20代ミュージシャンが語る”譲れない価値観”

「死の本質」に触れた角舘健悟(Yogee New Waves) 世界の美しさも醜さも真正面からとらえた作品づくり

知識を無視して、感じたことを直感的に表現するのが楽しい

Yogee New Wavesは角舘健悟(Vo / G)、粕谷哲司(Dr)、竹村郁哉(G)、上野恒星(B)の4人編成のバンドだ。2014年に発表した「CLIMAX NIGHT」で20代のあてどない逃避願望を表現して注目の存在となった。

作詞・作曲を担うバンドの屋台骨は、フロントマン角舘健悟だ。彼は日常からワンテーマをピックアップして、拡大して、曲にしていく。メンバーに曲のイメージを伝えるために、絵を描くこともあるそうだ。その独特の感覚は幼き頃に出会ったある人物に影響を受けている。

「僕の最初の音楽体験はドラムです。いろいろな習い事に通わされたけど、唯一続いたのがパーカッション。3歳から高校2年生まで続けました。その教室は先生がすごく面白くて。最初の2年間は楽器に触らせてくれない。先生が刻むリズムに合わせて、床の円を回ったり、体を動かしたり(笑)。どこか宗教みたいだけど、今思うと、理屈じゃないリズムの感覚を体に染み込ませるための作業だったんだと思う。『ハイハットのシンバルは、ペダルを踏んだつま先の力が手に伝わってフッと落ちてくるのを意識してたたくんだよ』とアドバイスをくれたり、とにかく感覚的な人。先生は僕の音楽の師匠で、感じたことを直感的にアウトプットする“純粋芸術”の面白さを教えてくれました」

角舘健悟(Yogee New Waves)さん

以来、角舘は自分自身の感覚をとても大切にしている。それは、こんな言葉からもうかがえる。

「僕は今知識が邪魔でしょうがない。例えば曲を作ってると『これ、何か(の作品)に似てるな』って思うことがあって。でもそれは全然悪いことじゃない。(自分とその作り手が偶然)同じような季節の、同じような時間帯に、同じような狭い部屋で、同じような楽器を持って、同じような気持ちになった。その時の感覚を『良いな』と思ったから表現しただけなんですよ。でも知識があるせいで、パクリと思ってしまう。もちろん意識して何かに似せようとするのはカッコ悪いけど、自分の中から出てきた『良いな』という感情を、知識がある故に自分から否定してしまうのはナンセンスだと思うんですよ」

『BLUEHARLEM』とは人間が人間らしくいられる場所という意味

Yogee New Wavesのニューアルバムのタイトル「BLUEHARLEM」には、「人間が人間らしくいられる場所」というニュアンスが込められているという。実は当初、明確なテーマが見つからないままアルバム作りはスタートした。転機は昨年11月。旅行先のメキシコ・ハニッツィオ島でコンセプトの着想を得た。

角舘健悟(Yogee New Waves)さん

そもそもなぜメキシコへ? 角舘を旅に駆り立てたものは「死」だった。幼心に漠然とした恐怖心を持ち、受け止め方がずっとわからずにいた「死」という概念。

昨年10月の末、27歳を迎えたとき、改めて死を意識した。カート・コバーン(ニルヴァーナ)、エイミー・ワインハウス、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、ブライアン・ジョーンズ(ザ・ローリング・ストーンズ)ら伝説のミュージシャンが早世したのと同じ年齢になったからだ。

角舘の誕生日の数日後、ラテンアメリカ諸国では「死者の日」と呼ばれる祝日を控えていた。毎年10月31日には前夜祭、11月1、2日には祝祭が催され、期間中は日本のお盆のように、死者の魂が地上に戻ってくると考えられている。街はマリーゴールドの花で彩られ、屋台が立ち並び、バンド演奏も盛大に行われる。黒装束に骸骨のお面をつけた仮装が有名で、この祭りをテーマにしたディズニー映画『リメンバー・ミー』も作られている。

「死者の日」の存在は昔から何となく知っていた。ただ、人が亡くなったというのにお祭りをする感覚は理解できずにいた。死を意識する年齢を迎えた角舘は、その奇妙に感じる風習を見に、「死者の日」の発祥の地であるメキシコのハニッツィオ島に向かった。

