インタビュー

声優・悠木碧が目指すもの「“姿”と“魂”を作れる人に」

3月8日より公開が始まるCGアニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』。2019年の第76回ゴールデン・グローブ賞アニメ作品賞、第91回アカデミー賞長編アニメーション賞を受賞した話題作だ。本作は、異なる次元のスパイダーマンが集結する世界を舞台に、新たなスパイダーマンの誕生を描く。

スパイダーマンの一人、スパイダー・グウェンことグウェン・ステイシーを演じるのは声優の悠木碧。彼女に本作の見どころやアフレコの裏側を聞いたほか、声優としての“これまで”と“これから”を語ってもらった。

長編作品でここまでしゃべるキャラクターの吹き替えは初めて

『スパイダーマン』シリーズでおなじみの主人公、ピーター・パーカーは本作の冒頭で退場してしまう。次世代のスパイダーマンを担うのは、13歳のマイルス・モラレス。そして、彼を引っ張っていくのが異次元からやって来たもう一人のピーター・パーカーだ。

「子どもが共感できる主人公と大人が共感できる主人公の二人がいるので、大人でも子どもでも必ず感情移入できるポイントがあります。私自身、心の中にあるまだ子どもの私、もうすっかり大人になった私、そのどちらも共感していました。きっと見た方同士で語り合うと、“あそこいいよね!”と一致するところもあれば、“そういう見方もあったのか!”と新たに気付かされるところもあるので、見た方一人一人に感想を聞いてみたいです」

悠木碧が演じるグウェンは、マイルスの同級生として登場する。転校してきたばかりの謎に満ちた少女だ。悠木はグウェンに対し、どんな印象を持ったのだろうか。

映画『スパイダーマン:スパイダーバース』

スパイダー・グウェン

「最初はクールでミステリアス、後半になるにつれメンタルの強さやキュートさが見えてくる、男女関係なくみんなが憧れるような女の子です。日本のアニメだと、クールなキャラクターってツンとしていて冷たいとか、自分の弱さを隠すために自分の殻に閉じこもっているとか、そういう描かれ方が多いのですが、グウェンちゃんのクールさは少し違います。自然体のカッコよさがあるんです。何事に対しても気取らず、さりげない。だからこそ、たまに見せるキュートさが引き立つんです。演じる上では、カッコつけずにカッコよくするにはどうしたらいいかを考えるようにしました」

アニメのアフレコと外国映画の吹き替えでは収録方法が異なる。アニメが映像と台本を交互に見ながら演じるのに対し、外国映画の吹き替えは映像と台本を見るだけでなく役者の声(原音)を聞きながら芝居をしなければならない。「吹き替えの経験はあるが、長編作品でここまでしゃべるキャラクターを演じるのは初めて」だという悠木に、収録について振り返ってもらった。

「原音を聞きながらお芝居するので、最初は混乱しないように気をつけようと構えていました。ですが、いざやってみるとグウェンちゃんの声がすんなり入ってきて。原音がグウェンちゃんそのものだったんです。これを道しるべにすれば絶対に間違うことはないという安心感がありました。もちろん英語と日本語とではセリフの盛り上げ方が違うので、日本語で楽しんでもらうための工夫はありますが、先ほど話した“カッコつけずにカッコつけるお芝居”が伝わってきたので、のびのび演じることができました」

【動画】悠木碧さん「メンタルが最も男前なのはグウェンちゃん(笑)」(撮影・高橋敦)

改めて、本作の見どころについて聞いた。

「“勇気”“愛情”“仲間”って、言葉にはしやすいのに使われすぎて素直に受け入れるのが難しくなった時代ですよね。でも『スパイダーマン:スパイダーバース』は、“やっぱり、こういうことが大事なんだよ”って、改めて“勇気”“愛情”“仲間”の大切さに気付かせてくれるんです。しかも、その王道のテーマが誰もが楽しめるストーリーとハイセンスな映像で表現されている。私は、台本を読んでストーリーを知っているはずなのに、試写会で3回も泣いてしまいました(笑)。この作品が世界で公開されることがうれしいです」

エンターテインメント性あふれるストーリー、その根底にある王道のテーマ、そして最新鋭のCGアニメーションと手描きアニメーションの技法を組み合わせた斬新なビジュアル。見どころ満載の映画が、いよいよ開幕する。

