私の一枚

『3年A組』に出演中の上白石萌歌 強烈なアートに刺激されたメキシコ生活

小学校1年生の時、メキシコのグアナファトという街で父に撮ってもらった写真です。この年から3年間、家族とメキシコで暮らしました。

(写真は世界遺産にも登録されているグアナファトの街をバックに)

休みの日は、父の車でいろいろなところへ出かけました。中でも私が今でも忘れられないのが、ホセ・クレメンテ・オロスコ(*)という人の壁画です。天井や壁一面に絵が描かれている宮殿のような建物があって、メキシコの独立運動を起こしたイダルゴ神父や、その争いの中で亡くなったり傷つけられたりした人たちの絵が、風刺的に、また生々しく描かれていました。

メキシコは、何もかもがカラフルで、街にアートがあふれていて、見るものすべてが子供心にすごく刺さったのだと思います。「この絵は強烈だな」とか「怖いな」とか、そういうことを感じた経験が今に生きてきて、いい時間を過ごさせてもらっていたのだと思っています。

編集部注)1920~30年代に活躍したメキシコ三大画家の一人。代表作に「立ち上がる僧侶イダルゴ」など

表現することが大好きだった子供時代

当時の私は、人前に出るのが苦手で、いつも母の陰に隠れているような子供でした。おしゃべりもあまり上手ではなかったですね。友達はいましたけど、どちらかというと一人でいるほうが好きでした。

でも、自分で何かを表現することは大好きで、自分の中から生まれるものがたくさんありました。谷川俊太郎さんの詩集が好きで、そこから発想して自分で文章を書いてみたこともあります。誰かに読んでもらわなくてもいいから、自分の感情を残さなきゃという使命感みたいなものがあって、20歳の自分への手紙が6通ぐらいあるんです。今思えば、私は何を残したかったのかって感じなんですけど(笑)。

たぶん、今この瞬間が大事だと思っていたから、その時その時のことを日記みたいにいっぱい書いて、20歳の自分に贈りたいという気持ちで書いたのかなって思います。来年20歳になるので、その手紙を開けることが今から楽しみです。

『3年A組』に出演中の上白石萌歌 強烈なアートに刺激されたメキシコ生活

今年の日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞。さらなる飛躍が期待される上白石萌歌さん

 

いろいろな絵や人との出会いが役作りの糧に

今、大学で美術史や映像学を勉強しています。たくさんのことを学ぶ中、メキシコにいた頃は、ただ怖いだけのイメージだったオロスコの壁画があらためて気になり、大学の勉強の一環でその絵について調べてレポートを書きました。オロスコがなぜそういう絵を描こうと思ったのか、何を訴えようとしたのか。そういう背景がわかれば、きっと見え方も違ってくるはずだって思ったからです。

昨年カンヌへ行った時も、『未来のミライ』の細田守監督とオルセー美術館へ行きました。授業で勉強していた印象派の有名な作品が、目の前にたくさんあることにすごく気持ちが高揚して、それをまた大学のレポートで書きました。興味のあることと、今のお仕事と、学んでいること。すべて結びついているので、毎日がすごく楽しいです。

役作りをする時にも、いろいろな絵や人との出会いが糧になっていると思います。役と向き合う時はすごく想像力が必要なので、「この役なら、あの時に会ったあの人に当てはめて考えてみよう」とか、誰かのしぐさや話し方……、そういう細かな要素を自分の引き出しの中から取り出して役を作っています。日本人だけでなく、日本人にはないものを持っているメキシコの人たちにも出会ってきた経験が想像力を広げてくれていると思います。

自分の意思をしっかり持って仕事をしていきたい

いま出演している『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ)では、ドラマの時間軸では、もう存在しない生徒を演じています。そのせいか、自分の出演しているドラマをこんなに客観的に見られるのは初めてで、すごく新鮮でした。謎の多い役なので、私もすべてを理解できていないところもありますが、回想シーンでの出演が多いぶん、一瞬一瞬を大事にしようと思いながら撮影に参加しました。

今までは、与えられた役を演じることに精いっぱいで、受け身で仕事をすることが多かったかもしれないって思っています。20代になったら、好きなもの、興味のあることにもっと自分からアプローチしたり、魅力を感じた人に、もっと会いに行ったりしようと思っています。与えられたものをしっかりこなしつつ、自分で自分をプロデュースしていけるように、自分の意思をしっかり持って仕事をしていきたい気持ちが強くなってきました。

そんなところにも、メキシコでいろいろな人や物に触れたことが生きているんじゃないかなって、最近あらためて思っています。

(聞き手 髙橋晃浩)

『3年A組』に出演中の上白石萌歌 強烈なアートに刺激されたメキシコ生活

上白石さんが出演中のドラマ『3年A組―今から皆さんは、人質です―』のワンシーン。3月10日に最終回を迎える

かみしらいし・もか 2000年、鹿児島県生まれ。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリ受賞。翌年、ドラマ『分身』で女優デビュー。2018年の映画『羊と鋼の森』で第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。同年、主人公の声を担当したアニメーション映画『未来のミライ』が第71回カンヌ国際映画祭の「監督週間」に選出。キリン『午後の紅茶』のCMではスピッツの「楓」やHYの「366日」などを歌い話題に。

PROFILE

髙橋晃浩

福島県郡山市生まれ。ライター/グラフィックデザイナー。ライターとして有名無名問わず1,000人超にインタビューし雑誌、新聞、WEBメディア等に寄稿。CDライナーノーツ執筆は200枚以上。グラフィックデザイナーとしてはCDジャケット、ロゴ、企業パンフなどを手がける。マデニヤル株式会社代表取締役。

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