新入社員と接するときに知っておきたいこと リーダーシップより求められるものがある

の春に入社した新入社員が、そろそろ配属されてきた職場もあるのではないでしょうか。どう接したらよいか戸惑っている人もいるかもしれません。いつの時代でも同じことですが、新入社員世代と、30代の先輩や40代以上の管理職世代との考え方や意識には、やはり時代の変化に伴う違いがあるようです。
今、新入社員に接するときに先輩・管理職世代が知っておきたいことについて、新人や若手育成にかかわる研修を担当するリクルートマネジメントソリューションズHRD事業開発部主任研究員の桑原正義さんに聞きました。

桑原正義さん

桑原正義さん
「新人・若手が育つ職場づくり」を専門テーマにした10年以上にわたるコンサルティング経験の中で、今の時代で実効性のある育成ノウハウを構築。現在はさらに研究を深めつつ、ノウハウの体系化・汎用化に取り組む。

――今の新入社員世代の考え方には、30代や40代の先輩社員と比べてどのような違いがありますか。

桑原 まずこのデータを見てください。弊社では毎年、全国各地で実施する新入社員導入研修を受けた新入社員に対して意識調査をしています。そのなかで「理想の職場・上司像」の2010年から18年までの9年間の変化(選択率の増減が大きい項目を抜粋)を示しました。どんな上司のもとで、どんな職場で働きたいかが変わってきています。

リクルート マネジメント ソリューションズ提供

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上司については「周囲を引っ張るリーダーシップ」や「言うべきことは言い、厳しく指導すること」のポイントが下がり、それに対して「一人ひとりに対して丁寧に指導する」「相手の意見や考え方に耳を傾ける」のポイントが上がっています。

職場は、「活気がある」「みんなが一つの目標を共有している」が下落し、「お互いに個性を尊重する」「お互いに助け合う」が上昇しています。

つまり、リーダーには「強く引っ張るよりも、一人ひとりの考え方に合わせて対応してほしい」。「決められた一つの目標を追って、お互いが切磋琢磨して競い合う」職場よりも、「一人ひとりの価値観を大切にして、助け合いながらやりたい」ということです。

このことを先輩・管理職世代に講演や研修で話すと、「えっ?!」となります。管理職や先輩世代にとっては、自分が新人のときにされていたこととは「真逆」と言っていいくらいです。この背景の違いを理解しないで育成に取り組むと、現場では、上司も、新人本人も苦労するでしょう。

キーワードは「VUCA」

――なぜそのような違いが生まれているのでしょう。

桑原 それを考えるキーワードの一つが「VUCA」です。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という四つの頭文字をとったビジネス用語で、「正解がなく、知識や前例が通用しにくい」「変化が速く、複雑で先が見通せない」という今の仕事環境を指します。

ビジネスの環境をみると、「正解が一つ」ということがなくなりました。正解が一つだった時代では、そこに向けて経験し熟達することに意味がありました。でも今は違います。世の中の価値観もニーズも多様化しています。世の中がいつどうなるかわからないなか、一つの考え方に従うことや、何か一つに依存することは、新入社員世代にとってはリスクであり、多様性を生かす創造的な環境に見えないのではないかと思います。

目の前にいる新人がいいとか悪いとかではない

新入社員世代が育ってきた環境も、上の世代とは違います。個性が尊重され、自分がやりたいことをサポートしてもらえる教育では、相手に合わせるより自分の基準を大切にする傾向があります。

ほめて伸ばす子育ても広まり、怒られることが少ない環境で育っているので、「ダメ出し」されることに慣れていません。生徒が先生を評価する「逆評価」も当たり前の世の中です。

――確かに、教育も社会も変わりましたね。さらに、子どものときから習い事やサービスもたくさんある中から選ぶことができ、合わなければ「自分に合う」別のものに変更できる時代です。

桑原 新入社員世代にしたら、学生時代までは「やりたいことを頑張ろう」「それいいね」で生きてきたのに、会社に入ったら突然「そうじゃない」「この目標でいけ」と、一つに向かってやれと言われる状況になります。「新人だから言うことを聞け」「社会人だから当たり前」と言われると、「えっ?」となります。

それは、目の前にいる新人がいいとか悪いとかではなく、育った環境や時代が違うのです。

その環境の変化が急速に進んでいるので、今は学生から社会人に移行する際の壁がかつてなく高い時代だと思います。新人にとっては、まるで見知らぬ国に来たくらいの感覚に近いと思います。そこをアジャストしていく大変さは、理解して接する方がよいと思います。

「ホームステイを受け入れる感覚で」

――先輩・管理職世代は、どんな心構えが必要でしょうか。

桑原 「外国からホームステイを受け入れる感覚で」と研修や講演では話しています。それくらいの違いがあるからです。全く違った国で育ってきた人であれば、考えに違いがあるのは当たり前だと思えますし、どうやったらこちらの考えを理解してもらえるか、うまくこちらの組織に適応してもらえるかを色々考えると思います。例えばお箸(はし)が使えない場合は「フォークを使ってもいいよ」と言うこともあれば、使えるようになったら「すごい!」と言いますよね。

新入社員世代に何をしたいか聞くと、「人の役に立ちたい」と答える人が多い。先輩世代からみたら「それはまだ早い、まずはこっちの仕事をやって」と思ってしまうかもしれませんが、人類全体という大きな視点でとらえたらとてもいいことですよね。

――どちらに合わせるのがいいのでしょう。今の職場のやり方に合わせてもらうのか、新人のやり方に合わせるのか。

桑原 答えはありませんが、お互い「学び合う関係」になれるとよいと思います。仕事ですから「我々はこういう人。こんな会社で、目的はこれで、こんなルールがある」と教えるべきことはありますし、身につけてもらわなければいけないこともあります。

一方で、新入社員世代に学べることもあります。

彼らは小さな頃からVUCAの時代を生きていますから、その世界でどうしたら幸せになれるか、上手くやれるかを身につけている可能性があります。例えば先の調査結果の「厳しさや競争よりも、一人ひとりの個性を尊重しながら、お互いに助け合う職場がよい」は、一見甘いように感じるかもしれません。しかし正解がないVUCAの環境においては、こういう職場の方が、今までにない意見や発想が生まれやすく、個々の取り組みや学びのシェアで知恵や工夫も生まれるなどメリットが大きいです。

新人の発言の中には、「今までやってきたこの慣習は古いのかな、今これからもそれをやり続ける意味があるのだろうか」と問いかけてくれる、組織をよりよくする貴重なメッセージが含まれている可能性があるのです。言葉はつたなくても、その裏にある思いは素直で、本質的なものを捉えていると感じることが私もよくあります。

桑原正義さん

桑原正義さん

――具体的には、どのような対応をとれるとよいでしょうか。

桑原 まず、相手の意見や価値観を否定しないことが大切です。そして、目の前にいる彼らのことをよく知ってください。違和感があっても、そこに好奇心を持って「それはどういうこと? もう少し聞かせて」と、彼らの根っこにある価値観ややりたいことを聴きましょう。そして、今の仕事が、そこにどうつながっていくかを一緒に考えることです。先輩や上司は答えを用意しがちですが、そうではなくて、フラットに問いかけてみてください。自分で納得し、意味があることだと感じると、ものすごい力を発揮します。そんな新人たちから学ぶことも多いはずです。

取材・&M編集部

(TOP写真は Getty Images eternalcreative)

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