「ハニッツィオ島の『死者の日』に参加しているのは、ほとんどが地元の人でした。骸骨の仮装を携帯で撮影している若者がいる一方で、お墓の前で生前の親族を懐かしみ、悲しんでいる人もいる。11月1日は子供の死者の魂が返る日と言われていて、寒空の中、毛布にくるまって子供の墓の前にずっといる母親らしき人も見かけました。

それを見て『死は悲しいものなんだ』と感じました。悲しいからあえて笑ったり、楽しくお祭りしたりする人もいるし、静かに悼む人もいる。表現のしかたはそれぞれ違うけど、みんなシンプルに悲しんでいました。街を彩るマリーゴールドは、死者の人生が美しいものだったことを表現するために飾るそうです。僕はこれまで死を恐怖するあまり、余計な情報を頭に入れすぎてしまっていた。頭では『死が悲しい』とわかっていたけど、死そのものをどう理解していいのかわからないでいたから、いろんな理由づけをして、死への恐怖を勝手に大きなものにして理解しようとしていた。だけど実際、死はシンプルに悲しいものだった。それ以上でもそれ以下でもない。理屈ではないものを見せられた気がしました」

角舘健悟(Yogee New Waves)さん

ハニッツィオ島は死の本質だけでなく、人生の本質も教えてくれた。

「ハニッツィオ島はこの世のものとは思えないほど美しい場所でした。僕は間違えて、普通の人が入っちゃいけないエリアに入ってしまったのですが。でもそれが良かった。人の営みは奇麗事だけでは成立しないというか。人生の安息を得る上では当然負の存在もあって、それは避けては通れません。頭ではわかっていたことを、現実としてまざまざと見せつけられた気がしました。

美しさも汚さもあるハニッツィオ島は、ありのままの人間を許容する島だと思いました。ただ体を休めたり、悲しくて嘆いたり、人間が人間らしくいられる場所。それを自分なりの言葉にしたのが『BLUEHARLEM』です。ブルーって一般的には悲しさを表現する際に使われますよね。でもブルーには華々しさもあると思う。僕はハニッツィオ島に悲しさと華々しさを同時に感じて、しかもそれが美しいと思った。それはそのままアルバムで表現したいことにつながると思ったので、『BLUEHARLEM』をタイトルにしました」

人が人を思うこと。自分の信念を『BLUEHARLEM』で形にできた

角舘は美しさも醜さも抱えるこの世界を真正面から見据えて、『BLUEHARLEM』という作品を制作した。収録曲「CAN YOU FEEL IT」では、「声に出して 言葉にして 伝わらない方がいい」と歌い、“ただ感じるだけ”の瞬間を肯定した。

角舘は自分の心が感じるままに生きている。その豊かな感受性は誰もが見逃してしまう世界の美しい瞬間に気づかせてくれる反面、見なくてもいい、知らなくてもいい、社会のひずみにたまった澱(おり)すらも感じ取ってしまう。

社会とは人と人とのつながり。社会との関わりが増えると、人は無意識のうちに感性を鈍化させやすい。それでも自分の中に、言葉にできない素晴らしい瞬間をとらえる感性は消えずに残っていることを、角舘の曲は思い出させてくれる。

最後に角舘の譲れない信念を聞いてみた。

「人が人を思うこと。つまり愛こそがすべて。抽象的すぎるかな……(笑)。僕は感情の赴くままに曲作りをしているけど、もっと世の中の人が普通にわかるようにしたほうがいいのかなって迷う部分もちょっとあります。自分の中のイメージをかみ砕いて。でもそうすると、自分がやりたかったことからどんどん離れていく。だからそこのバランスをどうしたもんかなって。

でも今回のアルバムで一つの形が見えました。せっかくYogee New Wavesという屋号で4人一緒にやっているのだから、自分ばっかり目立つのは嫌で、今回はメンバーにめちゃくちゃ頑張ってもらいました」

