スタイリスト TEPPEI × OKAMOTO’S ハマ・オカモト対談「自分に合ったファッションを見つけるための方法」

OKAMOTO’Sをはじめ、著名ミュージシャンのスタイリングや、アンリアレイジなどのブランドビジュアルを手がける人気スタイリスト TEPPEIさんと、公私ともに仲の良いOKAMOTO’Sのハマ・オカモトさんが音楽とファッションをテーマに対談。おふたりのファッションのルーツから、世の中の消費行動の変化、「自分に合った服」の選び方について語ってもらいました。

TEPPEI、ハマ・オカモトが語るファッションのルーツとは

オカモトズ

ハマ・オカモト(以下、ハマ):学生時代、ファッションとの関わりは皆無でした。そもそも小・中・高と制服がない私立の学校で育ったので、洋服を選ばなければいけない環境にはあったのですが、根本的なファッションへの興味はなかったです。

制服のある学校で思春期を過ごして、いよいよ大学生になった人なら、そこから一気に興味の花も開くでしょうが、四六時中同じテイストのものを着ていた僕の場合は、まったくそこ(服)に執着がなかった。だから、僕のファッションのルーツは、TEPPEIさんとの出会いだと言えるかもしれません。ファッション雑誌なんて読んだこともなくて、美容室で出されても全く興味がわかなかった(笑)。

TEPPEI:(ずっと私立で)環境が特殊、というのはありますよね。一般的な義務教育ではなかなか体験できないじゃないですか。

ハマ:そうなんですかね……強いて言うなら学生時代にやっていた音楽かな。文化祭だろうがライブハウスだろうが、ステージに立つ時に必ず衣装を着ていました。60~70年代のCDジャケットに載っている写真や、当時の衣装を着ている写真に影響を受けていました。もちろん私生活とは切り離して考えていましたけど。

TEPPEI:僕のルーツとしては二つあって、もともと国立の幼・小・中に通っていたんですね。「勉強をしっかりする」という環境の中で育ったので、ファッション雑誌は友達と情報を共有するために読んでいました。

もう一つは、小学生の頃にサッカーをやっていたんですね。普段からジャージーを着ていたんですけど、「練習のない日には、違うものを着てみよう」と思った時があって。ジャージーしか着ていなかった自分が、それ以外のものに興味を持ったんです。中学生になってから洋服を自分で買うようになり、そこから今に至るプロセスが始まりました。

それに比べると、今の子どもたちは成熟しているなと思います。ともあれ、僕らの年代はそういう感覚でした。僕にとってのファッションが、ハマさんにとっての音楽だったのかもしれないですね。

ハマ:その時代認識はあまり変わらないと思いますよ。僕は本来芽生えるはずの自我が芽生えなくて、本当に童貞みたいな感じでしたから(笑)。

TEPPEI:(笑)。オンとオフのスイッチングの話で考えると、僕にとっては(私服を着ていない)オフの状態が思春期の制服なので、休日に私服を探し求めて着ることがオンです。ハマさんのようなステージ上の衣装、戦闘服とは違うので単純な比較はできないですけれど。

ハマ:中学の時は今より太っていて、オンオフ関係なくXLのTシャツを着ていました。極端な話、裸じゃなければなんでもよかったので(笑)。本当に無頓着というか、鈍感でしたね。

TEPPEI:あっはっはっ(笑)。でも中・高って、他人の視線が気になってきませんか? 私服であれ制服であれ、記号化された自分や異性、それから自己主張、誰かへの反発や友達との関わりの中で影響を受けるものが、音楽やファッションだと思うんです。ハマさんの意識がそこにいかなかった理由、ものすごく気になります。

ハマ:僕も気になります(笑)。バンド仲間は音楽に夢中なので、練習することだけに全神経を注いでいましたね。勉学もろくにせず。共学だから異性もいましたが、周囲の目を気にして、自分の身なりを変えようとは全然思わなかった。ある意味ではストイックだったのかもしれないです。高校生になると、お金をためて高いものを買ったりするじゃないですか。背伸びをしてブランド物のジーンズやカバン、時計を買っているやつなんかもいて。

TEPPEI:それはあまり評価されないんですか?

