インタビュー

表現者、MEGUMI 「芸能人」と次世代のクリエーションをつなぐ存在を目指して

タレント・俳優として活躍するMEGUMIは、2017年から、ジャンルを問わず、新しいクリエーションを世の中に送り出す活動を始めている。彼女は、多数のクリエーターとコラボレーションをするための個人サイト「+コラボレート」を立ち上げ、面白そうな提案があれば積極的に協業し、自らをモデルとして活用してもらうなど、写真をはじめとした作品を共同で作っている。なぜ、彼女はこれまでの芸能人とは少し異なる動きをはじめたのか。じっくり話を聞いた。

MEGUMI

現代美術家・笹田靖人とのコラボ。0.3ミリペンを使い細密画を描く。見るものを圧倒する、緻密で奔放な作風が特徴。

バラエティー番組や映画・ドラマで活躍するMEGUMIが、アートやファッション、映像などへの造詣が深いことを知る人は少ない。テレビの中での姿しか知らない私たちが、彼女の名前を聞いて無自覚に思い浮かべるのは、「クールで、はっきりモノを言うタレント」のイメージだろう。MEGUMIは、その殻を破りたかった。

「今の時代はどんな小さなお店にもあるのに、ほとんどの芸能人は個人サイトを持っていません。WebやSNSでの個人の発信は圧倒的に遅れていると思います。事務所のホームページはもちろんありますが、そこではパーソナルな部分を出すことを求められていません。

そもそも、私たちの仕事は、ものすごく受け身。『この日、この時間に、この場所に来て、この役を演じてください』『この題材についてしゃべってください』という指示を受けるところから始まるケースが多い。たぶん、地球で一番受け身の仕事(笑)。何かをやりたくても、語りたくても、場所がないんですね。だから自分で発信の場を作ることにしたんです」

長い間、芸能人にとって、ゴールの一つはテレビ番組やCMに出演することだった。しかし、時代の変化とともに、普及したSNSや配信アプリを活用して独自にファンとつながることで活躍するタレントも生まれている。MEGUMI自身も、時代に合わせて活動のやり方を選択した1人と言えるだろう。

MEGUMI

「自分の本業と、プライベートではカルチャーが好きなMEGUMIは完全に分けていますね。芸能界から離れた自分は、アートやサブカルチャーが大好き。一方で、仕事の現場で求められることは、ドラマでお茶の間に合った芝居であるとか、ママとしての意見とか、『毒を吐いてくれ』とか(笑)。

もちろん、タレントとしてテレビに呼んでいただけることはうれしいのですが、自分という人間がどんなことに興味を持っているのかを知ってほしかったし、普段は出会えない人たちと新しいものを作ってみたかった。だから、ジャンルやキャリア、年齢を問わず、さまざまな人たちと作品を作ることにしたんです。

若手のフォトグラファー、スノーウェアブランド、着物屋、私の実家がある倉敷市では観光PRを。ほかにも、大阪の歯医者さんやティッシュケースを作りたいという主婦の方など、本当にさまざまな方から連絡をいただきました。『面白そう!』と少しでも思ったら、まずコンタクトをとって、やってみることにしています。大御所の方から連絡をいただくこともありますが、基本的にはメールをいただいた順に対応しているんです。写真主体でやっていますが、最近では映像とのコラボにも挑戦してみました」

MEGUMIが10年以上前から編集長として制作しているフリーペーパー『フリマガ』。現在でも年に2冊刊行、タワーレコードにも陳列されている。たとえば、飲みの席で出た「面白そうだから対談しようよ」というアイデアを実現することもあり、そのプラットフォームでずっと、自己表現を続けてきた。受け身ではなく自分から、というアグレッシブな姿勢を持ち続ける彼女は、「芸能界では、誰かが作ったものに乗っかることが仕事なので、かなりもやもやしていました」と語る。用意されたハコを楽しむよりも、常に自分でハコを作りたいと思っていたMEGUMIにとって、「+コラボレート」の立ち上げは必然だった。

MEGUMI

「実は、グラビアアイドルをやっていたころが一番、クリエーションに触れていた感覚がありました。少人数でやっているから、『こうしたい』と主張できたので。『+コラボレート』を立ち上げるときに考えたのは、自分が出演している番組や作品の情報ばかり流していてもつまらないし、アートが好きって主張するのも自己満足っぽくて寒いなと(笑)。

