オトナたちに捧げる、現代インターネットのススメ。

スタンプが男性にも使われたのがLINE普及のカギ りょかち×LINE企画者・稲垣あゆみさん対談

りょかちさんと、平成のインターネット文化を振り返るシリーズ、今回のテーマは、いまや“インフラ”と呼べるほど普及した「LINE」です。サービス立ち上げからLINEの企画を担当しているLINE株式会社上級執行役員の稲垣あゆみさんとりょかちさんが、LINEの登場前後でのコミュニケーションの変化について考えます。

LINE文化はスマートフォンの普及とともに

りょかち 今回はLINEや、ソーシャルでのコミュニケーションの話をうかがいたいです。平成という時代の変遷に合わせて、時系列にお話しできればと思っています。最初にあゆみさんにお聞きしたかったのは、LINEが世に出る前のことです。どんなツールを使っていました?

稲垣あゆみ(以下、稲垣) プライベートでは、メールやSMS、Twitter、電話でした。Facebookも海外に留学している子や、メディアの人としか使っていなかったので、「ハッピーバースデー」のポストも、3人に書かれるくらいで(笑)。LINEの開発を始めてからは、もちろんLINEを使っていました。ですが、それはバグを見つけるような話で、完全に開発者として触っていたので少し違いますね(笑)。最初、リリースした直後は、「LINEが送れなくなっている、まずい」、みたいな話を開発部の偉い人たちとSMSでやりとりをしていましたね。並行して電話も普通に使っていました。

りょかち SMSがコミュニケーション手段だったのですね。

稲垣 mixiもありましたが、一時の勢いはなくなっていたので、ほとんど使わなくなっていました。その頃、私やインターネット企業で働く友達はスマートフォンに切り替えていましたけど、社会全体のスマホの普及率はおおよそ10%くらい。だから、「スマホって実際はどうなの?」という質問を、忘年会や新年会でインターネット周りの人に聞かれる状況でした。私が使っていると「最先端だね! すごいね!」、みたいな(笑)。その頃、一番使っていたSNSはTwitterでしたね。東日本大震災が起きたときも、親との連絡はTwitterでしたね。

稲垣あゆみさん

りょかち ええ〜! ご両親がすでにTwitterを。

稲垣 Instagramは、カメラアプリとして一番使っていた気がします。

ガラケーの代名詞的な存在からLINEの開発者へ

りょかち 私は小学生で携帯を使い始めて、高校生まではメール全盛期でした。好きな人からのメールのタイトルにある「Re:」を数えて、「こんなにメールが続いてる!」ってうれしくなったりとか(笑)、そういうことが楽しみでした。

稲垣 ガラケーの顔文字はめっちゃ使いました。メールのお気に入りの保存が最大10件とか、50件で少なかったところも、今のようにほぼ無限に保存できるのとはまた違う良さがあったと思います。当時、どこかのメディアの取材を受けた際、私は「ガラケー女子」って書かれたんですよ(笑)。ガラケー女子と呼ばれていた私が、スマホで使うLINEを作ることになって、あれれ?って。

りょかち なるほど。当時はきっと「ガラケー女子」こそが最先端だったんですよね。そんな若い女子がアプリ開発を?!という文脈だったんだろうな。その開発したアプリがスマホアプリの代表みたいな地位になっちゃうからびっくりですよね。

稲垣 自分の携帯の変遷をいうと、ポケベルを中1か中2で持っていて、中3からピッチ(PHS)、高2からガラケーになりました。

りょかち ポケベルは、ぜんぜん通って来なかったです……。私の視点ですけど、LINEが登場して、メールかLINEかという構図ができたように思えました。大学1年生の時に、LINEがメインになるまでは、メールをめちゃくちゃしていた印象があります。

稲垣 メールかLINEか、という構図を感じたことはありませんが、SNSかLINEかという構図はあったと思います。私の場合は、友達も親もITリテラシーが高くて、連絡を取る範囲がほとんどSNSでした、Twitterも早くから使っていましたし。MMS(各キャリアのメールサービス)を使ってメールを送れましたから。