ハマ:すごいって反応が普通だと思いますが、僕らの学校の場合「ダサい」と言われてしまうんですよ。そのブランド物自体がダサいのではなく、当時の僕らからするとそいつが背伸びをしている感覚があって。それが違和感につながっていた気がしますね。

シンプルなファッションに世の中が変わり始めた理由

オカモトズ

TEPPEI:昨今のファッションってシンプルなデザインのものが増えていますが、それ自体がはやっているわけではないと思うんですよ。個性的、派手な服を着る人が少なくなってきて、ある程度着やすかったり、それを着ることで好感が持たれたりするような「間口の広い服」を身にまとっている人の方が多くなってきているだけのような気がして。

時系列をさかのぼると、(個性的に見える)服を買うことが、そもそも少し特殊な行為だったのかもしれません。気品のある服や高級な服、時代感の伴った服のように、ある種の個性を持った服を求めて購入し、それに見合ったステータスを得るという時代から、日常的に着られる服を気軽に買うことができる世の中になりましたよね。そうすると、とがったデザインはあまり求められなくなるので、シンプルという言葉が強調されだしたのではないでしょうか。トゥーマッチなデザインから、さまざまなものがそぎ落とされて、特に着やすさに重点が置かれるようになったのかもしれません。

ハマ:音楽にも通ずるものがあると思います。消費のされ方が変わってきているという話ですよね。一般的な目線でいうと、服であればこれだけの歴史があるなかで「良いもの」が画一化してきているじゃないですか。ハイブランドでも、その外形にいちいち特許を取るわけではないでしょう? 模倣に関して、比較的寛容だということを聞いたことがあります。

そうなると、作る側は良いものを模倣し、大量生産して価格を落とす方向になるということは当たり前なわけで、買う側は、自分の所得と照らし合わせた時に、安くて機能性のある服があればそれを選びますよね。

TEPPEI:あるファッションブランドの話ですが、最初は「ダサい」と敬遠されたものでさえ、機能性が優れているから爆発的に普及して、もうそんな言葉は聞こえなくなりました。

ハマ:悲観的な意味ではなく、当たり前のことですよね。僕なんてAppleMusicを始めたのが去年末で、それまではやり方が分からないと言い訳をしてやらなかった。音楽を仕事にしている僕たちOKAMOTO’Sは「音楽とはフィジカルを買うもの」だと言い続けなければいけないという意地もあって。でも結局、便利さにはあらがえず、始めてしまいました。

あらゆる分野で消費のされ方がどんどん変わっている中で、じゃあ残るものは何かといえば歴史とプライド。年を取ってから、それこそお金を稼げるようになってから良い服を買おう、音楽はCDで買おう、そうなっていくと思っていて。とはいえ、そうしようとする人の絶対数が少なくなってきたということだとも思いますが。

TEPPEI:これって時代性の話でもあると思います。そもそも価値観なんて結局のところ、みんなの意見のことですよね。どんなものがシンプルか、どんなものが個性的か、どんなものが最先端に見えるか、という感覚が無意識的に変わっていったわけです。個性的だったものが大衆的になり、それがその時代なりの「シンプル」になっていく。ファッションにおける街のムードは、そうやって保たれてきたのかなと。

「ファッション」を着る人にヒエラルキーがあるとすれば、中間層からその下に広がっていくにつれて、一般化のあり方はもちろん異なりますし、それが時代に適合するかしないか、みたいなことでもあると思います。音楽に置き換えてみると、そんな中でOKAMOTO’Sというバンドはどういう座標にいたいのかを聞いてみたいです。

ハマ:最近特に思うのは、どこまで行くかではなく、バンドとしてひとつのスタンダードになるべきだなと。まだ成し遂げられてはいませんが、成功の基準には、セールス面に限らず、いろいろな答えがあると思っていて。僕たちが目指すべきものは最初からはっきりしています。ここでは言いませんが(笑)。

「年相応」「自分に合った」服はどう選べば良いのか?

オカモトズ

TEPPEI:実は、Instagramのストーリーズで「何か質問ありますか?」って投稿すると、「夫にどんな服を着せたらいいですか?」という質問がたくさんくるんですよ。

ハマ:おおー! なるほど。

TEPPEI:夫が服装に無頓着になって、かっこよくいてくれないと。例えば、若い時は友達に向けてや、モテるためのおしゃれをするじゃないですか。不良になる人は反抗心でシンボリックな服を着てみたりもします。そこから家族を持って、子どもができたら、当然ですけどお金のかけ方のウェートは変わっていきますよね。経済状況もあるでしょうし、(結婚しているので)モテるためのおしゃれをする必要もなくなるわけですから。ではどういったものを着たらいいのかと、不明瞭になっていくのは分かるんです。

ハマ:「なんとなく年相応の感じで、似合うやつを」ということを純粋に聞きたいんだろうなと思いますけどね。いつも感じていることでもあるのですが、服をかっこよく着ると精神的に高揚して「かっこいい」と思えるというか。高いものイコールかっこいい、ということではなくて、その人がどう気持ち良く着られるかということが大事。

例えば、XLの服を着ていた僕のような人間が、TEPPEIさんに用意してもらったパンツをはいたら、丈がぴったりで「あれ、こんなに気持ちいいんだ」と思ったんです。その気持ち良さを経験できたことは大きいと思いますが、自分で見つけるとなるとやっぱり難しい。

