スタイリスト TEPPEI × OKAMOTO’S ハマ・オカモト対談「アーティストとスタイリストの関係性から音楽の今を読みとく」

昨今、スタイリストをつけず、自前の服でステージやメディアに登場するアーティストが増えてきました。音楽におけるファッションの立ち位置はどう変わったのか、スタイリストの存在はアーティストにどのような化学反応をもたらすのか。引き続き、スタイリストのTEPPEIさんと、OKAMOTO’S のハマ・オカモトさんにお話を聞きました。

ファッションと音楽の関わりの中で見えてきたもの

オカモトズ

TEPPEI:1990年代半ばに第三次バンドブームがありましたよね。当時はメロディックなことを言うだけでかっこよく見えた時代。みんなから人気を集めて、異性からもモテる、みたいな。僕はその時代に音楽とつながったんですけど、「好きな音楽に合ったファッションを」といったような結びつけ方はしていませんでした。

今、アーティストさんのスタイリングをしていても、彼らの音楽にファッションを結びつけることはやっていませんし、決めつけてスタイリングをすることもないんです。

ハマ・オカモト(以下、ハマ):やっぱり「音楽をやっている人」に対するスタイリングということが前提で、僕たちの音楽に服を着せているわけではないというか。

TEPPEI:根本には、フレキシブルな脳でありたいという気持ちがあるんです。音楽のルーツをひもといて、あまりに知りすぎてしまうとスタイルが固定化されたものになると思っていて。そうすると、世の中の「見たい像」も窮屈になってしまいます。

ハマ:やろうと思えば、僕らに「びょうジャン」を着させることもできますよね。でもそこで着せない理由というのは、音楽と切り離されたところにあって。音楽がパンクだからパンク、ロックだからロックテイストな服を持ってきているわけではないんです。対象者の人となりはもちろん、仕事への思いなども含めてものすごく見ないといけない仕事なので、知りすぎてしまうと「こうじゃなければならない」というところにとらわれすぎて、「人」を見失ってしまうんじゃないでしょうか。

お互いにそうだと思いますが、完全に理解なんてできるはずがないと思っていて。ファッション的なセンスを僕は一生分からないと思います。逆もまたしかり。その理解度が良いあんばいになって初めて、お互い気持ちよく仕事ができると思っていて。そのあんばいを測るのも仕事なんだろうなと思うので、今のお話はよく分かります。

スタイリスト TEPPEI × OKAMOTO'S ハマ・オカモト対談「アーティストとスタイリストの関係性から音楽の今を読みとく」

TEPPEI:ここ3日間ずっと撮影現場で会っていますが(笑)、こういうサイクルは2013年から続いていて、そこからの積み重ねは大きいです。最初は、どういう人なのだろう、どういうスタイリングをされて、どういう音楽を作られているのかなと想像する。今は時間も経ているので解釈のスピードも上がりましたが、それは積み重ねと蓄積によるものです。

ハマさんはあくまでOKAMOTO’Sのメンバーですが、単独のお仕事でMCもするし、雑誌の表紙にもなるわけですよね。アパレルの広告にも出ている。それはパブリックイメージを作っていくことがプレゼンテーションになって、さまざまな人に伝わっているからです。その結果としてニーズが生まれ、「ハマ・オカモト」はこの時代に求められる存在になったと思います。

ハマ:男女付き合いもそうだと思いますが、話をしているうちに気が合って付き合うパターンはよくあるじゃないですか。TEPPEIさんも言ってみればそのパターンなのですが、初めてお仕事で会ったときに僕が遅刻するという最悪のスタートで。

TEPPEI:あはははは(笑)。

ハマ:すみません(笑)。以前、ある雑誌でバンドの連載企画を持っていたのですが、毎回テーマごとにスタイリストさんが変わる内容で。僕たちもまだ若手だったので、いろいろな人に会うために、毎回違う方にお願いをしていて。その時にメンバーの知り合いだったTEPPEIさんに声をかけて、オッケーだったら来てくれるかも、という流れがありまして。OKAMOTO’Sのメンバー間では、特定のメンバーが仲良くしている人と他のメンバーは仲良くならないという、暗黙の了解のようなものがありまして。

TEPPEI:そうなんですね。

ハマ:初めてご一緒させてもらった時も、現場であまり仲良くしない方が良いと勝手に思っていたのですが、その次の記憶は一緒に遊んでいるところなんですよ(笑)。人付き合いって、波長や気が合うところから始まって「ここは自分と違う」という瞬間にパタリと終わることもあれば、それが起爆剤になって良い関係に変わることもある。

