キャンピングカーで行こう!

開発者と家族の体験から生まれた「ユニバーサルデザインのキャンピングカー」レポート

3月9、10両日、「名古屋キャンピングカーフェア2019Spring」が開催されました。その中で今回、本格デビューした車両がありました。

その名は「ユニバーサルデザインキャンピングカー Live」。一体、どんな車なのか。どんな背景で生まれた車なのかを2回に分けてご紹介したいと思います。前編は、車両の概要と誕生の背景についてお話しします。

すべての人が「気軽に出かけられる」車を

Liveを発売したのは愛知県のビルダー、ケイワークス社。トヨタ・ハイエースをベースにした「オーロラ」シリーズなどで知られる、バンコンを得意とするビルダーです。
今回デビューのLiveのベースは、日産・キャラバンのナローボディー×ハイルーフ。ポップアップルーフはなし。内装は白を基調としたシンプルさが際立ちます。

ナローボディベースのコンパクトな室内。レイアウト自体に珍しさはないが、随所にバリアフリーのための配慮がなされている

ナローボディベースのコンパクトな室内。レイアウト自体に珍しさはないが、随所にバリアフリーのための配慮がなされている

同社のバンコンは、ポップアップルーフを積極的に採用して全高を抑え、普段使いしやすいサイズにこだわるところが特徴です。そしてシックな色合いの高級感のある内装が多かったので、Liveを見て、ずいぶんシンプルな車両を出したものだ、という第一印象を抱きました。

ですが、Liveの最も大きな特徴は、実はリアゲートを開けたところにありました。ゲートを開けると、現れたのはイタリア・フィオレラ社製の「車いすリフト」。ユニバーサルデザインと銘打っているだけあって、この車のコンセプトは『すべてのハンディキャッパーとその家族が、気軽に、安心して、思い立った時にすぐ行動するための車』なのです。

この車両の肝がこれ。イタリア・フィオレラ社の車イス用リフト。福祉車両でよく見かけるタイプより数段コンパクトだ

この車両の肝がこれ。イタリア・フィオレラ社の車イス用リフト。福祉車両でよく見かけるタイプより数段コンパクトだ

「本当のバリアフリー」を目指した

ケイワークスの黒田功社長(49)に開発の経緯を聞きました。実は黒田社長自身、ハンディキャッパーのご家族でした。

「息子が車いすを使っているので、介助者の付き添いが必要でした。特別支援学校に通っている間は学校行事ででかけることもありましたが、一定の年齢を超えるとその機会は激減してしまう。それに、キャンピングカービルダーでありながら、自社のキャンプ大会でも私たち家族は参加できない……それはどうなんだ? というところから始まりました」

これまでにも、車いすで乗り降りできるキャンピングカーはありましたし、リフトを取り付け可能にするオプションもいくつかあります。いつもこの連載でお話ししている通り、キャンピングカーは動く我が家。プライベート空間ですから、カーテンを閉めればプライバシーは保てるし手足を伸ばして体を休めることもできます。水も出る、電気製品も使える。こうした特徴は、身体に不自由がある方が旅行する際に役立つものばかりです。

しかし、どんなにバリアフリーをうたったマンションも、医療施設にはかなわないように、キャンピングカーで本当にバリアフリーを目指そうと思ったら、車いすのリフトをつけるだけでは終わらないのです。

障がいがあっても快適な旅を!

障がい者であっても旅をしたい。それは当然の願いです。当人はもちろん、家族にとっても、自由に・快適に移動できればこんなに素晴らしいことはありません。それに、長期間、遠出をするだけが旅ではありません。病院や買い物など、日常の外出でも、より快適で安全であれば、それに越したことはないのです。当事者でもある黒田さんは、介助する家族の思いや事情が痛いほどわかります。しかし、黒田さんは、Liveの開発のために、障がい者が旅をするとはどういうことなのかを、徹底的に研究したといいます。

例えば、車いす利用者とその介助者が外出する場合。近くの公園にピクニックに行くだけでも、

・食事
・持ち物の用意
・車いすで利用できるトイレの確認
・目的地のバリアフリー状況確認(スロープの有無など)

