今日からランナー

NIKE新シューズは「裸足感覚」 歩き回るだけで筋力向上!?

常識破りの厚底シューズ、「ナイキ ズーム ヴェイパーフライ 4%」でランニング界を席巻し続けているスポーツ用品メーカー大手のナイキが、「厚底」とは180°コンセプトの違うシューズ(といっても単純な薄底ではない)を米オレゴン州にあるナイキ本社で3月19日(日本時間20日)に発表した。世界のランニングジャーナリストを集めた記者発表会に行ってきた。日本での発売は4月4日(木)だが、「今日からランナー」の読者には一足早く詳細情報をお届けする。

名前は「ナイキ フリー RN5.0」と「ナイキ フリー RN フライニット 3.0」という。5.0と3.0の違いは後で説明するが、まず重要なのは、このシューズはマラソンレース用ではないということだ。では、何のためのシューズかというと、私たち一般アマチュアレベルのランナーにとっては、マラソン(長距離)を走るための“足を鍛える”という、きわめてユニークなポジションのシューズといえる。

普段履きにしてもおしゃれな「ナイキ フリー RN5.0」(1万円+税)/写真提供:ナイキ

普段履きにしてもおしゃれな「ナイキ フリー RN5.0」(1万円+税)/写真提供:ナイキ

RN5.0より裸足に近い感覚を得られ、アッパーは人気のフライニットを使った「ナイキ RN フライニット 3.0」(1万3000円+税)/写真提供:ナイキ

RN5.0より裸足に近い感覚を得られ、アッパーは人気のフライニットを使った「ナイキ RN フライニット 3.0」(1万3000円+税)/写真提供:ナイキ

足をシューズから“解き放つ”

実は、ナイキはこの「フリー」シリーズの開発を2001年から始めていて、2004年には最初のモデルをリリースしている。プロジェクトを主導したのは、マイケル・ジョンソンやタイガー・ウッズ、マリア・シャラポワといったトップアスリート向けの用品を手がけたことで知られる伝説のデザイナー、トビー・ハットフィールド氏だ。ハットフィールド氏自身が棒高跳びのオレゴン州チャンピオンだったという根っからのアスリートでもある。

記者発表会では、彼自身から開発秘話が明かされた。

プロジェクトのスタートにあたってチームのメンバーは、ランナーにとってどういうシューズのニーズがあるのかリサーチすることから始めた。そこでアスリートたちの練習風景を観察すると、ハードなトレーニングの後にシューズを脱いで裸足で芝生の上をジョギングする姿がしばしば見られた。足をシューズから解放して、自由に動いているようすが見て取れた。コーチが、足を健康にするために裸足のジョギングを勧めていたのだという。

ハットフィールド氏は「これだ!」とひらめいたという。より速く、長い距離を走るには足を最良の状態にしておく必要がある。ところが、当たり前だが、足のつくりは人によってバラバラだ。走る(歩く)ときに足底にかかる圧も違えば、足首の関節の可動域も違う。それを同じカタチのひとつのシューズに押し込めてしまうのは違うのではないか……。

ではどうすればいいのか?  実は、ナイキのスポーツ研究所(NSRL)では1989年から足の自然な動きや裸足のランニングに関する研究を始めていた。フリー開発チームは、これに加えて数千人規模のランナーの足の動きをデータ化して、誰が履いても自然な足の動きを妨げることなく、かつ足の保護性能を確保できるシューズを追求した。靴を履いている感覚を取り除き、まるで裸足で芝生の上を走っているような、そんなシューズを目指したという。“フリー”という名称は、まさに“解き放たれる”という意味だ。

伝説的デザイナー、トビー・ハットフィールド氏。足が自由に動く仕組みを説明している

伝説的デザイナー、トビー・ハットフィールド氏。足が自由に動く仕組みを説明している

裸足のような感覚を得るため、ソールのクッション材を固めにして、足裏で接地を感じつつ走れるようにした。厚底シューズの正反対である。さらに、ソールに切り込みを入れることで、足の自然な動きを確保した。こうしてデビューしたフリーは多くのアスリートに愛用されたが、モデルチェンジを重ねるうちに“裸足感覚で走る”という当初のコンセプトを忘れ、ふつうのシューズに近いものに“変貌(へんぼう)”してしまっていたという。それをもう一度、原点に戻そうという発想で生まれたのが、今回発表されたモデルだった。開発チームのディレクター、アーネスト・キム氏は「我々が、原点に立ち戻らなければと認識したことが、最大のブレークスルーでした」と語っている。

