ミレニアルズトーク Millennials Talk

会社員を辞めて知った、生みの苦しみと喜び 石井リナ×foxco

社会問題からセックスまで。現代を生きる女性に様々な選択肢を提案するエンパワーメントメディア「BLAST」。その運営会社であるBLAST Inc.のCEOを務めながら、SNSコンサルタントとしても活躍する石井リナが、ミレニアル世代にフォーカス。

特に1990年前後に生まれた人は、インターネットネイティブな環境で培った柔軟な感覚で、様々な新しい働き方に取り組んでいる。学生時代にガラケーを持ち、インターネットの普及とともに育ってきた人々は、どんな価値観を持ち、何を思考しているのだろうか。世代の狭間に生まれ、時にハブとなり得る「ミレニアル世代」を深掘りする。

今回は、イラストレーターとして活躍するfoxcoとの対談。大手企業の会社員を経て、自らの手で描くことを仕事として選んだ経緯には、どんな思いがあったのか。葛藤の中で「描くことに救われた」というfoxcoの経験から、石井リナの赤裸々な悩み相談まで、二人の親密なトークを公開する。

ハッピーな絵をたくさん描いて、それで自分が元気になった

石井 まずは、foxcoちゃんがどんな活動をしているのか教えてください。

foxco イラストレーターです。イラストの仕事でメディアの方と関わることが増えて、それがきっかけでモデルの仕事をさせてもらうこともあります。

石井 いつもいろんな仕事をしている印象があるよ。すごいなって思って見てる。

foxco イベントで描くこともあるし、グッズを作ったりもするし、もちろん雑誌も。最初は雑誌が多かったけど、偏りなくいろんなことをやらせてもらえている。いつも決まったお得意先がいるわけじゃないから、いろいろやっているように見えるのかも。

石井 イラストレーターになる前、会社員だったときは、どんな風に働いていたの?

foxco 新卒でコンサルとして大手IT企業に入った。AIでオペレーション業務を機械化するっていうプロジェクトで、「何年後にはこうなるから損益分岐が……」みたいな(笑)。仕事内容自体は私は好きだったけど、3ヶ月ずっと徹夜が続くような時もあれば、2週間一気にお休み、みたいな時もあって。仕事や人間関係に振り回されるのに身体が結構疲れてた(笑)。

石井 そうだったんだ。家族とか友人も心配しただろうね。

foxco 会社を辞める前からイラストの仕事はもらっていたんだけど、やっぱり忙しいと描くことができなくなる。それで副業する時間が欲しくて外資のECに転職したら想像よりイラストの仕事の割合が大きくなってきて独立するに至った、というかんじ。

つらいときにはハッピーな絵をたくさん描いて、それで自分を元気にしてた。だからつらかった時期を振り返ると明るい絵ばっかり!(笑)

foxco

石井 いいね。描くことが自分を励ましてたんだ。

foxco そうそう。最近ようやく「悲しい」って気持ちを描けるようになってきて、逆に安定してきたのかな。

石井 私は IT系の広告代理店にいるとき、人はよかったけど仕事は合わなかった。毎日遅くまで働いて、ウェブ広告の管理をやっていて、これはいつか自動化されるだろうにって私の中で葛藤があって。

foxco リナちゃんには合わない仕事だったんだね。

井 そう。でも、きっとその仕事に誇りを持っている人もいるし、一概には言えないよね。仕事に自分なりの意義が見いだせるかどうかが大事で、外から良いとか悪いは判断できない。自分でちゃんと判断するのが大切なんだ。

自分のことすら「コンテンツとしてどう切り出すか」みたいなことを考えてしまった

石井 子供の時から、絵を描くのは好きだった?

foxco うん、昔から好きだったよ。小さい頃に花の絵を描いて、祖父に見せたんだけど、「花が全部こっちを向いている」って指摘されて。「全部同じ角度のわけがないから、もっとちゃんと観察しなさい」って。そこからものをしっかり見てスケッチすることが好きになったかも。

