LONG LIFE DESIGN

流行に背を向け、時代はしっかり見る。ナガオカケンメイの思考

東京・日暮里 にある最近通っているバー。何度か通っていくうちに、やっと会話してもらえるように。店だからといって誰でも歓迎されるとは限らないし、店主との相性も大切。長らく通っている常連の先輩がたに、気をつかいながら通う感じもいい=写真はいずれもナガオカケンメイさん提供

東京・日暮里にある最近通っているバー。何度か通っていくうちに、やっと会話してもらえるように。店だからといって誰でも歓迎されるとは限らないし、店主との相性も大切。長らく通っている常連の先輩がたに、気をつかいながら通う感じもいい=写真はいずれもナガオカケンメイさん提供

 

デザイン活動家でD&DEPARTMENT代表・ナガオカケンメイさんの、「LONG LIFE DESIGN(ロングライフデザイン)」をテーマにしたコラムです。ナガオカさんが心を動かされた場所や人、モノの写真もお楽しみに。

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世の中にあるいろんなものを、ある見方で眺めてみましょう。それは「流行」という追い風に乗って私たちの周りにやってきたものか、そうではなく、私たち生活者によって見つけ出されたように、昔から存在していたものか、です。もちろん、トレンドを追う雑誌などに取り上げられたものは、流行の風と同じと考えて、です。

伝統的工芸品展に2月に行ってきました。伝統を背負い、産地を背負い、そして、時間を惜しまず、もしかしたら、出店先のブランド性にもこだわることなく、広く、手仕事を伝えようという努力には本当に頭が下がります。応援するつもりでみんなで行きたい。写真は京都の「桶屋近藤」さん

伝統的工芸品展に2月に行ってきました。伝統を背負い、産地を背負い、そして、時間を惜しまず、もしかしたら、出店先のブランド性にもこだわることなく、広く、手仕事を伝えようという努力には本当に頭が下がります。応援するつもりでみんなで行きたい。写真は京都の「桶屋近藤」さん

私たちの周りにはそうして意識して眺めると、流行の力を借りて登場したものがほとんどであると分かります。それらは次なる新しい流行によってやってくるものに打ち消されるように、なくなっていきます。私たちが「あれ、欲しい」と思う時、そのほとんどは自分とは関係ない、自分の生活のことを本当に考えて、長く愛して使い続けられることなど、意外と関係していないことが多いのです。

例えば、憧れの人が持っていた……とか、テレビで紹介されていたから……とか。流行(はや)ってるものを持っていれば、友達に自慢できます。何か時代の先端を生きているような、何とも言えない満足感のようなもので、ワクワクしたりもします。

しかし、長いローンを組んで新車を買ったのに、半年も経たないうちにその型のモデルチェンジは登場する。あなたが半年前に苦労して買った車の最新型と、道路ですれ違った時の複雑な心境は、誰しも似た経験も含め、あると思います。もちろん、僕も。

ちょっとおしゃれな人はなぜ、年代の古い車に乗るのか

ちょっとおしゃれな人はなぜ、年代の古い車に乗るのでしょう。もしかしたらそんなこと、考えたこともなかったかもしれませんが、この機会に考えてみましょう。

要するに、「その価値を本当にわかっている」ということであり、そして「最新型(モデルチェンジ)を意識しなくて済む」からです。つまり「長く愛せる」もの。流行なんて関係なく、ずっと自分のペースで使い続けられるものだと言えると思います。

僕は講演会に呼ばれると、決まってこの話をします。「本当におしゃれな人とは何か」です。ここまで書いてきたような考え方、見方ができるようになると、この答えはちょっと人とは違ってきます。

こうしたロングライフデザインな視点のない人なら、おしゃれな人とは「時代の最先端のものを身にまとう」人。頭の先からつま先まで、流行のものを取り入れている人のことだと思うでしょう。それはある意味、間違ってはいませんが、誰でも頑張れば真似(まね)ができますし、毎シーズン、流行を追わなくてはならず、大変です。

「ロングライフデザインな定番に、最新を組み合わせることが上手な人」

僕が思う答えは、「いつの時代も変わらないロングライフデザインな定番に、最新を組み合わせることが上手な人」だと、思っています。

これは、人に限らず、街や国、企業にも当てはまります。古い町並みを壊し、新しいビルを次々に建てていく。一見、最新感覚の未来都市のようで、快適さに満ちあふれていそうですが、そうして全国が同じことをしていくと、誰しものふるさとの風景が同じものになって、どこか寂しく思います。ここで何を残し、何を新しくすべきかを考える。ここにセンスが問われ、おしゃれな街として、みんなに愛されるわけです。

コーヒーチケットは継続して応援する気持ちの証し。自分がその店を好きだという、店主へのラブレター。僕もカフェを経営しているので、実はコーヒーチケットを買ってくれるのは、本当にうれしい。関係性のチケット

コーヒーチケットは継続して応援する気持ちの証し。自分がその店を好きだという、店主へのラブレター。僕もカフェを経営しているので、実はコーヒーチケットを買ってくれるのは、本当にうれしい。関係性のチケット

センスのいい店は、雑誌やテレビなどメディアからの取材を拒否したりします。聞いたことありますよね。「何を格好つけてるんだよ、生意気だ」と思われるかもしれませんが、ロングライフデザインで居続けるには、とにかく他人の力は借りてはいけません。なぜなら、例えば、取材後、テレビで放送されたことで、次の日からお客さんがどんどんやってきて、飛ぶようにものが売れたりする。