『スパイダーマン:スパイダーバース』

映画『スパイダーマン:スパイダーバース』より

「需要に応えなきゃ」から「作れる人になりたい」へ

悠木は子役として活動を開始したが、2008年に放送されたアニメ『紅』でヒロイン・九鳳院紫役を演じて以降、声優としての活動がメインとなり、『魔法少女まどか☆マギカ』、『君の名は。』、『妖怪ウォッチ』などの話題作に出演してきた。26歳ながら、声優としてのキャリアはおよそ15年以上。その間、仕事への向き合い方に変化はあったのだろうか。

悠木碧さん

「CG映画なのに、コミック表現がたくさん出てきて素敵。ハイセンスーって思いました」

「今までは自分に求められるものに応えなきゃ、応えなきゃという使命感がありました。声優の仕事がそういうものだというわけではないんです。芸ごとにファンからの期待はつきものですし、もちろん今も需要に応えたい気持ちはあります。ですが、最近は“自分のやりたいことをやるのも、私に求められていることだ”と気づいたんです。多くの人に楽しんでもらえるよう精進すべきではありますが、極端に言えばお芝居のうまい下手は受け手の好みなのではないかと思います。だとすれば、私は私のどこが好きなのか、何がしたいのかにまずは向き合うことが大事なのではないかと考えるようになりました。

でも、昔から変わっていないこともあります。アニメの画がキャラクターの姿を表現し、脚本がその魂を表現しているとすれば、私たち声優がしていることは姿と魂をつなぐ作業です。これをいかに滑らかにつなぐか。ずっと考え続けなければいけないなとつねづね感じています」

最後に今後、どんな声優を目指していきたいかを尋ねてみた。すると、意外な答えが返ってきた。

「作れる人、になりたいです。今まで与えられてきた“姿”と“魂”を、自分でもいつか作ってみたい、そんな夢があります。『スパイダーマン:スパイダーバース』のような新しい画作りの作品を見せていただいたり、吹き替えのようなあまり経験のないことをやらせていただいたりすると、すごく勉強になるんです。と同時に、(脚本や画などの)作り手側は何を考えているのだろうって思うんです。自分も作り手になってそれを理解できないと、良いお芝居ができないのではないかと思ってしまって……。創作って容易なことではないですし、私に求められているのかどうかもわかりません。でも、自分の学びとして、もの作りという経験をしてみたいです」

(文・岩倉大輔、写真・花田龍之介)

悠木碧さん

CGアニメ『スパイダーマン:スパイダーバース』の日本語版吹き替えで出演した悠木碧さん

プロフィール
3月27日生まれ、千葉県出身。03年、『キノの旅 -the Beautiful World-』さくら役で声優デビュー。主な出演作に『魔法少女まどか☆マギカ』鹿目まどか役、『君の名は。』名取早耶香役、『妖怪ウォッチ』未空イナホ役、『ブギーポップは笑わない』ブギーポップ/宮下藤花役など。

『スパイダーマン:スパイダーバース』作品情報

 

原題:『Spider-Man: Into The Spider-Verse』(米、2018年12月14日公開)
製作:アヴィ・アラド、エイミー・パスカル、フィル・ロード&クリストファー・ミラー、クリスティーナ・スタインバーグ
監督:ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマン
脚本:フィル・ロード、ロドニー・ロスマン
日本語吹き替え版音響監督:岩波美和
日本語吹き替えキャスト:
マイルス・モラレス/スパイダーマン役:小野賢章、ピーター・パーカー/スパイダーマン役:宮野真守、グウェン・ステイシー/スパイダー・グウェン役:悠木碧、スパイダーマン・ノワール役:大塚明夫、スパイダー・ハム役:吉野裕行、ペニー・パーカー役:高橋李依、キングピン役:玄田哲章
日本語吹き替え版主題歌:「P.S. RED I」TK from 凛として時雨(作詞・作曲:TK)
配給:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
2019年3月8日(金)全国ロードショー
ウェブサイト:Spider-verse.jp
Twitter:https://twitter.com/SpiderVerseJP/ @SpiderVerseJP #スパイダーバース
Facebook:https://www.facebook.com/SpiderVerseJP/

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