TEPPEIさんは性格的に真反対の部分もありつつも、かみ合う部分もたくさんあって。個人的には客観視がすごく上手な方という印象です。今や僕らのビジュアル面でのバンド像や個人のイメージは、ほぼTEPPEIさんが作り上げているわけですから。そのイメージと、雑誌や広告側の求めるものが合致しているからさまざまなところに呼んで頂けている。

TEPPEI:初見で、OKAMOTO’Sの4人がどういう性格で、そもそも仲が良いか悪いかなんて分からないじゃないですか。それで最初は探るところから始まって……第一印象言っていいですか?

ハマ:ええ、どうぞ。

TEPPEI:ハマさんは見た目が怖そうだなあと(笑)。

オカモトズ

ハマ:あっはっはっはっはっ!(笑) 

TEPPEI:最初、遅刻したハマさんがいなくて、でも他のメンバーはいる。いざフィッティングを始めようとなった時には来ていて、遅刻したのにおすしを食べだしたんですよ(笑)。

ハマ:デビューして何年経っても遅刻なんかダメだと思っています……。ただ、現場に入ったらもう始まっていて、「すみません……」も言いづらい状況だなと思っていたら目の前におすしがあったので、引き寄せられるように座ってしまいました。感じの悪さはこの上ないですね。はい、この話やめましょう(笑)。

私服でステージに立つスタンスと、スタイリストの存在意義

オカモトズ

ハマ:さっきも言ったように、僕たちはステージに上る時には衣装を着る、というスタンスからスタートしたのですが、デビューした時くらいかな? 楽屋の服と同じ服装でステージに上っている人たちがいて、「家の鍵が付いたまま演奏しているんだな」と気になってしまって。やっている音楽よりも「お金を払って見にきてくれている人たちの前で、家から着てきた服でやっていいの?」と純粋に思った。

地の姿のままで写真を撮ってもらったり、MVやステージに出演したりすることが当たり前という流れは確かにありますし、それについて私服だからかっこわるいという思いは一つもありません。彼らには彼らの美意識があって、ファンもその部分に共感しているでしょうし。なので、僕らとは出自が違うというか、OKAMOTO’Sはそのスタンスではないというだけで、もちろん批判的な目で見ているわけではなくて。

僕らがTEPPEIさんにお願いしている理由は、簡単な言葉になってしまいますが、初めて担当してもらった時に純粋にかっこいいと感じたからで、バンドとしてそこに賭けている。もちろん私服の方がお金もかからないですし、コストがかからないという点では良いに決まっているのですが、自分たちが家の姿見の前で何時間やろうがかなわない「技術と心情」がある。

それはアーティストが音楽を必死こいて作っているのと同じで。僕たちもプロなので、まねのできないプロの仕事としてお任せしています。OKAMOTO’Sは4人のメンバーがいるのですが、スタッフさんを含めて大きなチームという意識が非常に強いです。

TEPPEI:家から着てきた服というと少し角のある言い方になってしまいますが、「街にいるイケてる若者が鳴らしている音楽」というイメージで見ると、リスナーのシンパシーがOKAMOTO’Sとは別のベクトルなのかなとは思いますけどね。音楽を聴くという行為にはいろいろな種類のたしなみ方があるじゃないですか。今を感じるために聴くとか、周りが聴いているから聴くだとか、悲しい時に助けてもらうとか。

衣装を着てステージに立つとシンパシーを感じないなんてことはもちろんないわけで、僕としては、なぜ彼らにかっこつけてステージに立ってほしいかというと、かっこいい音楽を作っているから。その一言に尽きます。

ハマ:簡単な言い方かもしれませんが、私服のままだと気合が入らないという思いもあります。それこそ、never young beach(以下、ネバヤン)やSuchmosは理にかなっていると思っていて。彼らはそのままであるべきだと思いますし、やっている音楽と人間性とを踏まえた上で、楽屋で会ったボーカルの安部ちゃんがそのままのかっこうでステージに立って、ネバヤンの安部勇磨の音楽を表現するのはすごくかっこいい。僕らはそうではなくて、服を着させてもらって、バチッと決めてもらわないとスイッチが入らない。翻って言えば、「地の自分たちのまま、自信を持って発信できる人が増えてきた」という言い方ができるのではないかと思います。私服でステージに立つバンドというのは。

