ストレスの蓄積が、命の危険につながる? 血圧の高波に要注意!PR

ストレスの蓄積が、命の危険につながる? 血圧の高波に要注意!

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「サージ血圧」を知っていますか? “サージ”とは“一過性の上昇”のこと。自分でも気づかないうちに、思わぬ場所で思わぬストレスによって血圧が上がっているかもしれません。「サージ血圧」の生みの親、苅尾七臣医師に高血圧の最新治療についてお聞きしました。

苅尾七臣(かりお・かずおみ)

苅尾七臣(かりお・かずおみ)
1987年自治医科大学医学部卒。大学卒業後は出身地である兵庫県の僻地医療に従事。米国留学を経て、自治医科大学循環器内科学講座講師、COE/循環器内科部門教授、2009年より自治医科大学内科学講座循環器内科学部門教授。英国ロンドン大学客員教授、中国上海交通客員教授、韓国延世大学校学外教授を兼任。

 

――健診時は正常値なのに、血圧の上がる時間帯のある「仮面高血圧」が話題ですが、どういったリスクがあるのでしょうか。

「仮面高血圧」とは、診察室での血圧は正常値でコントロールされているけれど、家庭血圧や24時間自由行動下血圧(ABPM)ではコントロールされていない状態をいいます。診察室も家庭でもどちらも基準値より高いのは「持続性高血圧」。持続性高血圧であれば、医師も診察室血圧をガイドに薬を増やし、血圧をコントロールしますから、24時間血圧はむしろ全体に下がって、リスクは低減していきます。しかし、仮面高血圧は一見、診察室での血圧は正常値ですから、医師にもそのリスクは見過ごされ、悪いリスクがずっと積み残ってしまいます。

仮面高血圧について2018年、スペインで6万人以上を対象にABPMで2年以上追跡した研究結果が出ました*1。それによると、コントロール良好群に比べて、仮面高血圧群は心血管疾患リスクが2.8倍、持続性高血圧群の1.8倍よりも高リスクという結果でした。診察室でのみ高くなる「白衣高血圧」群のリスクも持続性高血圧群とほぼ同等の1.7倍でした。

日本でも、我々が主導したJ-HOP研究において、家庭血圧によって診断した6年間の追跡調査をおこなっています*2。そのなかで、脳卒中において、コントロール良好群や白衣高血圧とも比較して仮面高血圧が明確なリスクになっていることがわかりました。脳卒中と心不全、大動脈解離は血圧に直結した心血管疾患ですが、日本人の場合はとくに脳卒中で仮面高血圧によるリスクが高いです。

仮面高血圧には「早朝高血圧」「昼間高血圧」「夜間高血圧」がありますが、これまで最もエビデンスとしてなかったのが職場や家庭でのストレスによって上がる昼間高血圧。この昼間高血圧のリスクをカバーしていくことが今後の大きな課題となっています。

ストレスの蓄積が、命の危険につながる? 血圧の高波に要注意!

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――苅尾先生が提唱されている「サージ血圧」は仮面高血圧とは違うものでしょうか。

“サージ”は仮面高血圧とはまた違い、血圧の“一過性の上昇”を示すものです。血圧は生体のストレスセンサーですから、昼間の血圧はおもに身体活動のストレスや精神的ストレスによって上昇します。昼間の血圧をABPMで測定すると、たとえば、職場での会議中に精神的ストレスで通常上が140ぐらいの人が瞬間的に180ぐらいまで上がることがある。それが「サージ血圧」です。

脳卒中などの循環器疾患を進展させる要因といえば、血管障害を進展させる高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などですから、「循環器疾患は1日にしてならず」。とはいえ、その発症は非連続なんですね。循環器疾患の最大のリスク因子は高血圧であり、血圧サージです。ただし、血管がきれいで弾力のある20代ぐらいまでの若年層でのサージ血圧は問題ない。問題なのは中年期以降、動脈硬化が進展し、血管が固くなり、その内腔に“プラーク”というこぶができている場合。血圧サージの急激な圧力でプラークがつぶれ、そこから出た内容物で血液が固まって血栓ができ、循環器疾患の発症につながるわけです。

出典:自治医科大学

出典:自治医科大学

――血圧サージは具体的にどのような状況で引き起こされるのでしょうか。

血圧サージは異なるリスクが相乗的に組み合わされて引き起こされます。これが、私の提唱している“血圧サージの共振仮説”です。まず、加齢による経年変化でリスクは上昇しますが、季節、日間、日内の変動のピークの時相が一致するような状況、例えば、「高齢者で冬場の寒い月曜日の朝」とかですね。そこにさらに職場の対人ストレス、前日の塩分やアルコールの摂取量、前日の睡眠の状態、運動や精神的ストレス、怒りなどの情動ストレス、排便でのいきみ、喫煙、PM2.5などがトリガーとして重なり、巨大な「サージ血圧」の発生リスクが高まります。トリガーになる事象は個人差があるんですね。