これは一見、良さそうなことに思えますが、まず、いい店だと思って毎日のように通ってくれていた常連さんが離れていきます。また、他人の力ですから、徐々にその威力は消えて、やがてなくなります。元に戻った時には、それまで自分のペースで一つ一つこだわり、丁寧にやってきたことで、作り上げたものや、お客さんは、取り戻すことはできません。

まして、お客さんがどんどんやってくるからと言って客席を増やしたり、キッチンの設備や大きさを変えたりすると、話題が消えて無くなった時、それらは簡単には変えられず、結果、経営が行き詰まってしまう。実にリアルな話です。

芸術系大学の卒業制作展より。若い学生たちも 「昔からあるいいものを残したい」ということをテーマにしていた。バブル期を体感した両親に育てられ、昔のなくなりつつあるこうした風土の一つ一つに、関心を寄せ、そのアイデアを作品にしていた

芸術系大学の卒業制作展より。若い学生たちも 「昔からあるいいものを残したい」ということをテーマにしていた。バブル期を体感した両親に育てられ、昔のなくなりつつあるこうした風土の一つ一つに、関心を寄せ、そのアイデアを作品にしていた

うどんの名店は「自慢の麺がなくなったら終了」の看板がちゃんとあります。長く続けるということは、自分のペースで無理をしない、ということと言えますね。

京都のイケズ(意地悪)の代名詞、「一見(いちげん)さんお断り」も、実はロングライフデザインな京都を保つためのアイデア。お金を持った知らない人を相手にするより、京都の町や店を愛して通ってくれるお客との信頼関係を重視する。だからこそ、景気がたとえ悪くなっても、心配しながら常連さんは通ってくれる。伝統あることを長く続け、次の代につなげることに重きを置く京都だからこその長く続ける手段です。

同じく芸術系大学の卒業制作展より。ちょっと横道にそれますが、面白いアイデアだったので。伝統工芸の手わざのすごさを伝えたいと考えたこの学生は、「失敗作」を交渉して職人から借りて展示していました。「え、どこが失敗作なの??」と、思う反対側に、技術のすごさを感じてもらう素晴らしいアイデア

同じく芸術系大学の卒業制作展より。ちょっと横道にそれますが、面白いアイデアだったので。伝統工芸の手わざのすごさを伝えたいと考えたこの学生は、「失敗作」を交渉して職人から借りて展示していました。「え、どこが失敗作なの??」と、思う反対側に、技術のすごさを感じてもらう素晴らしいアイデア

ちょっと上級編ですが、いい店は「いいメディア」を選んでいます。自分たちのことをちゃんと育てるように紹介し続けてくれる雑誌やラジオなど、ここにはお互いにいい関係があります。「いい店」はメディアにとっては「いい情報」です。そこには、それを選んで読んだり、聴いたりする「いいお客さん」がいます。

つまり、ロングライフデザインとは、育てるものであり、守るものであり、同じ価値観を認め合っている人たちによって応援されるものなのです。

いい店やブランドは、実はメディアを選び、毎日実直に営業しています。老舗だからといって、不思議に経営力、財力があるとは限らないものです。実に細々と、無理のない毎日の営みが、私たちには素敵に見える。それは、実は、そう思った人たちに支えられないと、続いていけないものだったりもします。健やかで気持ちのいい店やブランドには、無理がありません。

だからこそ、最新の店やブランドに興味を持ち、楽しく衝動買いもいいですが、それと一緒に、変わらないもの、場所への関心、感謝も一緒にもち合わせるセンスが、大切です。

最近、本当に「ロングライフデザイン」をテーマに講演依頼をたくさん頂きます。世の中が、「長くつづいているデザイン」に関心を高めている証拠ですね

最近、本当に「ロングライフデザイン」をテーマに講演依頼をたくさん頂きます。世の中が、「長くつづいているデザイン」に関心を高めている証拠ですね

流行に背を向け、時代はしっかり見る。ナガオカケンメイの思考

ロングライフデザインは流行に背を向けながら、しっかり時代の様々な要素を取り入れ、生きています。ぜひ、そんな思考を取り入れて、楽しく健やかに暮らしたいところです。

さて、前回と今回で、ロングライフデザインとは何か、ざっくりと基礎をお話ししました。次からはそんな店やものなど、具体的な私たちの身の回りに存在するものの話を書いていきたいと思います。お楽しみに。

PROFILE

ナガオカケンメイ

デザイン活動家・D&DEPARTMENTディレクター
その土地に長く続くもの、ことを紹介するストア「D&DEPARTMENT」(北海道・埼玉・東京・富山・山梨・静岡・京都・鹿児島・沖縄・韓国ソウル・中国黄山)、常に47都道府県をテーマとする日本初の日本物産MUSEUM「d47MUSEUM」(渋谷ヒカリエ8F)、その土地らしさを持つ場所だけを2ヶ月住んで取材していく文化観光誌「d design travel」など、すでに世の中に生まれ、長く愛されているものを「デザイン」と位置づけていく活動をしています。’13年毎日デザイン賞受賞。毎週火曜夜にはメールマガジン「ナガオカケンメイのメール」www.nagaokakenmei.comを配信中。

初めまして、ロングライフデザイン。ナガオカケンメイが40歳目前に疑ったこと

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ロングライフデザインの10か条(前編) ナガオカケンメイ「定価には意味がある」

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