アドバンスト フットウェア イノベーション ディレクターのアーネスト・キム氏

アドバンスト フットウェア イノベーション ディレクターのアーネスト・キム氏

NSRLの新しい研究によって、足が動いている時、足にかかる圧はSの字を描くように、かかとからつま先に移動するパターンを描くことがわかった。ソールの切れ込みパターンの設計には、こうした最新の科学的知見が使われている。これによってフリー RN5.0は、従来モデルより26%高い屈曲性を実現した。

また。つま先が下に曲がるようにもなっていて、足の指で地面をつかむような感覚を得られるようになったという。ナイキでは、ソールのクッション性のレベルを「0」(裸足)から「10」(標準的なランニングシューズ)の数字で表している。「5.0」は裸足と標準的なランニングシューズの真ん中で、「3.0」はより裸足に近いという意味である。

フリー RN5.0は従来モデルより高い屈曲性を実現。開発にあたって、こうしたスケッチが何枚も描かれた

フリー RN5.0は従来モデルより高い屈曲性を実現。開発にあたって、こうしたスケッチが何枚も描かれた

足の裏で直接、地面を踏んで進んでいる感覚

実際にフリー RN5.0を履いてみた。着地時に地面からくる衝撃はいわゆる“薄底シューズ”のようだが、ソールがクネクネ動く感じが初体験で面白い。さんざん説明を聞いた後だったからかもしれないが、シューズが足になじんでくると確かに裸足に近いというのがわかる気がした。それはどういうことかというと、足の裏で直接、地面を踏んで進んでいるという感覚だ。かかと着地から体重移動し、最後はつま先で蹴っている。自分の力でしっかり走らないと前に進まない感じがする。これも、シューズが勝手に前に運んでくれる厚底シューズの正反対だった。

ソールに独自の切れ込みを入れることで、足が自由に動くことを可能にした

ソールに独自の切れ込みを入れることで、足が自由に動くことを可能にした

歩行中の足裏の圧を測定している

歩行中の足裏の圧を測定している

フリー RN5.0を履いた後に標準的なクッション性のあるズーム ペガサス36(発表会で試着した最新モデル)を履いたら、その違いは歴然としていた。ズーム ペガサス36の方が断然楽に走れるのだ。ちょっと大げさに書くと、フリーは一生懸命にこがないと前に進まない。逆にいうと、だからこそ“足が鍛えられる”ということなのか。前出のハットフィールド氏にこのシューズの使い方を聞いた。

「トップアスリートは練習後のリカバリーに履いています。一般ランナーは、これを履いて走らなくても、歩き回るだけで効果があります。脚の筋力がつき、可動域も自然に広がって、足の柔軟性やバランスが整ってきます。それが結果として、長い距離を速く走れることになります。アスリートには、オフの日にも履いてほしいシューズです」

要は、日常の歩行や練習後のジョギングなどでフリーを履いて足を鍛え、本番レースではクッション性のあるシューズを使えばタイムの向上につながるというわけだ。また、開発者の一人でもある前出のキム氏からはこんなコメントが得られた。

「フリーを開発する前、私はランニングを始めようとすると何かしらのケガをしてしまい、いつも続けることができませんでした。フリー RN5.0を履くことで初めてランニングを続けることができるようになり、シューズがここまで影響をもつという大発見でした」

なかなか面白そうなシューズである。自分にはどんな効果と影響があるか、しばらく試してみようと思う。報告は、いずれまた。

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PROFILE

山口一臣

1961年東京生まれ。ゴルフダイジェスト社を経て89年に朝日新聞社入社。週刊誌歴3誌27年。2005年11月から11年3月まで『週刊朝日』編集長。この間、テレビやラジオのコメンテーターなども務める。16年11月30日に朝日新聞社を退社。株式会社POWER NEWSを設立し、代表取締役。2010年のJALホノルルマラソン以来、フルマラソン20回完走! 自己ベストは3時間41分19秒(ネット)。

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