そして、これまでそうした昼間の血圧を計測するデバイスがなかったのですが、新たな腕時計型ウェアラブルデバイスであれば、測定中もサイレントなので時間や場所を選ばず測定できる。その人がいつ、どういったタイミング、どんなストレス条件が組み合わさると血圧が上昇するかの特徴を知ることができます。個別にストレス閾値(いきち)を設けられれば、職場でドクターストップをかけることも可能になるかもしれません。

いま、日本の「高血圧治療ガイドライン」も家庭血圧を重視し、「より早く、より低く、より24時間降圧する」という方向性になっていますが、我々の“ウェアラブルコンセプト”の降圧目標値も平均値で130/80mmHgと基準値より低めの設定です。血圧が高めで変動幅が大きいと、仮に動脈硬化のプラークの破裂がなくても、変動のインパクトで細い血管の微小循環が障害され、加齢による疾患である認知症や心不全、慢性腎臓病、フレイル(身体機能や認知機能が低下して虚弱となった状態)などの発症リスクが高まる。それとは逆に、血圧をコントロールして平均値を下げ、低めに維持できていれば変動も少なくなるので血管もいい状態に戻る可能性もある。そして薬を減らしてもあまり上がらなくなります。つまりは、血圧変動をコントロールできれば “アンチエイジング”が可能になり、高血圧患者の20人に1人の割合で薬を減らしていける可能性があるんです。

苅尾教授によると、健康的な生活を送ることで若々しい血管を保つことができ、血圧変動をコントロールできるという

苅尾教授によると、健康的な生活を送ることで若々しい血管を保つことができ、血圧変動をコントロールできるという

――血圧のコントロールには生活習慣の改善も効果的でしょうか。

血圧のコントロールで重要なのはやはり「食事、運動、睡眠」です。日本人などのアジア人は食塩感受性民族ですから、食事の塩分量が夜間や早朝の高血圧に大きく影響しますので、まずは減塩ですね。また、心拍数で100~120回/分程度に軽く息のあがる運動をこまめにおこなうことでも血管の若返りが期待できます。睡眠は約6時間、質のよい睡眠を保つことで交感神経・副交感神経のバランスがとれ、血圧も安定しやすくなります。

夜間高血圧の一番のリスクは睡眠時無呼吸症候群で、夜間の血圧が高めに維持・変動し、朝さらに上がり、昼間の血圧の変動も持続してしまいます。不眠の高齢者も同じです。若い人の睡眠障害は抑うつ状態を反映している場合が多く、夜間高血圧、早朝覚醒が起こりやすい。昼間高血圧があるうえに夜間高血圧もあると、神経が休まらず心身へのダメージも大きいですから、夜間血圧を家庭血圧で測定しようという意義はそこにもあるんです。我々の最新のエビデンスでも、家庭血圧で測定した夜間血圧の上が115を超えていた場合、脳卒中疾患リスクが上昇します。

出典:自治医科大学

出典:自治医科大学

そのほか、最新のデバイス治療として「腎デナベーション」も有効とされています。腎臓の血管を通じてその周りを走っている交感神経を焼灼(しょうしゃく)する治療法ですが、約3年にわたって血圧の低下を持続でき、ストレス性の高血圧で降圧効果が証明されています。

血圧を下げる方法として、生活習慣を改善するか、薬を使うか、アプリで管理するか、腎デナベーションをするか。いずれも医師側の選択ではなく、患者さん自身が自分に一番あった方法を納得して自ら選択することが大切ですね。それにより、血圧のコントロール状態もぐんとよくなってきます。これが今後10~20年後に向けた新しい高血圧治療の方向性です。まずは家庭血圧を測定して自分の血圧の状態を知ることから始めていただければと思います。

 

*1 Banegas JR, et al:N Engl J Med 378:1509-1520, 2018
*2 Fujiwara, et al:JAMA Cardiology 3:583-590, 2018

(文・石川美香子 写真・山田秀隆)

 

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脳・心血管疾患の発症リスクを予測し、未然に防ぐ

心筋梗塞や脳卒中などの脳心血管疾患イベントの原因としてあげられるのが「高血圧」です。

そして、日本では実に3人に1人にあたる約4300万人が高血圧であるといわれています。

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