THE ONE I LOVE

“2019年最重要アーティスト”中村佳穂が聴き込む愛の5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんかーー。&M編集部がセレクトした“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。今回は、米津玄師さんにその才能を絶賛され、複数の音楽番組で「2019年ブレイク候補」の上位に名を連ねたことで一気に音楽シーンに現れた話題の人・中村佳穂さんがセレクトする愛の5曲をご紹介。

中村佳穂さんは、好きになった曲をずっと繰り返し聴くという。そのアーティストのほかの曲やアルバムを聴くのではなく、まず魅せられた曲を聴き込む。好きになる曲に共通しているのは、「えも言われぬ感情」が湧き上がってくること。相反する複雑な感情が入り交じり、何もできなくなる瞬間。その物悲しさに、中毒性を感じるのだという。

 

<セレクト曲>
・加藤和彦、北山修「あの素晴らしい愛をもう一度」
・ザ・フォーク・クルセダーズ「悲しくてやりきれない」
・Bobby Hebb「Sunny」
・José González「Killing for Love – With the Brite Lites」
・中村佳穂「そのいのち」

 

■加藤和彦、北山修「あの素晴らしい愛をもう一度」

映画『パッチギ!』のエンディングで流れているのを聴いて好きになった曲です。「あの愛がもう一度ほしい」と言っている人の、どうしようもない気持ちを想像すると虚しさが込みあげてきますが、そこに中毒性がある。メロディラインも美しくて、ライブでカバーしたこともあります。映画はあまり見ることがなく、『パッチギ!』のようにたまにパッと気になって興味が湧くことがあるくらい。インプットというものを意識したことがないんです。

 

■ザ・フォーク・クルセダーズ「悲しくてやりきれない」

高校時代、自転車通学の途中で信号待ちのときに、美術部の友だちが鼻歌で歌っていて「なにそれ、ストップ!」と止めて、教えてもらいました。でもそのときは友だちも曲名までわからなくて最後まで歌ってもらって、あとで歌詞を検索してやっと曲に辿り着きました。
心がスッとさわやかになったり、普段の生活から道が外れたような気持ちにさせられたり、そういう感覚と出合える曲がすごく気になります。「悲しくてやりきれない」を知ってからは、何度も繰り返し聴いて、次に自分で歌ったものを録音して聴いていました。そうして自分の感情に向き合っていたんです。高校生のときは絵を描いていて、この曲を聴き込んで生まれた感情を絵に落とし込んでもいましたね。

 

■Bobby Hebb「Sunny」

メロディラインが本当に好きで、明るくていい曲だなと思っていました。でもあるとき歌詞を調べてみると、実は兄が亡くなったことを歌っていた。それを明るく説明していることに感銘を受けました。悲しく歌っていたら、きっと私には響かなかった。ある個人に向けた歌を、何十年後に、遠く離れた土地で、何も知らない日本人の女の子に歌われているなんておもしろいですよね(編注:ボビー・へブは米国のR&B/ソウル歌手。本作は1966年リリース)。この曲からは「悲しいことを悲しく歌わなくてもいい」という、感情と正反対の表現をする方法論を学びました。

 

■José González「Killing for Love – With the Brite Lites」

この曲に出合ったのは「巡っていく」ということに対して、不安と同時に愛を感じているときでした。たとえば小さな子どもを見たときに、彼らの現在こそがピークであり、(自分の年齢では)もう置いていかれてしまうのではないかという不安や焦りを感じます。同時に「彼らに何かを伝えられるだろうか」という前向きで楽しい気持ちも湧いてくる。いろいろな感情がごちゃごちゃになるけど、その分、回答もたくさんある。ゆえに空虚になってしまうという「えも言われぬ気持ち」になります。そんな感情に何度もなることが重要で、この曲を聴いたときもそう感じました。

 

■中村佳穂「そのいのち」

この曲は、(4曲目にセレクトした)ホセ・ゴンザレスの曲から影響を受けていて、「巡っていく」ということを意識して書きました。実はホセ・ゴンザレスの歌詞の内容は、あまり腑に落ちていません。なのに、わからないまま1カ月間聴き続けていました。わからないということも決して悪いことではないのだなと思って、日本人にもわからない日本語詞にしてみようと思って書いた曲が「そのいのち」です。
この曲では、歌詞にあまり具体性や意味を持たせ過ぎないように意識していて、意味がわからない部分はピアノを弾きながら音の感覚だけで歌い、あとから書き起こしたものを「言葉のように」整えただけ。私はその瞬間の自分の感情に正直に歌っています。レコーディングも「一筆書き」みたいな一発勝負。歌うときの感情が言葉に反映されるので、ライブのときも歌詞がどんどん変わっていくんです。

 

■プレイリスト

 

■中村佳穂最新アルバム『AINOU』

■Profile
中村佳穂(なかむら・かほ)
1992年生まれ、京都出身のミュージシャン。20歳から本格的に音楽活動をスタートし、圧倒的なライブパフォーマンスがうわさを呼ぶ。ソロ、デュオ、バンド、その音楽性は様々な形態で拡張し続けている。独創性の高い演奏スタイルは国内外を問わず評判となり、彼女に共鳴する輪は現在も広がりを見せている。

2016年『フジロックフェスティバル ’16』出演。2017年tofubeats『FANTASY CLUB』コーラス参加。imai(group_inou)『PSEP』コーラス参加。ペトロールズ『WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?? -EP』参加。2018年にアルバム『AINOU』を発表。

 

【LIVE SCHEDULE】

2月21日(木) 「GRAPEVINE SOMETHING SPECIAL」@名古屋・CLUB QUATTRO

2月22日(金) 「GRAPEVINE SOMETHING SPECIAL」@大阪・BIG CAT

3月1日(金) 「GRAPEVINE SOMETHING SPECIAL」@東京・マイナビBLITZ赤坂(※SOLD OUT)

3月24日(日) 「F-X2019」@福岡・Zepp Fukuoka

3月29日(金) 「MOCKY JAPAN TOUR 2019」@広島・CLUB QUATTRO

3月30日(土)、31日(日) 「第二回 うたのゆくえ」@京都・VOXhall

4月14日(日) 「SLOW DAYS」@大阪・服部緑地野外音楽堂

5月12日(日) 「RHYMESTER presents 野外音楽フェスティバル 人間交差点 2019」@東京・お台場野外特設会場

5月12日(日) 「the UNi Music Festival」@千葉県松戸 森のホール21 小ホール

5月25日(土)・26日(日) 「GREENROOM FESTIVAL ‘19」@横浜赤レンガ地区野外特設会場

 

<関連リンク>

中村佳穂 オフィシャルサイト
https://nakamurakaho.com/

中村佳穂 (@KIKI_526) | Twitter
https://twitter.com/kiki_526

AINOU STAFF (@nkaho_staff) – Twitter
https://twitter.com/nkaho_staff

中村佳穂 Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCFz7VUruISQZK873k1izVtQ/featured

(企画制作・たしざん、ライター・大草朋宏)

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