角舘健悟(Yogee New Waves)さん

自分の中の抽象的なイメージをそのまま投げ、メンバーが曲に仕上げたという。

「そんな僕のわがままに、みんなすごいぷりぷりしてたけど、同時に結構楽しそうでもあって(笑)。なにより良かったのは、メンバーが僕のわかりづらさを咀嚼(そしゃく)してわかりやすくしてくれたこと。僕のやりたいイメージを理解しつつ、僕一人では出てこなかったキーワードを見つけてくれたというか。つまり、人が人を思うことが形になった。

そういえば、僕がメキシコに行ってる間、他のメンバーも世界各地に旅行していろいろつかんだみたいなんですよ。ドラムのかすちゃん(粕谷哲司)は、カンボジアで地鳴りを聴いて『人間の五感と大地はつながってる』とか言ってましたからね(笑)」

人と人とのつながりが社会を作る。角舘にとってYogee New Wavesというバンドこそが、『BLUEHARLEM』(人間が人間らしくいられる場所)なのかもしれない。

(文・宮崎敬太 撮影・江森康之)

角舘健悟(Yogee New Waves)さん

プロフィール

角舘健悟(かくだて・けんご)
1991年生、東京出身。2013年にバンド、Yogee New Wavesを結成、ボーカルを担当。2014年4月にデビューe.p.『CLIMAX NIGHT e.p.』を全国流通でリリース。以降、全国各地の野外フェスへの出演や海外公演を重ねる。バンド活動の傍ら、アパレルブランドのモデルやテレビ番組のナレーターなど活動の場を拡大。音楽、ファッションの両面で、10~20代を中心に厚く支持される。

リリース情報

3rd アルバム『BLUEHARLEM』 3rd アルバム『BLUEHARLEM』

通常版
価格:3,240円(税込み)

初回限定盤(CD+DVD)
価格:4,104円(税込み)

イベント情報

『TOUR BLUEHARLEM 2019』

■6月8日(土)岡山 YEBISU YA PRO
OPEN 18:00/START 18:30
問い合わせ:夢番地岡山 086-231-3531

■6月14日(金)福岡 DRUM LOGOS
OPEN 18:30/START 19:30
問い合わせ:BEA 092-712-4221

■6月15日(土)鹿児島 SR HALL
OPEN 18:00/START 18:30
問い合わせ:BEA 092-712-4221

■6月16日(日)長崎 DRUM Be-7
OPEN 17:30/START 18:00
問い合わせ:BEA 092-712-4221

■6月22日(土)浜松 窓枠
OPEN 18:00/START 18:30
問い合わせ:BOOM BOOM BASH 054-264-6713(12:00~17:00)

■6月29日(土)新潟 studio NEXS
OPEN 18:00/START 18:30
問い合わせ:FOB新潟 025-229-5000

■6月30日(日)仙台 darwin
OPEN 17:30/START 18:00
問い合わせ:Coolmine 022-292-1789

■7月5日(金)名古屋 ダイアモンドホール
OPEN 18:30/START 19:30
問い合わせ:ジェイルハウス 052-936-6041

■7月6日(土)金沢 EIGHT HALL
OPEN 17:45/START 18:30
問い合わせ:FOB金沢 076-232-2424

■7月12日(金)札幌 ペニーレーン24
OPEN 19:00/START 19:30
問い合わせ:WESS 011-614-9999

■7月14日(日)なんばHatch
OPEN 17:30/START 18:30
問い合わせ:清水音泉 06-6357-3666

■7月15日(月・祝)高松DIME
OPEN 17:30/START 18:00
問い合わせ:DUKE高松 087-822-2520

■7月17日(水)Zepp DiverCity TOKYO
OPEN 18:30/START 19:30
問い合わせ:SMASH 03-3444-6751

■7月21日(日)沖縄 桜坂セントラル
OPEN 17:30/START 18:00
問い合わせ:PM AGENCY 098-898-1331

PROFILE

宮崎敬太

1977年神奈川県生まれ。音楽ライター。ウェブサイト「音楽ナタリー」「BARKS」「MySpace Japan」で編集と執筆を担当。2013年に巻紗葉名義でインタビュー集『街のものがたり 新世代ラッパーたちの証言 (ele-king books) 』を発表した。2015年12月よりフリーランスに。柴犬を愛している。

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