今回の主役EVや注目されたレクサスLM 上海国際モーターショーレポート

“レクサス版アルファード”誕生

「上海国際モーターショー2019」が、4月16日に開幕した。
世界最大の自動車マーケットである中国では、米国との貿易摩擦による景気停滞を受け、2018年の自動車販売台数が28年ぶりに前年を下回った。しかし、18回目となる今回の上海ショーは、20の国と地域から1000を超える企業・団体が出展。公式ガイドに紹介された自動車メーカー・大手サプライヤーだけでも141社と、依然として盛況である。2017年東京モーターショーへの出展が、10の国と地域から153社・団体だったことからすると、その規模の大きさがおわかりいただけるだろう。

(TOPの写真はレクサスLM)

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パビリオン数こそ前回の2017年から1館減って12館となったが、展示面積は36万平方メートルと極めて広い。こちらも2017東京ショーの4倍に相当する。

トヨタは、「C-HR」と姉妹車「IZOA(イゾア)」の電気自動車(EV)版を世界初公開した。これは同ブランドとして中国初投入のEVである。中国政府が生産や販売を義務付ける「新エネルギー車」の定義に従来のハイブリッドは含まれず、プラグイン・ハイブリッド、もしくはEVに絞っていることに対応したものである。

レクサスは、同ブランド初のミニバン「LM」を世界初公開した。これはトヨタ・アルファードをベースにしたものだ。展示車は、後部に26インチの大型ディスプレイを備えていた。

実車の前で筆者が会ったイタリア人デザイナー2人に感想を聞いてみると、彼らの反応は冷淡だった。
「アルファードを知っているので室内が広いことは理解しているが、外観に締まり感がない」
「ボディ側面のリフレクションが美しくない」
「フォルクスワーゲンのキャンパーのような歴史がない」
これが彼らの見解である。デザインやヒストリーの視点からの彼らの指摘は、ある意味で当を得ている。ただし、筆者が考えるところ、こうした車は中国で、ライドシェアをはじめとするピープルムーバーの膨大な需要を開拓する可能性を秘めている。

実際、中国メディア関係者の反応はすこぶる良く、ネット媒体が熱心に収録を行い、来場者が絶えずカメラを向けていた。中国人スタッフによれば、2020年の発売予定という。

一帯一路をたどって到来か

BYD 宋pro DM(手前)

BYD 宋pro DM(手前)

一方で、中国国内メーカーの目指すところを端的に示してくれたのは、初日午前に行われた電気自動車大手「BYD」のプレゼンテーションだ。

同社の王伝福会長によれば、「電動化は政府主導から、“政府+マーケット主導”へと変化してゆく」という。

中国政府は、環境対応車の購入優遇措置を段階的に縮小している。財政引き締めの一環と思われる。しかし、環境対応車の普及は堅調だ。会場にいたあるヨーロッパの自動車関連企業の社員は「燃費(電費)のほかに、EVならではの心地よい加速感が早くも評価されている」と話していた。

全面電動化がBYDの目指す未来だ。前回ショーが開催された2年前と比較し、上海市街における環境対応車のめざましい普及を目にすると、その構想もけっして絵空事ではないと思える。

BYDはEVの販売拡張にあたり、国内2万人・世界50万人を専門サービス・アシスタンス要員として従事させることもアピールした。東風も同様にサービスの拡充を会場で訴えていた。アフターサービス体制の充実が、ネット世界でいうところのレビュー向上につながることを、彼らは十分に意識している。

1960年代に日本ブランドが世界各地で地道に成し遂げたことを今、彼らも始めようとしている。現実的なことをいえば、数年後に必ず訪れるリチウムイオン電池の交換という電動車独特の心配を緩和する目的もあるのは明らかだ。

そして、中国メーカーは、自社ブランドの世界展開も目標としている。2000年代初頭から中国メーカーは、欧州のモーターショーに出展しているが、本格的な市場進出は一部の商用車を除いて今日まで実現していない。

一方、最新中国製プレミアムカーの外装デザインや内装デザインに関して言えば、すでに一部の日本車や韓国車を超越している。ブランド構築さえ成功すれば、海外で一定の評価を獲得できるだろう。

BYDのニューモデル群は、「ドラゴン・ファミリー」と名付けられている。中国と西洋のテイストを融合したものという。中国が進めている一帯一路のルートに乗って、筆者が住む欧州に意外にも速く電動の「龍」が顔をのぞかせるかもしれない。そう予感させた今回の上海ショーであった。

(文/写真=大矢アキオ Akio Lorenzo OYA)

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