りょかち あゆみさんの中では、メールからLINEへの“スライド”はなかったんですね。

稲垣 そうですね……まあ中の人ですからね(笑)。「みんな使って!」という気持ちはありましたけど、自分が使うよりも早いスピードで世の中の皆さんがLINEを使ってくれるようになりましたから。

りょかち 新しいサービスがすごいスピードで普及する時ってどんな雰囲気なんだろうってすごく思うんですよね。

りょかちさん

稲垣 LINEがなかったらどうなっていたかを考えてみたことがあります。もし、うちの会社がなくても、みんな何かしらのSNSを使っていたんだろうなって思うんです。日本ではLINEがスタンダードになったけど、サービス開始当初は、安定した地位ではなかったですから。当時は、DeNAさんがcommを、Yahoo!がカカオトークで合弁会社を作ってCMを積極的に打ち出していて、GREE、サイバーエージェントもサービスを出してきました。

他社のサービスが気になるハラハラした感じは、2011年から2014年くらいまで続いていた記憶がありますね。

先日、ご高齢の方が近くでランチされてたんですけど、QRコードでLINEの友達になってたんです。それを見て感動してしまって。LINEがここまで普及したんだと、改めて開発していたころを思い浮かべながら思いました。

りょかち 今はテレビドラマでも「メッセンジャーアプリ」じゃなくて、固有名詞として「LINE」って言われるし、度々物語の中で出てくるし、それで当然のように意味が理解されますもんね。

稲垣 映画『君の名は。』にきっとLINEだと思うSNSを使っているシーンが出てきて、すごく満足しました(笑)。大ヒット映画なので、後世の子どもたちが観ますよね。いつか、だれかが「昔LINEっていうのがあったね」と言っている未来を想像することは、開発者にとってのひとつの醍醐味(だいごみ)だと思います。

ユーザーが男性にも広がったことが普及のカギに

りょかち 最初にLINEがスマッシュヒットをした時から、使われ方の変化はありますか?

稲垣 どんどん変わっているんでしょうけど、変わり方が劇的ではなくて、ユーザーに使い慣れてもらいながら徐々に、というジワジワした変化の印象です。家族LINEも今では普通ですけど、出てきた時はびっくりしました。「親世代も使っているらしいよ!」と、開発チーム内で話題になったりとか。

その他に印象的なのは、LINE POP(2013年)が出た時ですね。LINEゲームシリーズで最初に大ヒットした作品だと思います。LINE POPは、招待をして、ハートを贈り合うので、そこに家族間の会話が生まれて、家族LINEでのコミュニケーションがより円滑になるらしいです。

りょかち LINEといえばスタンプだと思うんですけど、スタンプや絵文字についてはどうですか?

稲垣 スタンプは2011年10月に提供を開始しました。テキストメッセージでは心情をうまく説明できないおじさんたちの言葉をスタンプが代弁してくれることで、受け取った女性は喜ぶから、送った側もうれしくなって使ってもらえたのだと思います。

そして、おじいちゃんやおばあちゃんも使えることも大きい。家族のコミュニケーションにはすべての世代が含まれるので、「スタンプが若い女性だけのものにならなかった」というところが、LINEが大きくなった一番の要因だと思っています。

最初のころは、男性はブラウンを使っている人が多かったし、女性はコニーちゃんを使っていました。有料のものだとディズニーは女性の方がたくさん使うし、『北斗の拳』のスタンプはやっぱり男性がよく使っていた。 その次の段階で、さらに細かな感情のニュアンスまで表すことができるスタンプにシフトして行きました。

今は、逆にスタンプが会話の流れを止める役割を果たすこともありますし、「スタンプ一つですべてを済ませる」ことがネガティブに受け止められることもあります。だから、短くてもテキストで返すほうが気持ちがこもってるようになった(笑)。いまは、大切な相手には、テキストに絵文字を付けて気持ちを込めて送るというやり方に変わってきてるんじゃないかなと思っています。

