マッキー牧元 うまいはエロい

<77>西日本を代表するいなりずし 「いづう」&「いづ重」の圧倒的なうまさ

いなりずし東西比較。今回は西を代表するいなりずし店を2軒紹介しよう。

<<東京のいなりずし編はこちら>>

尾張名古屋で生まれ、江戸で広まったとされるいなりずしだが、関西圏の方も大好物である。ことに京都の人は、お揚げが大好きなようである。

炊いた野菜料理に使ったり、きざみきつねうどんや揚げカレーうどんや丼、衣笠丼に用いられたりするなど、関東の人間より、よくよくお揚げを愛している様子がある。

入江敦彦『京都人だけが食べている』(WAVE出版)には、「京都の人は、日本で一番と言えるほど、牛肉好きだが、同時に日本一の油揚げ好きでもある」と、書かれている。これはやはり、京都のいなりずしを上げなくてはいけない。

いづう」と「いづ重」という同じ系列ながら、二つの異なるいなりずし店を紹介しよう。

京都人のいなり愛が詰まったいなりずし

「いづう」は、ご存じ「鯖姿寿司」の名店で、創業、天明元年(1781)から愛される老舗である。「いづ重」は、「いづう」で修業を積んだ初代が、明治末期に開店させた、こちらも老舗となる。

八坂神社の正面にあるいづ重には、「昔ながらの」と説明書きがついた通常のものと、焼き九条ネギを混ぜ込んだ「大人のいなり寿司」の2種類がある。

東京のいなりずしの多くは俵形だが、こちらのいなりずしは関西に多く見られる三角形である。この三角形は、一説によると、キツネの耳に似せたともいう。

少し武骨で、かめば、厚めの皮からジュワッと甘い汁が広がって、笑顔を呼ぶ。

ご飯には麻の実が混ぜ込んであり、それが時折カリッガリッと弾けて、楽しい。そして食べ終わる頃に、ユズの香りが広がっていく。よくよく味わえば、ごぼうの風味もある。お揚げが、ふんわりとかぶさっているような包み方もよく、素朴さの中に京都人のいなり愛が詰まった風情があるいなりずしである。

和風のパッケージに包まれた「いづ重」のいなりずし

和風のパッケージに包まれた「いづ重」のいなりずし

ほのかにユズ、ごまが香り、時折麻の実がガリッと弾ける。お揚げは砂糖を使っているが甘さはまあまあで、しっとりした食感

ほのかにユズ、ごまが香り、時折麻の実がガリッと弾ける。お揚げは砂糖を使っているが甘さはまあまあで、しっとりした食感

“王子”が認めた「ベストいなりずし」

一方「いづう」はどうだろう。こちらは、『口福を呼ぶ俺の!いなり寿司』(徳間書店)を出されたいなり王子から教わった。なにしろ彼が、全国100店以上のいなりずしを食べている中で、ベストだと言うではないか。ただし祇園の本店では売っていない。大丸京都店地下にある「いづう」だけで売っている特別メニューなのだ。

見れば可愛らしく、京都では珍しい俵形を三つ葉で結びあげている。お揚げは、「熊本名産の南関揚げ」を使っているという。何と言っても油揚げに含ませただしがうまい。食べるたびに、しみじみとうまいなあと思う。

皮は薄く、ご飯と揚げの一体感があってエレガントである。食べればどこからかユズ香が漂って、ゴマの香りとだしの香りが追いかける。

甘みはあるが感じさせず、酸味の効かせ方が絶妙で、1個食べると味が切れて、つい何個でも食べてしまういなりずしである。

京都の人に聞いてもこの2軒は圧倒的で、人気は二分するようだが、「いづ重」派が多いようである。やはり実質を重んじる京都人らしい。さあ、あなたは、どちらがお好きだろうか。

「いづう」のいなりずし。京都大丸店のみ扱う特別メニューだ

「いづう」のいなりずし。京都大丸店のみ扱う特別メニューだ

まずは酢の柔らかなうまみとコクを感じ、その後に薄く薄く切ったカブのシャキっとした食感と、品の良いユズの香りが広がる

まずは酢の柔らかなうまみとコクを感じ、その後に薄く薄く切ったカブのシャキっとした食感と、品の良いユズの香りが広がる

店舗情報

いづ重

京都府京都市東山区祇園町北側292-1
京阪本線「祇園四条」駅より徒歩7分、京都市営地下鉄東西線「東山」駅より徒歩8分、「三条京阪」駅より徒歩9分
075-561-0019
10:30~19:00
定休日:水曜
公式サイト:gion-izuju.com/

 

いづう

京都市東山区八坂新地清本町367
京阪本線「祇園四条」駅より徒歩4分、阪急京都本線「河原町」駅より徒歩6分、京都市営地下鉄東西線「三条京阪」駅より徒歩7分 
075-561-0751
11:00~22:00(日・祝は21:00まで)
定休日:火曜(祝日、祭事等の際は営業)
公式サイト:izuu.jp/

PROFILE

マッキー牧元

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

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