目指すものがあって、それをやりたくてもやれない人が『MEGUMI』という人間を通して何か作っていくことができれば、その人にとってメリットがあると思いましたし、私もイメージが変わるじゃないですか。アート寄りの良い写真って、すごく俳優らしい(笑)。正直に言うと、イメージを変えたいという思いが強かった。私は芝居が好きで、俳優として活躍したいと思っていたんです」

通常、著作物を別の場所で使用するときには「二次使用料」という金銭が発生する。しかし、MEGUMIはコラボを行ったクリエーターに、無償で自由に使用していい、と伝えているという。メールアドレス宛てに「コラボレーションの提案」を送った後のプロセスはどのようになっているのだろうか。その返事に、驚いた。

MEGUMI

「最初はもちろん、マネジャーさんが間に入っていましたが、それだといちいち遅くなってしまうので、今は個人のLINEでやっています。LINEでダイレクトに自分の思いを伝えたほうが、向こうも伝えやすいと思うんですね。たとえば大阪の歯医者さんとのコラボは、相手がクリエーターではなかったので、こちらから積極的に提案をしました。

若手のフォトグラファーだと、やっぱり気持ちが強い。独自の世界をぐいぐい推してきますし、時には拘束時間以上の時間がかかることもあります。芸歴も長くなって何事にも慣れてきているので、気が付かないうちに、こういう人たちに会う機会が減ってきていたんですね。だから毎回そのエネルギーに感動してしまうんですよ。自分も昔、こんな感じだった……とか。私もたくさんエネルギーをもらっています。

だから、そうやって出来上がった制作物は、PR素材として自由に使って欲しい!と言っているんです。かっこいいものを作るという絶対的なテーマがあって、かっこよければどんどん世に出してほしいですし、私の宣伝にもなるので、プロモーションだと思ってどんどん使ってほしい。本人たちにも言っているんですけど、『いつか有名になったら私を使ってよ!』って(笑)。もちろん彼らからはお金をもらっていません」

MEGUMI

フォトグラファー・小野寺亮とのコラボ。ポートレートを軸に、ファッション、アーティスト写真など幅広く活動。吉村界人や村上虹郎などの若手俳優を、精力的に撮影している。

MEGUMIがしきりに語る、かっこよさ。事実、彼女がコラボした人たちとのプロダクトは、アーティスティックで、かっこいい。「どんなことにしてもかっこよくなければダメです」という価値観を育てたルーツは、意外にも出身地の岡山県・倉敷市にあった。

MEGUMI

「中学生の時は普通にヤンキーだったわけですが……(笑)。ある日、学校の帰りに、ヴィヴィアン・ウェストウッドの服がショーウインドーに飾られていて、デニムも無造作に置いてあり、キース・ヘリングの絵がある、という変わったお店を見つけたんです。当時はブランドも何もわからなかったのですが、直感的に『なんだこれ!』と思って入ってみると、DJブースがあって、横にミシンがありました。そして、DJをやりながら、自分でデニムを縫っているおじさんがいるという……。

思い返すと、エアフォースの激レアなシューズを売っていたり、今では手に入らないようなものがたくさんありました。そのおじさんとの出会いが、私の原点です。最初は『すごいダサいね! 君』って言われたんですけど(笑)。その時はニャロメ柄のトレーナーに、髪も自分で染めていたから、オレンジと金が混ざったような色になっていて、今思えばめちゃくちゃダサい。でも当時、自分ではおしゃれでかっこいいと思っていたので『ええっ……』って。それからおじさんにすごく引かれて、毎日通うようになりました。いろいろな音楽やファッションを教えてもらったり、バラエティー番組にも詳しかったりしたので、今バラエティーに呼んでもらっているのは、あの時おじさんに教えてもらったことが基礎になっているからだと思います。私のメンターですね。

あとはフリーペーパーでの経験がやっぱり大きいかな。クリエーターさんを呼んで、毎回テーマを決めて編集するんですけど、最初は判型も変えていたんですよ。例えば、テーマが『愛』だったらハートの形にするとか。ほかは、丸もあったり、パラパラ漫画をつけたりしたこともありました。フォントやデザイン、並びなどビジュアルのかっこよさは、それでかなりこだわるようになったし、なにより勉強になりました。今も年に2冊刊行しています」