OKAMOTO’Sのファッションをどのように構築していくか

オカモトズ

ハマ:ファッションについては、僕らがやっているような(スタイリストとチームでという)スタイルが増えていかないとダメだと思うのが個人的な意見です。応援してくれる人たちが「何だったんだ」とがっかりしてしまうことが一番残念なので。

TEPPEI:自分としては、ハマさんたちがスタンダードになるという野望を具体化していくのが使命だと思っています。OKAMOTO’Sに携わっている意味そのものでもあります。服をただスタイリングするというよりも、その人が考えている「かっこいいものとは何か」についてブレストをして、小さな意見も含めて、綿密にひもといていかないといけないと思うんですね。

責任を伴う話なので、安易に答えを出すべきではないけれど、じゃあ1時間の打ち合わせで足りるかと言われれば足りない。例えば今日の対談の1ワードでもいいから、僕の中で「こう思う」というものが記憶・蓄積されていって、総合的に考えた上での提案をするべきで、それを心がけて今までやってきています。

ハマ:ただ、今時間が足りないと言っていた打ち合わせに関しては、僕らはマジでふざけてしまうのでTEPPEIさんは本当にムカついていると思います。

TEPPEI:いや全然ムカついてはないですよ!(笑) 今日の対談もそうですけど、座っていきなりこういう話ってできないじゃないですか。ある程度の準備運動があって、やっとひとつ大事な話ができるというか。

オカモトズ

ハマ:困ったことに、40分くらいはふざけていないとエンジンが温まらないバンドなんです。それで、残りの20分で言いたいだけ言って、「最終的にはかっこいい感じですかね」と伝えて、打ち合わせが終わる(笑)。もちろん美的感覚もバラバラなので、それぞれの求めているものは違っていて。

TEPPEI:でも対立はしませんよね。バンドという船をこぐに当たって、自分が客観的に見た時にどうあるべきかを、おのおのはじき出していかないと、後々「なんでああしたんですか」ってなってしまうのが一番いけない。

ハマ:だから余計にTEPPEIさんのような人がいないと無理ですよね。完全なセルフプロデュースになってしまったら、全然かっこよくならないと思います。僕はたぶん、たまたま学校で出会って、こういう流れになっていなかったら嫌いですもん、メンバー(笑)。同級生がいまだに「よくやってるよね」と言ってくるぐらい。それくらい性格がバラバラなので、集合体として見せる技術は完全にTEPPEIさんに委ねているところはありますよ。手綱を握られているというか。

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TEPPEI:性格をスタイリングに結びつけている感覚はあります。OKAMOTO’Sは中学から同じで、仲の良さを超えた絆や縁を感じますが、それぞれ別のバックボーンがあるので、キャッチアップできるものは当然変わってきます。それを服にどう落とし込んでいくか。何をかっこいいとするか。おそろいの衣装で行きましょうと言うかもしれないし、キーカラーを作ってそれぞれの色をまとめる時もあります。

一時期「こうじゃないといけない」と執着していたんですけど、今は肩の力を抜いてできているんですよ。OKAMOTO’Sの新作『BOY』はみんなの気持ちを聞いていく中で、どんなスタイリングが良いのか見えてきた作品です。この作品には「BOY」から「MAN」へというコンセプトがあるんですね。BOYは読んで字のごとく少年性を感じさせるものですが、10周年でその冠を掲げて、アルバムのデザインは彼らの幼少期の写真がコラージュされたものになっていく。

衣装を作る時には、10年経って子どもから大人へと苦楽をともにして、成熟した彼らを描きたかった。等身大の良さを可視化できるようにしたかったんです。ショウさんだったら男らしさが伝わるように皮の素材が入っていたり、逆にコウキさんは「ヤバコウキ」(2005年リリースの「Beautiful Days」収録の楽曲)以降、かわいらしさを感じさせるキャラクターを確立されたので、今回は丸みのあるオーバーサイズのサイジングに。レイジさんは彼なりに自分でブランディングしているから、ストリート周辺でのキャラクターが損なわれないままでどう見せるか。ハマさんは文字通りの“適当”です。

オカモトズ

左から:ハマ・オカモト、オカモトレイジ、オカモトショウ、オカモトコウキ

ハマ:TEPPEIさんは、一日に何十人ものモデルさんのスタイリングをする広告のお仕事もされているじゃないですか? それもまた別世界の仕事だと思っていて。現実的にコミュニケーションを取る時間もないわけです。ファッションショーって素人にはまったく分からない現場なので、深い話を聞くのは面白くて。「なんで服の上に綿を乗せちゃうんですか?」といった、本当に聞くのも失礼にあたるような素朴な疑問だったり。

TEPPEI:生音に対してのエフェクトのような感じと言ったらどうですか?