石井 うんうん、専門的に学んだりはしていないの?

foxco イラストを学んだことはなくて、関係することといえば大学でプロダクトデザインのゼミで義足の研究をしてた。義足はいつも洋服の下に隠れているけど、見せてかっこいいといいよね、という発想の「美しい義足」のプロジェクト。

石井 じゃあ、「イラストレーターとして食べていく」って決めて選んだというよりは、自然と描くことをはじめて、それが仕事につながっていったんだね。

石井リナ×foxco

foxco そうそう。最初はイラストレーターになるって思ってなかったし、肩書きとしてイラストレーターって名乗るのには少し抵抗があって。でも、今はすごく楽しく仕事ができている。

石井 肩書きの話にも関わると思うけど、foxcoをブランド化したいって以前話してくれていたのが印象的で、詳しく教えてほしい。

foxco イラストの仕事を始めた当初は、foxcoって名前だけを出して、顔も実名も出さないでやっていきたかったんだけど、取材で本名も顔も出ちゃったし、いまはそこの切り分けがあいまいになっている。私は絵を描くのが好きで、もちろんそれが本業だけど、自分のセンスをどこか信じているからそれを仕事にしていきたいと思っているんだ。だから、私自身の顔や名前とは切り離して、プロジェクトにしたい……みたいなことを考えてる。

石井 自分という存在からセンスだけを独立させて形にしたい、みたいな?

foxco そう。切り離したい。感覚的にfoxcoがもう自分だけのものじゃない気がしている。うまく説明できないけれど。

石井 もしかして、自分が出るのがあんまり好きじゃなかったりする?

foxco うん、全然好きじゃないんです(笑)。石井リナって言ったら、石井リナちゃんの顔が浮かぶ。でも渡邉香織って言って、私の顔が浮かんでほしくないんだよね。

石井 ある種、職人的なんだね。ものを作る人は、好き嫌いみたいな感覚を大切にしてるのかなって思うんだけど、そういう基準とか線引きはある?

foxco 他人の作品に対する好き嫌いはあんまりないかも。どんな作品でも、なにか問いかけてくるところが必ずといっていいほどある。嫌いになるとシャットアウトしちゃうから、まず好きになって受け入れてから、あとで判断する。

石井 フラットに見るように心掛けているのね。私は最近、「嫉妬」みたいな感情が少しずつ出てきて。羨ましさとか、「勝てないかもしれない」とか、この歳にして色んな感情を初体験してる。嫉妬心はエネルギーだって言う人もいるけれど、自分の中には今までなかった感情だから慣れないんだよね。

foxco うんうん。リナちゃんにとってそれは良い状態?

石井 どうなんだろう。でも新しい感情を知れたのはいいことかな。葛藤しながら事業をしたり、生きている等身大な私を追ったらおもしろいのにって思ったりもしてる。こういう切り口だとこの人はおもしろい、って考えるのが癖になってるから、自分のことすら「コンテンツとしてどう切り出すか」みたいなことを考えてしまって……職業病だと思う(笑)。

foxco

foxco 嫉妬する感情に向き合いながら冷静に自分を見てるんだ。でも、嫉妬って、自分の背中を押してくれたりもするじゃない?  あの人も頑張ってるから、私ももっとやってみようかな、とか。ポジティブに捉えられるなら良さそうだけど。

石井 これを燃料にしてがんばるよ。

foxco 私はこの前好きだった人とうまくいかず、こんな悲しいことがあるんだ!って思いながらも、自分の中に鮮明な感情があることに気づいた。そのとき、今まで描いたことない新しい絵が描けて逆にうれしくなってしまった。だから、感情がいっぱい生まれることは、たとえそれが嫉妬心だとしてもラッキーだなって私は思うようになった。でも、渦の中にいるときはそんな風には考えられないよね。昇華できたらいいね。

石井 感謝してるんだね。すごい。私が他人に嫉妬したり悔しくなったりするように、私も誰かにそう思われてるかもしれないって気づいたよ。たぶん、やりたいことがたくさんあるのに、それをなかなか形にできていないことに一番焦ってるんだと思う。

foxco その悶々(もんもん)は、今ぶち当たっている一過性のもので。人の手を借りたら案外すんなり切り抜けられるのかもしれないね。なにより抜けた先にはまたできることの幅が増えるね!