動画はやらないのですか?と尋ねてみたところ、「やってみたい!今は動画の方に興味があるかもしれない」と語るも、基軸はあくまで個人サイトだという。多くの人たちとのコラボを続けていくなかで、顔も知らない一般の人たちから、ダイレクトメールに乗って送られてくる、あふれんばかりのエネルギーが彼女を動かす原動力になっている。

MEGUMI

「何かをやりたい、というエネルギーを向けてくれることは素直にうれしいです。エドツワキさんのような大御所からも連絡をいただくことが増えて、いろいろなジャンルの方がやりたいと思ってくださっているのは、当事者ながら、率直にすごいなと思いながら見ています。

そもそも、変な人が好きなんです。バランスの悪い天才肌の人が好き。『これがなかったら、やばいよね』という人にロマンを感じるんですよ。これはコンプレックスなんですけど、私は変にバランスが良いから、飛び抜けている人を純粋にうらやましく思います。コラボレーションをすることで、相互に補いながらもの作りができていることは、パズルが次々とはまっていくような感覚。頭の中にどんどん企画が出てきて、実現できる場所もあるから、今やもう何屋さんか分からなくなってしまった(笑)。

一番憧れていて大好きなのは役者ですが、こういうことをやったりお店の経営をやったりしていると、人と深く関わるわけですよね。給料のことですごく嫌な顔しているのを見ちゃったり、現場での葛藤を見たり。そんなことも意外と役に落とし込めるというか、吸収できるところは自分の強みだと思います。40歳、50歳になった時、良い役者だなと言われるために、今は蓄える期間なんだなとも思っています。たくさんの人との出会いと、そこでのエネルギーが結果的に、芝居にいかされていけばうれしいです」

今後、彼女のような活動をする芸能人は増えていくのだろうか。そして、芸能人に限らず、いま自分が置かれている環境に対して受け身になっていて、変わりたいと思っている人は、どうやって動き出せばいいのか。彼女は、最後に自分の経験を振り返りながら、アドバイスをくれた。

「『自分は芸能人』であると線引きしてしまうと、新しいことに挑戦するのは難しくなるんです。芸能界以外に世界を開くというのは、ひとつのポイントでした。私は、自分で始めたブランドも失敗しているし(笑)、芸能人だから通じると思っていたものが通じない経験をしているところが大きいですね、社会がどうなっているか、ビジネスでの信頼・信用ってどんなものかを知ることができました。通用しないことが当たり前にある、ということを失敗から学んでいました。だから、たくさん失敗をしてほしい。

今、受け身になってしまって動けない人もいると思います。そういう人は、自分の好きなものを把握する暇がないほど毎日の仕事や生活に追われていて、考えることが難しいのかもしれません。人は、やっぱり好きなものに対してじゃないと動けないし、好きなものを知ることが人生で幸せなことだと思っています。

私はデビュー当時からずっと、いろんなクリエーターさんにインタビューする番組をさせてもらっていますが、どの人も、何かに向き合う時間をとても大事にしていて、2年くらい考え抜いた先にやりたいことが見えてきて、それを実現させることで世の中に認められていくという過程を経ていました。考え抜いた先に、自分の中にたまっているものが出てくることが多いので、1週間くらいの時間では何がやりたいかは出てこなくて当たり前。私は最近になって、日本の伝統文化の良さにやっと気付けたので、今はそのカルチャーをかっこよく伝えていきたいです!」(敬称略)

(文・&M編集部 岡本尚之 写真・池田礼 撮影協力・デザインフェスタギャラリー原宿

MEGUMI

 

MEGUMI(めぐみ)

岡山県倉敷市出身。2001年デビュー。
持ち前のキャラクターを活かしテレビや雑誌などで活躍。近年では、ドラマや映画、舞台への出演により活躍の場を広げている。映画「アイネクライネナハトムジーク」、「くもり ときどき はれ」、「ニート・ニート・ニート」「巫女っちゃけん。」「孤狼の血」、テレビでは「新しい王様」(TBS)、「黒い十人の女」(YTV)、「スカッとジャパン」(フジテレビ)など。

http://m-collaborate.com/

 

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