「現役女子高生」からの飛躍 20歳で活躍する気鋭の写真家・石田真澄の写真展『evening shower』

17歳で写真家になり、自身の高校を舞台に3年間撮りためた写真集『light years -光年-』を18歳で発表。「現役女子高生写真家」として、一躍話題の人になった写真家・石田真澄。彼女が20歳という節目を迎えたタイミングで、高校卒業後の日常を撮影した写真をまとめた個展を開催している。さまざまな広告や、ファッション雑誌でのエディトリアル仕事を経たいま、彼女は何を思い、どんな景色をすくい取り、展示物として表現したのか。『evening shower』というタイトルに込められた思いについて聞いた。

写真家・石田真澄の写真展『evening shower』
筆者は2017年の初夏、はじめての個展を間近に控えたタイミングで、石田さんにインタビューをしたことがある。その際、石田さんは「“光”や日常における“キラキラしたもの”が好き」と語り、「過ぎ去っていく時間への執着にも似た感情がある」とも話していた。今回の個展までの間に、自身の感覚や撮影する対象物に変化はあったのだろうか。

「光や動いているもの、水などがずっと好き。良いなと思う瞬間や、撮る写真は変わっていないと思います。あの頃と違うのは、撮影する枚数も高校時代に比べて倍ぐらいに増え、そして自分が何が好きなのかを自覚できるようになったということ。これまでは、撮影した後にそうした写真が多いなと気付いたり、『光の写真が好きなんだね』という指摘で気づかされたりしていました」

写真家・石田真澄の写真展『evening shower』
石田さんは高校卒業後、カロリーメイトの企業広告写真に作品が抜擢(ばってき)されたほか、雑誌「GINZA」をはじめとした紙媒体での撮影や、ファッション撮影など、さまざまなキャリアを重ねている。20歳の若手写真家として注目を集める石田さんだが、本人は周囲の反応を気にせず、落ち着いた自然体でいるように見える。しかし、今回の個展のステートメントは「少しでも見えたその光を信じるしかないし、違う自分を肯定することも必要だと思えるようになった」という言葉で結ばれる。彼女にも葛藤はあったということだろうか。

「正直、学校は楽しくありませんでした。でも今、環境が変わってさまざまなお仕事をさせてもらうなかで、『今は今で楽しい、過去は別物』だと思えるようになりました。過去と今に同じ楽しさを求めなくなったような感じです」

今回展示されている作品群は、彼女が常日頃、無意識的にシャッターを切ったものからよりすぐった。自分の写真を客観視できなくて、選ぶのに苦労したそうだ。

「広告写真が大好きで、街にある広告物を、常に鑑賞者と作り手側双方の気持ちで見ています。これはもうほとんど習慣。そして、いざ自分の仕事以外の写真となると、本当に選ぶのが難しい。ただ、シャッターを切る瞬間は、鑑賞者のことなどを考えていないのですが、改めて見返した時に自分が好きなものが分かるようになったので、前より迷う幅は狭まりました」

会場では、静かで、ともすれば見過ごしてしまいそうな瞬間を切り取った作品が額装されて並んでいる。人気(ひとけ)はほとんどない。けれども、「彼女自身の感情を突き動かした瞬間」がそこに存在する。

写真家・石田真澄の写真展『evening shower』
「振り返ると、いつもキレイでキラキラとしていて、整った瞬間ばかりという日常を過ごしてきたわけではありませんでした。『生きていく中で楽しいことだけではなかった』ということを、今までの作品では表現できていなかった。今回は、一枚一枚積み重なった写真を鑑賞するというよりは、来場した人たちの手でめくれるような作品もテーブルに置きました」

手にとることのできる展示物を見ると、そこには小さいながらも確実な感情の変化を感じとることができる。個展のタイトルを『evening shower』にした意図はなんだろうか。

「evening showerは『夕立』という意味です。夕立の後って独特のにおいがして、印象に残りますよね。写真も、その一枚を見ると、撮影した前後の記憶を明確に思い出せる。どこで、どんな人と出会って、何をしたのか。それが面白いと思っていて、その場面に存在していた記憶を、忘れたくないということが根本にあるんです。私は自分で撮った一枚を見ると、100の記憶が降り注いできます。そこも夕立に似ているなって」

20歳になった彼女は、「過去」、あるいは通り過ぎてしまうものに縛られることなく、「今」の中にある美しさや尊さを見出している。

写真家・石田真澄の写真展『evening shower』

「私はもともと、写真を職業にすると決めてない状態で、撮影の仕事を始めました。元々の夢は、広告代理店か、雑誌の編集部に入ること。それがありがたいことに、私の写真を評価してくださる人たちのおかげで、お仕事をさせていただいていて。でも、いつまで続くかまったく分からない世界ですよね。今は楽しいけど、もともとの性格上、終わった後の悲しさを考えてしまう。そんな性格なんです」

写真家・石田真澄の写真展『evening shower』
「でも私が今いる状況は、まったく光が見えないわけではありません。仕事をいただけたり、展示ができていたり。だから、少しでも光が見えている状況ならやり続けたいです。未来への不安もありますけど、最近、ちょっと自分に活を入れています。不安に思っているなら、まずは一回やってみようって」

彼女は、今置かれた状況が永続的には続かないかもしれないということを、20歳ながらに、いや20歳だからこそ痛切に自覚しているようだ。では、いまどんな自分自身の未来像を描いているのだろうか。

写真家・石田真澄の写真展『evening shower』

「勝手に撮っていると思うんですよね。結局、好きなものだから。撮らなくてはいけない、みたいなことも今はないですし。欲として写真を撮っているのかな」

写真家・石田真澄の写真展『evening shower』
皆が「いいね」と言いたくなる写真を撮ることが求められがちないまの時代。そうした周囲の眼とはかけ離れたところで、彼女は日々シャッターを切っている。

そんな日々を切り取った19点の写真群。粗削りかもしれないが、日々の小事に心を揺さぶられた作品に触れることで、彼女の記憶や感情にも、触れることができた。

(文・冨手公嘉 写真・玉村敬太)

写真家・石田真澄の写真展『evening shower』

<会期情報>
会期:2018年2月2日(土)〜2月24日(日)
時間:11:00~20:00
※土日・祝日のみ営業
会場:QUIET NOISE arts and break
住所:東京都世田谷区代沢2-45-2 1F

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