小川フミオのモーターカー

コンパクトSUVの流行を確信させる確かな質感 VW・T-CROSS試乗記

コンパクトなSUVは絶対にこれからもっと流行する。フォルクスワーゲン(VW)の新型車「T-CROSS(ティークロス)」に乗って、私はそう確信した。車体はマツダCX-3や日産JUKEより短い。でもクオリティーはかなり高い。かなり出来のいいSUVだ。

(TOP画像:特別パッケージ装着車。ホイールハウスの張り出しが強調されていて力強い印象を受ける)

スペインのマヨルカ島が試乗の舞台だった。英国人はイビサ島が好きだが、ドイツ人は圧倒的にマヨルカ島での滞在を好むらしい。ハイシーズンまでまだまだ間がある3月でも、ドイツからのフライトは楽しそうな顔をしたドイツ人(観光客)たちでいっぱいだった。

「T-CROSS」に乗る場所としてマヨルカ島が選ばれたのは、楽しい気分になる点が共通しているからかもしれない。全長はVWポロより5cmほど長いだけの4.1mで、それに対する全高は1.58mだ。スタイリングも個性がある。VWの特徴といえる理知的なラインで構成されているが、横基調の前後ライト類を上のほうに持っていき、高さを強調しているのでキュートさすら感じる。

一方でルーフレールを備えているし、フロントバンパー下のエンジンのアンダーガードふうの装飾も目を惹(ひ)く。

VW・T-CROSS

1リッターエンジンは85kWの最高出力と250Nmの最大トルクで前輪を駆動する

試乗したのは、VWの日本法人が導入を検討している1リッター3気筒エンジンモデルである。85kW(115馬力)の最高出力を持ち、これに7段DSG(ツインクラッチ)と、前輪駆動のドライブトレインが組み合わされている。

なにより私がここで書きたいのは、しっかりした足まわりの設定と、静粛性を含めた快適性の高さである。正直言ってびっくりした。ステアリングホイールが中立付近でフィールがあいまいな感じはいっさいない。剛性感が高く、左右どちからに切ったときにすっと気持ちよく曲がっていく。別の言葉でいうと、スポーティなのだ。「運転が好きなスタッフが開発した」とVWの担当者が誇らしげに言うだけのことはあると思った。

一方で乗り心地はしなやかだ。ハイシーズンに向けて道路を整備している最中の場所を通過しても、不快な振動はない。ポロをベースに開発されたのでホイールベースは同一の2551mm。決して長くはないのだが、ふた回りぐらい大きな高級車に乗っている感覚だ。

VW・T-CROSS

こんな楽しい内装の仕様もあるのでぜひ日本に導入してほしい

小さくても室内は広いところも魅力である。後席は着座位置を前席より高くすることで、そこに座るひとにより広い視界を提供している。例えば、トヨタ・プリウスのタクシーに乗ると、からだが沈みこんでしまって前が見えないという経験はないだろうか。T-CROSSは後席乗員のことも考えているのだ。

そして、室内の静粛性が高い。時速120kmまでなら、スタート時に設定したオーディオの音量つまみを再度調整しようと思わなかった。音楽を楽しむ環境もよく出来ている。試乗車のなかにはオプションの「beats」のスピーカーシステムを備えたモデルもあった

VW・T-CROSS

両側のリアコンビネーションランプの間にストリップを設けることで車幅感が強くなり背高な印象が弱まっている

VW・T-CROSS

後席が前後にスライドするので荷室は最大454リッターもの容量となる(実際にかなり広い)

ヘッドフォンでおなじみのbeatsは、いかにも“ユースマーケットを狙っています”という感じはしたが、果たして、音質は期待以上によかった。中音が気持ちよく響くので、管弦楽をはじめ民族音楽やギター中心のロックミュージックにも向いている。私の好みである。

VWは現在、大きなSUVであるトゥアレグに代表されるSUVのラインナップを拡充している。それだけでなく、パサートをはじめ、ゴルフ・トゥーランやティグアンといったSUVにディーゼルエンジンモデルを追加した。拡販に積極的なのだ。

総じて質感が高いことはVWのプロダクトの魅力だ。ただし、これまでのVW車は理知的すぎて、もう少し華やかさがあってもいいかも、と思っているひとがいたかもしれない。そんなひとにT-CROSSは勧められる。VWの美点がコンパクトに凝縮したモデルなのだ。

VW・T-CROSS

ドアマウンテッドミラーとホイールに特別色を使っているオプション装着車

(写真=Volkswagen AG提供)

 

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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