小川フミオのモーターカー

パワフルなイメージを演出するフェイス 「ボルボ164」

ヘッドライトとラジエーターグリルが大きいと、クルマはパワフルでカッコよく見える。と、大胆に言い切ってしまいたくなる、特徴的なスタイリングの大型セダンが「ボルボ164」だ。

1968年に米国を中心に世界各地の高級車市場を狙って発売されたモデルで、自社開発の3リッター直列6気筒エンジンを搭載していたのがニュースだった。

当時のボルボの車名はわかりやすく構成されていた。このモデルの場合「6」は6気筒、「4」は4ドアの意味である。ベースになったのは66年発表の「144」。その後の大ヒット「240」シリーズにつながる(れんがのようなと形容された)四角いボディーを持った新世代のボルボ車である。

4615mmの全長に2700mm(発表当時は2680mm)のホイールベースと余裕あるサイズ感がいい

4615mmの全長に2700mm(発表当時は2680mm)のホイールベースと余裕あるサイズ感がいい

6気筒以上のエンジンのことをマルチシリンダーと呼んだりする。気筒の数がプレスティッジ性を意味するのは戦前からで、高収益の高級路線を視野に入れたボルボにとって、6気筒エンジンは必要なものだったのだ。

乗用車としては、1950年に「PV60」の生産中止いらい、久しぶりの6気筒だった。ただし74年にははやばやとプジョーとルノーとの3社共同開発のV型6気筒に変更されてしまった。設計年次の古い4気筒がベースだったので、当然の流れだったのだろう。
デザイン的にも十分なプレスティッジ性を感じさせた。ボディーの厚みに対して、やや小ぶりに仕上げたキャビンのバランス感も絶妙だ。とりわけ初期の欧州仕様の小型バンパーをつけた仕様だと、グリルが大きくて(=エンジンが大きくて)バンパーがその重みでたわんでいるようなイメージである。パワフル感を出す演出だ。そこがうまいなあと私は思う。

クロムのトリムを生かしたテールエンドのデザインも秀逸

クロムのトリムを生かしたテールエンドのデザインも秀逸

リアもいいかんじだ。小ぶりの縦型コンビネーションランプをクロムのモールがぐりると取り囲んでいる。品のいいかんじのデザイン処理である。すぐにこのクルマだと知れる個性にもなっている。

1970年のモデルのレザーシート仕様

1970年のモデルのレザーシート仕様

ここに写真はないのだが、内装は安全設計が採り入れられて、衝突安全性のために合成樹脂が多用されている。シートはファブリック張りとレザー張りがあり、ぶ厚いクッションで、デザイン性も高い。

ボルボは早くからデザインと質感を通して自社製品の個性を確立することの重要性に気づいていた。それは現在にいたるまで変わらないポリシーといえる。その核にあるのが60年代のモデルである。日本でもいまの20代がこの頃のボルボ車に魅力を感じるというのも、故亡きことではないのだろう。

米国市場向けに73年から大型バンパーが採用されてしまった

米国市場向けに73年から大型バンパーが採用されてしまった

リアクオーターにサイドウインドーを設けて後席の居住性の高さをアピールするのがボルボの流儀

リアクオーターにサイドウインドーを設けて後席の居住性の高さをアピールするのがボルボの流儀

写真=Volvo Cars提供

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

モチーフは“ライフセーバーが見守る小屋”
「ホンダ・エレメント」

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