私の一枚

2度目のボクサー役に挑む北乃きい 極めたい「本当のエンターテイナー」に向かって

映画『ラブファイト』の稽古でファイティングポーズをとる

映画『ラブファイト』の稽古でファイティングポーズをとる

2008年の映画『ラブファイト』の稽古中の写真です。ボクシングをやる女の子の役でした。デビューして3年ぐらい経った、16歳の時だと思います。

父が極真空手をしていたこともあり、子供の頃から家のテレビはいつも極真かK-1。普通の家庭がバラエティー番組を見ているような時間に、父とテレビに向かいながら「いまのピーター・アーツの回し蹴りはよかったね!」とか、「アンディ・フグのかかと落としすごいよね!」みたいな話をしていました。そんな家庭で育ったので、ボクシングをする役を演じることにも抵抗はなかったです。むしろ、K-1の影響で足も使いたくなって困ったぐらい。実際、キックのシーンもたくさん作っていただきました。

憧れの存在も、アイドルではなくK-1の選手でした。ずっと好きだったのは、ブアカーオ・ポー・プラムックっていうタイの選手。もともとムエタイの選手で、妹さんの学費のために戦っていたその姿がすごくカッコよくて、当時は「生まれ変わったら絶対ムエタイの選手になる」って本気で思っていました。

知らないうちに自分の「殻」を作っていたかも

今回出演するミュージカル『ハル』で、久しぶりにボクシングのシーンがある役をやらせていただきます。『ラブファイト』の時は、大きく振っていくファイタータイプのボクサー役でしたが、今回はまた別のスタイルなので、前回覚えたスタイルから変えることが大変です。ブランクもあるので、脇が開いてガードが下がる、初心者にありがちな姿に戻ってしまっているので、脇にタオルを挟みながらパンチを打つ練習をしています。

このところ舞台のお仕事が続いていて、昨年は二つの作品で主役を演じさせていただきましたが、まだまだ慣れません。演出の方に「映像の北乃きいはいらない」とか、厳しいダメ出しをいただくこともあります。どんなことでも指摘していただくことはよいことなのですが、「映像の北乃きい」ってどんなだろうって、正直自分でもわからなくて。

私は、俳優としてのスタイルを固定してしまうと、自分で自分の可能性を消してしまうのではないかと思っています。ですから普段から「北乃きい」を作っているつもりはないですし、「絶対に変えたくないもの」があるわけではないのですが、知らないうちに自分で「殻」を作ってしまっていたのかもしれないです。

ミュージカル『ハル』は4/1(月)より東京、4/22(月)より大阪で公演

ミュージカル『ハル』は4/1(月)より東京、4/22(月)より大阪で公演

 

最近はめちゃめちゃ楽しみながら稽古しています

私はもともと、「真ん中」とか「一番前」というのが苦手で、「主演」となると自分を閉ざしてしまうところがあるんです。主役は間違えちゃいけないとか、他の人のセリフも全部頭の中に入れておきたいとか、考えすぎてしまうんです。

でも、いまは、この写真の頃よりはずいぶんリラックスして仕事に向き合えるようになりました。当時は120%の力で仕事しようとしていたので、ケガをすることも多かったです。ケガをしてでも一生懸命やることが役者として大事だと思っていた時期でした。稽古中も笑顔をまったく見せない、そんな感じで。

最近は稽古をめちゃめちゃ楽しんでいます。一生懸命なだけじゃなく「臨機応変」ということの大切さが少しずつわかってきました。ただ、正直言うとケガはいまもすることがあって、ケガをせずに無事に乗り切ることも次の舞台の目標です。

どの分野でもレベルを上げていきたい

TVドラマや映画、舞台、TV番組のMC、そして歌まで、いろいろな仕事をやらせていただきました。「自分ってすべてが中途半端だな」ってずっと思っていて、そんな自分を恥ずかしく感じる時期もあったんです。CDを出した時も、歌番組に出させていただくのが申し訳なくて、「こんな自分が出ていいのかな」って気持ちになったり、周りから「中途半端だ」って言われても言い返せなかったり。

でも、23歳の時にニューヨークに短期留学して、向こうのエンターテインメントやダンスのレッスンに触れた時、「歌えて、MCもできて、踊れて、お芝居もできる」、そういう人こそが本当のエンターテイナーで、タレントなんだって気づいて、私もそれを極めたいと思うようになりました。もし日本にそういう人が少ないなら自分がそうなろうって。大きなことを言っていますけど、やっぱり目標はでっかいほうがいいと思うんです!(笑)

幅広くやろうとするほど、成長には時間がかかると思っています。一つひとつ、すべての分野でレベルを上げていかなければならないので。でも、時間がかかってもいいんだといまは思っています。そして、そういう気持ちになってからは、すべての仕事に誇りを持てるようになりました。MCでも歌でも、もちろん今回のミュージカルも、出演できることが誇りです。

(聞き手・文 髙橋晃浩)

近年は映像作品だけでなく舞台にも積極的に出演している北乃きいさん

近年は映像作品だけでなく舞台にも積極的に出演している北乃きいさん

きたの・きい 1991年、神奈川県生まれ。2005年、史上最年少の14歳で『ミスマガジン』グランプリ獲得。2007年、映画『幸福な食卓』で第31回日本アカデミー賞新人俳優賞、第29回ヨコハマ国際映画祭最優秀新人賞受賞。その後も映画やテレビドラマに多数出演する一方、2010年にはCDデビュー、2014年からは2年にわたり『ZIP!』(日本テレビ系)の総合司会を担当、2018年には『人形の家』で舞台初出演と、活躍の幅を広げ続けている。ミュージカル『ハル』は4月1日(月)より14日(日)まで東京・TBS赤坂ACTシアターにて、同22日(月)より28日(日)まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて開催。■関西テレビ放送開局60周年記念 ミュージカル『ハル』の詳細はこちら
https://www.ktv.jp/event/haru

PROFILE

髙橋晃浩

福島県郡山市生まれ。ライター/グラフィックデザイナー。ライターとして有名無名問わず1,000人超にインタビューし雑誌、新聞、WEBメディア等に寄稿。CDライナーノーツ執筆は200枚以上。グラフィックデザイナーとしてはCDジャケット、ロゴ、企業パンフなどを手がける。マデニヤル株式会社代表取締役。

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