りょかちさん×稲垣あゆみさん

りょかち それって結局、最初のテキストベースだったメールの時代に戻ってきているじゃないですか。面白いですね。

稲垣 自分が一番大切に伝えたい人へのメッセージだと、文章を考えて、間に適度な量の絵文字を入れて送って、少し、スタンプを付けるというのがベストプラクティスのような気がします(笑)。次はどうなるんでしょうね。

りょかち そこ気になりますよね。

稲垣 「じゃあ通話すればいいのでは?」っていうのもまた違いますよね。メールとメッセンジャーと通話では、相手に求めるレスポンスの許容時間が異なります。メールにはLINEでいう“既読文化”もないので、送った相手に即答は求めていない。でも、メッセンジャーでの連絡を一日放置すると、相手に与える印象は悪くなりますよね。

りょかち 私の場合だと、家族との連絡や友達と遊びの約束をする時はLINEを使います。一方で、コンテンツに対するコメント、例えばInstagramの投稿に対してのメッセージは、InstagramのDMを使っています。送るメッセージの種類によって、使うプラットフォームが細分化しているような気がしています。

稲垣 使い分けが面倒ではないですか? 自分を表現するにも、この投稿はFacebook、これはInstagram、これはTwitterでと判断する必要があって、特にオープンにする話でなければLINEで、となりますよね。ガラケーの時代はなかった悩みだと思います。スマホの普及によって、一般の人がカメラをこんなにも使って画像や動画を投稿してシェアされるようになったところが、ここ10年の大きな変化です。

ただ、逆に以前は言語化しなければいけなかったことを、今は画像の送信で済ますことができますね。例えば、待ち合わせの時に、メールしかなかった時代は文章で丁寧に説明したけれど、今だと地図アプリにピンを立てるだけで済みます。

りょかち 私も待ち合わせをして、数十メートルの距離にいるはずなのに、どこにいるのか分からない時は、周りで見えているものはこれ、みたいに写真を撮って送ります。

稲垣 スマホというデバイスが身近になったことと、LINEの普及率の伸びは完全に一致しています。LINEアプリは、スマホのユーザーのニーズをしっかりとらえることができた。 この先もLINEは残ると思いますが、LINEでのコミュニケーションやその他のSNSの「利用方法」が次に大きく変わるとするならば、スマホではない、まったく新しいデバイスが登場した時かもしれません。うちの会社はユーザーの反応を見ながら改善を続けていくことを目指しているので、その時代に合ったものを出していけるプラットフォームであり続けたいと思っています。

りょかち なるほど。ありがとうございます。最後に、今回お話をうかがう皆さんに質問していることですが、平成を振り返ってインターネットの普及によって人はどう変わったと思いますか。

稲垣 全体ではネットは人をハッピーにしたと思います。あえてマイナス面を言うなら、ネットがあることで、みんながとても忙しくなりましたね。

そしてもう一つ、「調べる」ことが簡単になった代わりに、考察を深める機会は減った気もします。これからは、自分を発信して広めることと、自分の中で深く考えることの両方を備えて、価値をつくる活動が重要になっていくと思います。

りょかちさん×稲垣あゆみさん

(構成/&M編集部、撮影/和田咲子)

PROFILE

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒で某IT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発に従事。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、若年層に向けた企業のマーケティング支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。

稲垣あゆみさんPROFILE

LINE株式会社 上級執行役員・LINE企画センター長

大学卒業後、ベンチャー企業の立ち上げに関わった後、バイドゥ株式会社日本法人勤務を経て、2010年ネイバージャパン株式会社(現LINE株式会社)に入社。

LINE立ち上げ当初より企画を担当し、2015年4月LINE企画室長に就任。2016年1月、最年少で執行役員に就任。2019年1月から現職。

発信者の人格が問われる場に変化したTwitterの光と暗黒面
りょかち×たられば

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