ほっこりしますとか言われるとイラッとする(笑)

foxco リナちゃんがやりたいことの一番の目的はなんなんだろう?

石井 ずっと一貫して、「日本の女性達を解放する」って思想を掲げているよ。BLASTを一年やって、いろんな人が信用してくれるようになった。まずはこれを続けて、読んでくれる人、期待してくれる人に応えることだよね。でも同時に、会社的な成長も必要で、その方法を練っているところだよ。

石井リナ×foxco

foxco いまのメディアを軸に自分たちがやってることを発信しながら、マネタイズができるようにプロダクト作ったりサービスを展開する、みたいな?

石井 そうそう。とても難しい挑戦だけど、誰もが手にできる機会でもないと思うからラッキーだなって思いながら頑張ってる。どうしよう、私の悩み相談みたいな回になっちゃう……(笑)。

foxco なんか安心した! SNSを見てるといいニュースしか出てこないけど石井リナも人間なんだなって思って(笑)。

石井 めちゃめちゃ普通の人間だよ。もっと人間っぽさ出していこうかな。あのアイコンかっこよくて気に入ってるけど、変えた方が親しみやすいかな?

foxco かっこよくて私も好き! 笑顔とかもっとチャーミングな感じも素敵よ。

石井 foxcoちゃんは、仕事したいって思う方面に対して布石を打つって、前話してくれたじゃない。詳しく教えてほしい。

foxco まず飲み会に行くことだよ(笑)。私はさ、ぱっと見すごいコンサバだし、描いている絵も、ガーリーなものが多い。だから依頼もそういうものが多いんだけど、本当はあんまり好きじゃないんだ。

石井 そうなの!?

foxco 好きじゃないっていうと、違うけど常にもっと新しいものが描きたい。男性的なものもやりたくて、ガジェットの仕事が来た時に新しいテイストを試してみたりして、そうしたらBarbourのメンズラインから話が来るようになって。仕事が仕事につながったんだよね。そういう風に、仕事の中で自分の行きたい方向に布石を打っている感覚。

石井 こういうタッチもできるんだ!って驚いたこと、何回もある。

foxco それ、結構狙ってる。ほっこりしますとか言われるとイラッとする(笑)、すごいやなの。ほっこりさせたくない。

foxco

石井 えーそうなんだ! どうさせたいの?

foxco ざわざわしてほしいかな。もちろん今まで描いてきたものも好きだけど、もっと違う世界が見てみたいし、ユニセックスな絵が描きたい。

石井 これからやりたいこと、挑戦したいことはある?

foxco それはよく聞いてもらえて「海外行きたい」とかも思うけれど正直まだ無いんです。今好きなことが叶っていてやりたいことをやっている。

石井 それ、すごい幸せなことだよね。

foxco まだイラストの仕事を本格的にはじめて一年半だからね。

石井 悶々としてる私とは対照的かも(笑)。

foxco そうだね(笑)、良い回になりそう!

石井リナ×foxco

<編集後記>

フリーランス、パラレルワーク、在宅勤務。「働き方」というトピックは日進月歩で変化し続けている。多様化が進む中で必要とされるのは、自分にフィットする仕事が何なのかを理解することだろう。誰もが一度は「初めての仕事」を経験する。摩擦や違和感にさらされながらも、自分の気持ちに素直に向き合い、方向転換しながらしなやかに働けばいい。二人が示したのは、挫折を経ながらも、自分に嘘をつかず真摯に生きることの美しさであり、それは新しい時代のロールモデルでもある。彼女らの行く道筋は常に変化しているからこそ、今後の活躍が楽しみだ。

(文/長嶋太陽、撮影/なかむらしんたろう)

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