して、それ以来、毎年コンサートに通うようになりました。

葉加瀬さんのコンサートは、ただ楽しいだけではなくて、素晴らしいエンターテインメントだと思います。葉加瀬さんは、心からバイオリンがお好きで演奏を楽しんでいらっしゃる。そのことが伝わってくるんです。とても輝いて見えて、これがプロなんだと感じました。

それは教室の先生も同じで、バイオリンを弾く姿がキラキラして見えます。そうした姿を見るうちに、“プロとは、自分の仕事を心から愛し、心から楽しむ人のことだ”と考えるようになりました。

人の命に関わる情報を伝えることの自覚が強くなってきた

気象予報士を目指したきっかけのひとつは、梨農家をしていた祖父の存在です。ある年、ちょうど収穫の時期に雹(ひょう)が降ってしまい、せっかくの梨が台無しになってしまいました。もう売り物にならなくなった梨を見て、がっくり肩を落とした祖父の姿が、ずっと頭に残っていたんです。それから何年か経って大学生になり、自分の将来を考えた時に、パッとあの時の祖父の姿が浮かんで、天気予報に関わることで祖父の力に少しでもなれたらなと思うようになりました。

そして、自分ではまったく意識していなかったのですが、私は小さい頃からよく空を見ていたそうです。気象予報士に合格した時、祖母に「合格したよ」って伝えたら、「春奈は小さい頃から空が好きだったもんねえ」と言われました。仕事柄、今でもよく空を見上げますが、ふと時間を忘れることがあります。見上げすぎて、たまに道路の段差につまずいてしまうことも(笑)。それくらい、空が好きです。

正直にお話しすると、気象予報士になって5~6年の頃までは、天気予報を伝えたいという思いと、テレビに出たいという気持ちが心の中で半分ずつを占めていました。でも今は、“天気予報を伝えたい”という気持ちが10割です。

気象災害が増えているいま、天気予報は人の命に関わる情報も伝える仕事ですから、自覚や自信も必要です。自分の仕事を愛し、心から楽しむことを葉加瀬さんや先生の姿に学んだことで、私の中でもここ1~2年でそういう気持ちが強くなってきました。

2017年に本を書かせていただいたことも、自分の意識を変える大きなきっかけでした。未来のことを予報するためには、過去のことを知ることも必要です。人生で一度遭遇するかどうかという規模の大きな災害だとしても、歴史をさかのぼると、同じような規模の災害が一定のサイクルで何回も起きていることがあります。被害による悲劇を繰り返さないためにも、先人が伝えてきた過去の災害の情報を未来に伝承していかなければならない。それも私たち気象予報士の仕事の一部だと思って書きました。

気象予報も酒場放浪も「大切なのは仕事を愛すこと」 葉加瀬太郎の演奏を聴いて気づいた弓木春奈

弓木さんの著書『気象災害から身を守る大切なことわざ』(河出書房新社)

まさかのオファーだった『おんな酒場放浪記』

天気予報は、テレビやラジオで伝える時間は2~3分ですけど、そのために天気図を解析したり、原稿を書いたりするデスクワークの時間がとても長いんです。そんな毎日を送る中で、仕事後にバイオリンを練習する時間は、私にとって大切な息抜きの時間です。バイオリンをはじめて2年。なかなかうまくはなれないですけど、どんどんバイオリンを弾くことが好きになっています。まだ人前では一度も披露したことがないので、それが今後の目標かな。

この1月からは、BS-TBSの『おんな酒場放浪記』に出演させていただいています。私は、今までそんなにお酒好きをアピールしていないつもりだったんですけど、ツイッターやブログに投稿した、飲んでいる時の写真をプロデューサーの方が見て、「こいつは酒好きだな」って思ったみたいです。グラスを持ち慣れているとか、そういうところで(笑)。

まさか大好きなお酒が仕事になるとは思ってもみなかったので、わくわくしました。でも、テレビで天気予報以外の仕事をするのは初めてだったので、最初のロケでは緊張でガチガチでした。“私には向いてないな”とネガティブな気持ちになりそうだったのですが、スタッフの方が言ってくれた「ただ楽しめばいいんだよ、そうしたら伝わるから」という一言で緊張がほぐれました。楽しむという意味では、これもプロとしてのあり方と一緒だなと思っています。せっかくいただいたお仕事ですので、これからも思いっきり楽しみたいです。

もちろん、気象予報士としてもしっかりプロ意識を持って、この先、もし気象災害が起きた時に、1人でも犠牲になる方を少なくできるように、できるだけ正確で間違いのない天気予報を提供したいですし、自分の身を守るために必要な情報も、たくさん発信していきたいです。

(聞き手 髙橋晃浩)

気象予報も酒場放浪も「大切なのは仕事を愛すこと」 葉加瀬太郎の演奏を聴いて気づいた弓木春奈

1月から『おんな酒場放浪記』に出演。活動の幅を広げている弓木春奈さん

ゆみき・はるな 1986年、埼玉県生まれ。青山学院大学在学中に、気象予報士の資格を取得。大学4年生だった2008年からTBSニュースバードで気象キャスターを務める。2011年からはNHK総合『おはよう日本』に出演。2014年からはNHKラジオで気象予報を担当。最近では、地元埼玉県を中心に講演会の活動も行っている。出演中のBS-TBS『おんな酒場放浪記』は毎週金曜午後11時より放送中。

PROFILE

髙橋晃浩

福島県郡山市生まれ。ライター/グラフィックデザイナー。ライターとして有名無名問わず1,000人超にインタビューし雑誌、新聞、WEBメディア等に寄稿。CDライナーノーツ執筆は200枚以上。グラフィックデザイナーとしてはCDジャケット、ロゴ、企業パンフなどを手がける。マデニヤル株式会社代表取締役。

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