インタビュー

AIを使って表現を更新する写真家・青木柊野がたどり着いた光景

神保町にあるオフィスビル「神田テラススクエア」の1階ラウンジに不思議な写真が飾られている。遠くから見ると、抽象的なグラフィックイメージのように思える。近づいて見ても、人物、あるいは場所を特定できない。展示タイトルは『autonomy』。複数の写真を素材に、AIによる画像生成技術で新たな「写真」を抽出し、作品に仕上げていく。しかし、これは「画像」ではなく「写真」といえるのだろうか。本展示を通じて、作者は何を問いかけようとしているのか。20歳の写真家・青木柊野に話を聞いてみた。

青木

青木は、アンダーカバー(UNDERCOVER)のメインビジュアルなどを手がける気鋭の写真家。彼が写真の世界を志したのは16歳の時にさかのぼる。

青木

「写真家のMike Brodie(マイク・ブロディ)という人がいて、彼の『A Period of Juvenile Prosperity』に触れたのがきっかけ。貨物列車に飛び乗って移動する“トレインホッピング”をドキュメントしたブロディの写真集を見て、面食らいました。それからどうすれば彼のように“写真家”として生きていけるんだろうかと、真剣に考えるようになりました」

AIを使って表現を更新する写真家・青木柊野がたどり着いた光景

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青木は、17歳で同年代のデザイナー「ホシカリク」と共作した写真集のZINE『shell』を発売。中目黒のギャラリーで展示を行うなど、精力的にアウトプットを続けてきた。高校卒業後、写真家を志し、東京工芸大学の写真学科へ入学するもすぐに中退。自分自身で道を切り開くことを決める。やがて、写真家・山谷祐介さんに師事したことをきっかけに、大きなクライアントの仕事も手がけるようになった。

青木

「20歳にして写真だけでご飯が食べられるようになって、『写真とは一体なんだろう』という問いを抱えるようになりました。自分の写真を再定義する必要があったんだと思います。SNS上に写真が氾濫(はんらん)し消費される時代だからこそ、僕が写真を通して伝えたいことをAIで“濾過(ろか)”したら面白いと思ったのが、アイデアの始まり。AIの技術を取り入れた写真を作品として表現した作家は、恐らく僕が初でしょう。この技術を使えば、作家のオリジナリティーを作品に宿せると気づきました」

展示は今年に入ってから撮影したもので構成。静物やランドスケープ、ポートレートを10〜100枚選択し、AIで“濾過”させた膨大なイメージ群から青木が選択した13点を展示している。「autonomy」というタイトルは、“自動的に作られる”ことから付けられている。

青木

神田テラススクエアには、13枚の写真が展示されている。AIで生成された1000以上の膨大なイメージを、ほとんど迷うことなく、瞬時にセレクトしたという。

「作品を見て、『これは写真ではなくて、画像でしょ』と言う人もいれば『これは写真だよ』という人もいると思う。いずれにしても解釈は鑑賞者に委ねられていると、最近になって明確に理解できるようになりました。

そもそもの写真は、フィルムで撮って印画紙に写すものが写真、デジタルで撮られたものは写真ではないと定義する場合もある。けれど、鑑賞者にしてみれば、スマートフォンで誰もが撮影できる時代に機材が何かなんて、大した問題ではないんです」

青木

しきりに“鑑賞者”という言葉を使いながら、写真の現在に思考を巡らせる青木。場所や人が不明瞭な写真をあえてセレクトしたのにも理由がある。

「今作のような、誰だか分からない写真を見た時、僕たちは自分の好みの顔に当てはめることが、脳科学の研究で証明されています。今回の作品を見た鑑賞者が『誰か』を想像した瞬間に、初めて僕自身とその人がつながれるのではないかと思います」。青木は、今回展示した作品で確立した手法は、腰を据えて取り組むべきだと感じている。

青木

「6月に表参道の『CLASS』でも同名の展示を行います。写真は平面だけで収まるアートではない。言語や映像を駆使すれば、まったく新しい作品にもなり得ると確信しています。生成プロセスの映像も合わせて公開することで、作品を“体験”させることができないか。それを模索している最中です」

青木

「最終的には『autonomy』のプロジェクトを写真集にして完成させる。この段階で僕のことを見つけてくれた人たちにはプロセスを面白がってもらいたいし、数年後に僕を発見した鑑賞者にも、20歳で実践した作品群を通じて『写真』の価値観を更新できたらいいなと思っています。その第一歩ですね」

AIを使って自身の思想を具現化するプロセスを通じて、青木は写真の可能性を静かに更新しようとしているのかもしれない。

(文/冨手公嘉、写真/宇都木千里)

<会期情報>
テラススクエアフォトエキシビション #12 – autonomy - 青木柊野
時間:8:00~20:00
休館:土曜・日曜・祝日
住所:千代田区神田錦町3-22 テラススクエア 1F エントランスロビー
会期:2018年2月19日(火)〜5月17日(金)
入場無料

https://ensemble-magazine.com/2019/02/16/syuyaaoki1/

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