といった配慮せねばならないことがたくさんあります。心配事が重なって出かけるのがおっくうになる人も珍しくないそうです。ましてそれが泊まりがけとなるといかにハードルが上がるか、お分かりいただけるでしょう。

黒田さんは「ユニバーサルツーリズム」の推進セミナーに参加したり、車いすで外出が楽しめるバリアフリー情報サイトの発信者と交流したりと、情報収集にまい進。車、電車、バスなど、さまざまな交通手段での旅の実情を研究しました。その結果達したのは「日本の交通インフラでは、障がい者が旅をするのに最適なのは、やはり車旅だ」ということ。それがモチベーションとなって、本格的な「ユニバーサルデザインキャンピングカー」の制作へと背中を押してくれたのだといいます。

「自らの目で確かめて、本当に利用できるバリアフリー施設を取材してまわっている方がいます。車いすでのお出かけ情報を集めて発信している人もいます。高速道路のSAやPA、一般道の道の駅でも、バリアフリーが少しずつ進んでいます。それらひとつひとつは、障がい者を家族にもつ人間にとっては素晴らしい情報ですが、まだまだ、おのおのが点と点。ユニバーサルデザインのキャンピングカーならば、その点と点をつなぎ、障がい者の行動範囲をぐっと広げることができるんです」

条件はなるべく厳しく! 身をもってモニターした新作

車いすでの乗降用にリフトが必要。さらに、車いすの固定、ベッドや食卓。介助するにあたっては水なども必要……車いすで安全快適に移動し、車内で長時間過ごすために欲しい機能はたくさんあります。健常者には何ということもない段差や仕切りも、障がい者や介助者にとっては大変な障壁となることも珍しくありません。

居室後部には大型の車イスにも対応できるスペースが。固定用のレールも装備して安全面も◎

居室後部には大型の車イスにも対応できるスペースが。固定用のレールも装備して安全面も◎

「十分な設備を盛り込もうと思ったら、キャブコンで考えたほうが楽なんです。明らかに車が大きく、居室の容積も大きいですから。ですが、それをやってしまうとどうしても価格が上がってしまう。大きな車にたくさん積み込めるのは当たり前。むしろ価格を抑え、最低限の大きさの中にどれだけ便利な機能を、無駄なく取り込めるかを追求しました」

試作した車には家族を乗せてモニターしてもらったそうです。

「妻からは相当なダメ出しがありました。家族ですから容赦なく(笑)。でも、それがいいんです。ちょっとでも感じたことを歯にきぬ着せずに伝えてもらった方が、開発の役には立つ。毎日、実際に息子を介助している人の意見は貴重です」(黒田さん)

障がいの程度や内容は人それぞれ。すべての人のリクエストに対応できる車を作るのは容易ではありません。しかし「ユニバーサルデザイン」の本来の意味を考えたら、やがて答えは見えてきます。つまり「誰にとっても便利で快適」であること。それがユニバーサルの意味なのです。

黒田さんはこのLiveを発売するとともに、レンタカー展開しようと考えています。

「Nexco中日本と組んで、ハンディキャッパーの旅を支援するレンタル事業をスタートさせる話を進めています。ユニバーサルデザインを必要としているのは障がい者だけではありません。高齢社会に突入した今、車いす利用者はどんどん増えています。その人たちが自由に出かけられないということは、その家族も同じく、旅や外出に制限を受けるということ。年齢や障がいに関係なく、誰もが一緒に旅を楽しめる。そして災害の時には心強い避難道具として期待できる。そんな車を作り続けていこうと思っています」

さて次回は、より具体的にLiveの内容についてお伝えしてみたいと思います。おたのしみに!

株式会社 ケイワークス

愛知県豊橋市下地町字宮前35-1

0120-223-448

http://www.kworks-aurora.com

PROFILE

渡部竜生

キャンピングカージャーナリスト。サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)がある。エンジンで輪っかが回るものなら2輪でも4輪でも大好き。飛行機マニアでもある。旅のお供は猫7匹とヨメさんひとり。

キャンピングカーに乗っていて交通事故に遭ってしまった体験レポート

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