ハマ:「曲に必要だから」と答えますが、確かに分からないですよね。それと一緒か、なるほど。

オカモトズ

TEPPEI:ファッションショーではまず本質的な伝えたいことがあって、そこにテーマ、コンセプト、人物の感情といったいろいろなものを誇張して、わずか数秒に込めた結果、理解不能になっていくという(笑)。よく言われるところでは「なんでスケスケのワンピースで、裸なの?」がありますね。

ハマ:あと笑わないですよね。楽しい感じを出さないというか。それが不思議だなって。

TEPPEI:過去、モデルとはマネキンのような存在とみなされていたんですね。個人的には90年代にスーパーモデルブームを牽引したナオミ・キャンベルの登場は、ファッションモデル史に“多様性”を生んだという意味で、エポックメイキングな出来事だと思っています。今では老若男女問わず、いろいろな人がショーに出演しているんですね。例えば、街でキャストされてきたおじいさんもいらっしゃるし、パリで街を歩いていた少年を起用したのがエディ・スリマンで、ディオールオムのショーに出演させる、ということが2000年代初頭にあったりしたんですよ。

近年では、ヴェトモン(Vetements)というブランドのショーで歩くモデル。ショースタイリングを担当しているロッタという女性スタイリストがよく行くクラブで出合った友達が出ていて、自分も歩いちゃうとか。生々しいストリートカルチャーを見せるというのが、現代的なテーマとしてあるんです。

ハマ:じゃあ、モデルさんが笑うっていうことも今後あるかもしれないわけですね! 「今回見た?ランウェーでみんな笑ってたよ!」ということが起きる可能性がなくはないと。

TEPPEI:実際にそういう趣向のショーはありますけどね。平たくいうと「かっこいい像」が移り変わって、切り口として「スーパーハッピー」というテーマが登場する、というのはありうるかもしれません。

ハマ:……っていう話を普段して、「じゃあ、こんな感じでお願いします!」という感じで別れるんです(笑)。でも本当はこういう話をすることが大事なんですよね。

オカモトズ

(文・&M編集部 岡本尚之 写真・兼下昌典 撮影協力:or glory神宮前店)

TEPPEI(てっぺい)
1983年、滋賀県生まれ。ファッション系の専門学校卒業と同時に原宿のヴィンテージショップ「ドッグ」のプレスに就任するとともに、『FRUITS』『TUNE』といったスナップ誌の常連として掲載され、国内外でカルト的な存在として注目を集める。2006年公開の映画『間宮兄弟』では、玉木役に抜擢され演技未経験にもかかわらず俳優デビューを飾る。その後スタイリストとして本格的な活動を開始し、多くのミュージシャン、ファッションビジュアル、ショーのディレクション、広告ビジュアルなどに携わっている。

ハマ・オカモト
中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’Sのベーシスト。2010年、日本人男子としては最年少でアメリカ・テキサス州で開催された音楽フェス「SxSW2010」に出演。アメリカ七都市を回るツアーや豪州ツアー、香港、台湾、ベトナムを回ったアジアツアーなど、海外でのライブを積極的に行っている。これまでシングル8作品、アルバム7作品を発表。

2015年9月にはメンバー渾身のロック・オペラアルバム「OPERA」を発売。2016年6月3日からは「OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016」と題した、キャリア初の47都道府県ツアーを敢行し、ツアーファイナルは日比谷野外大音楽堂にて開催された。2017年8月2日には約1年半ぶりとなるオリジナルフルアルバム「NO MORE MUSIC」をリリースし、10月30日より年またぎで全国23か所を回るツアー「OKAMOTO’S TOUR 2017-2018 NO MORE MUSIC」を敢行、ツアーファイナルはZepp Tokyoにて開催され大盛況のうちに終了した。2019年1月には10周年イヤーの幕開けを飾るフルアルバム「BOY」をリリース。また、4月6日(土)横浜BAY HALLを皮切りに、全国20ヵ所21公演を回る全国ツアー「OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2019 “BOY”」を敢行し、6月27日(木)にはOKAMOTO’S史上“最初で最後”の日本武道館ワンマンを開催予定。10周年イヤーに向け、ますます加速を続け精力的に活動を続けている。

Label : Sony Music Labels
HP : http://www.okamotos.net/

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