TEPPEI:自分に合った服を選ぶには、ある程度、服に対して寛容になった方がいいと思うんですよ。肌感覚ですが「どんな服を着たら良いか分からない」とおっしゃる方は総じてネガティブなんです。「こういうのは似合わない」とか。そういった前提は一度置いておいて、楽しむ余力を持ったうえで服を見て、直感的に良いと思ったものが一番似合うと思います。

ハマさん経験あるかもしれないけど、男性って試着室から出たあと、ポケットに手を突っ込むんですよ。

ハマ:やってしまいますね。

オカモトズ

TEPPEI:あれは、服をフィットさせる儀式みたいなものなんですね。似合うかどうかを探っていくルーチンの中で、絶対に手を突っ込む。なので、まず最初に「似合わせる」という気構えを持つことが重要。かっこいい服を着て、良いと思う自分を想像する。ポジティブな気持ちがないと服は似合わないんです。

僕の仕事は「いつもよりかっこいい服を着たら楽しくなれる」ことを提供するので、可能性を教えてあげて、その人に合ったファッションを提供していきたいんですよ。他人に向けたファッションではなく、自分自身や、家族を彩るファッションというものはあるべきだし「何に対してのおしゃれなのか」「あなたにとって服はなんなのか」、まずはそこを聞いてみたい。

ハマ:なるほど。

TEPPEI:持論ですが、スタイリストは洋服を持って行っておしゃれにさせてあげる職業ではないと思っているんですね。全ては「スタイル」という言葉に集約されていて、「スタイルを提供する人」という前提があります。僕は、10人のスタイリストがいて、すべて同じ白Tシャツとデニム、型番も同じ、靴も同じものを用意していたとしても、それでも一番似合うようにしてあげられる人になりたいんです。

それは、同じ服でも見せ方を変えられるという体感があるからです。服をお持ちするところから、着せ付け、撮影までのプロセスで、表現できるスタイルが変わるんですよ。着る人に対して「どんな服でも似合わせる」という自負があるのですが、そうなると「服って何?」と思うじゃないですか。何でもいいのか、同じ服でも似合うときと似合わない時があるのかって。自分自身の経験から言えるのは、「スタイルとは心と体でなされていくもの」ということなんですね。

ハマ:これをさらっと言えてしまうのがすごい。自信があるようなことは誰にでも言えると思いますが、実践されているのを僕は見てきたので。僕らのようなバンドがスタンダードにならないといけないのと同じで、この感覚・レベルの人がいないといけないと思います。スタイリストは、みんなTEPPEIさんのようにきちんとした人ばかりではないですから。

テレビの仕事の時、収録直前にもかかわらず、靴下を何度か履きかえさせられたことがあって。普通は「この靴下で」と決まったらそれでいくはずが、TEPPEIさんは座るシーンがあって「靴下が見えるから」と言いながら最後まで調整してくれる。「ズレやすいから気をつけて」とケアしてもらったこともあります。ほかの人たちが悪いのではなくて、この環境に慣れてしまっていると、ほかの現場でもいつもTEPPEIさんの存在を思い出すんです。

(文・&M編集部 岡本尚之 写真・兼下昌典 撮影協力:or glory神宮前店)

オカモトズ

TEPPEI(てっぺい)
1983年、滋賀県生まれ。ファッション系の専門学校卒業と同時に原宿のヴィンテージショップ「ドッグ」のプレスに就任するとともに、『FRUITS』『TUNE』といったスナップ誌の常連として掲載され、国内外でカルト的な存在として注目を集める。2006年公開の映画『間宮兄弟』では、玉木役に抜擢され演技未経験にもかかわらず俳優デビューを飾る。その後スタイリストとして本格的な活動を開始し、多くのミュージシャン、ファッションビジュアル、ショーのディレクション、広告ビジュアルなどに携わっている。

ハマ・オカモト
中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’Sのベーシスト。2010年、日本人男子としては最年少でアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を回るツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムを回ったアジアツアーなど、海外でのライブを積極的に行っている。これまでシングル8作品、アルバム7作品を発表。

2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム「OPERA」を発売。2016年6月3日からは「OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「NO MORE MUSIC」をリリースし、10月30日より年またぎで全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を敢行、ツアーファイナルはZepp Tokyoにて開催され大盛況のうちに終了した。2019年1月には10周年イヤーの幕開けを飾るフルアルバム「BOY」をリリース。また、4月6日(土)横浜BAY HALLを皮切りに、全国20ヵ所21公演を回る全国ツアー「OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2019 “BOY”」を敢行し、6月27日(木)にはOKAMOTO’S史上“最初で最後”の日本武道館ワンマンを開催予定。10周年イヤーに向け、ますます加速を続け精力的に活動を続けている。

Label : Sony Music Labels
HP : http://www.okamotos.net/

朽ち果てていく廃虚の美しさに着目「変わる廃墟展 2019」

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自分を「赦す」ことから始めよう。小島慶子さんが語るハラスメントとさよならするために必要なこと。

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