LONG LIFE DESIGN

ロングライフデザインの10か条(前編) ナガオカケンメイ「定価には意味がある」

長く続くものには、未来のものと向き合うヒントがあります。右は長崎県波佐見焼の白山陶器「G型しょうゆさし」。月産数を計画的につくることで、ロングセラーに。ヒットしても、生産数を極端に増やさなかったから、続いている

長く続くものには、未来のものと向き合うヒントがあります。右は長崎県の波佐見焼の白山陶器「G型しょうゆさし」。月産数を計画的につくることで、ロングセラーに。ヒットしても、生産数を極端に増やさなかったから、続いている(写真はすべてナガオカケンメイさん提供)

デザイン活動家でD&DEPARTMENT代表・ナガオカケンメイさんのコラムです。ナガオカさんが最近、心を動かされた場所や人、モノの写真もお楽しみに。

   ◇

今回は「ロングライフデザイン」をテーマに活動する僕ら「D&DEPARTMENT PROJECT」が店として販売商品を選ぶルールを書いてみたいと思います。

まず、僕ら「D&DEPARTMENT PROJECT」は、国内9店舗(北海道・埼玉・東京・富山・山梨・静岡・京都・鹿児島・沖縄)、海外に2店舗(韓国ソウル・中国黄山)で活動のパートナーと共に「その土地のロングライフデザイン」をそれぞれ紹介しています。各店舗では製造されて30年ほど経っているロングライフデザインなものを中心に販売、紹介、勉強会などをしています。

他の生活雑貨店と大きく違うのは、「新しいもの」「話題のもの」「売れるもの」として商品を選んでいない点です。「世界」「日本」「その土地」という三つのロングライフデザインをバランスをとりながら、店頭に並べ、広くこの「長くつづいているもの」を知ってもらうことをしています。

これからますます注目される働き方を実践している工芸デザイナーの大治将典さん。企業との契約や、仕事の量など、あくまで作り手と暮らすように仕事をしている。長く続くために、考えた働き方がある

これからますます注目される働き方を実践している工芸デザイナーの大治将典さん。企業との契約や、仕事の量など、あくまで作り手と暮らすように仕事をしている。長く続くために、考えた働き方がある

生活雑貨店のバイヤーは、毎年開催される見本市などで新商品を見つけ、トレンドの力を借りながら店頭に並べます。私たち生活者はそうした雑誌やテレビの情報を見て、「かわいい」「欲しい」と思うわけです。

しかし、僕らが紹介しているロングライフデザインな商品は、ずっと昔からあったもの。きらびやかな流行のスポットライトすら浴びず、話題にもならずにじっと、しっかり、意識の高い生活者に支えられてきたもの。そして、価格がしっかり守られ、ディスカウントストアなどで値引き販売などの値崩れを起こしていないものを売っています。つまり、「売って儲(もう)ける」ということよりも「生活者と一緒に支える」「応援する」というようなことが重要になります。

長く存在するものには必ず「理由」があります。そして、値崩れしないように、「どこでしっかり販売し続けてもらえるか」を、メーカー側もちゃんと考えています。手広く売り上げを伸ばすというよりも、しっかり長く売り続けたいのです。

さて、ここまで書いたことを僕らは10か条にまとめ、商品を選ぶ基準としてきました。それをご紹介します。

東京の下町にある、70年近く続くバー。看板もないし、知り合いしか来ない。不特定多数のお客さまを相手に利益をだすより、常に気に留めてくれる常連さんを大切にしていることで、長く続く。写真のオリジナルカクテルで分かってしまいそうですが……

東京の下町にある、70年近く続くバー。看板もないし、知り合いしか来ない。不特定多数のお客さまを相手に利益をだすより、常に気に留めてくれる常連さんを大切にしていることで、長く続く。写真のオリジナルカクテルで分かってしまいそうですが……

三重県萬古焼(ばんこやき)を伝えるために、私財を投げ打って作ったバンコアーカイブミュージアムにて。内田鋼一ご夫妻(左)。自分の産地を応援することが、結局、自分の創作を続けられるという、素晴らしい活動

三重県萬古焼(ばんこやき)を伝えるために、私財をなげうって作ったバンコアーカイブミュージアムにて。内田鋼一ご夫妻(左)。自分の産地を応援することが、結局、自分の創作を続けられるという、素晴らしい活動

1.  修理をして使い続けられる

つまり、壊れたらどうなるのか、ということです。長く使えるものは、そこがしっかりと考えられています。パーツごとに修理、交換ができること。ちょっと考えてみてください。パーツをいつでも交換できるということは、パーツを常に倉庫に持っておくというメーカーの姿勢がある、ということです。古いビンテージと呼ばれる車は、要するに「パーツがある」ということです。多くのメーカーは作って、売り切って、モデルチェンジして、売り切って、を繰り返します。パーツもある期間しか保管していません。なので、すぐに「新商品に買い替えた方が、お得ですよ」と促されてしまいます。

広島市の八丁堀にある映画館「八丁座」で使用されている、同じく広島県を代表する木工家具会社「マルニ木工」の椅子。両社は協力をし合って、県民に映画を楽しむ場所を提供している

広島市の八丁堀にある映画館「八丁座」で使用されている、同じく広島県を代表する木工家具会社「マルニ木工」の椅子。両社は協力をし合って、県民に映画を楽しむ場所を提供している

また、修理をして使い続けるということは、自分色にどんどんなっていく。使うあなたの時間軸に沿って、色褪(あ)せたり、経年変化するという一緒に成長する楽しさを味わえるということです。京都の老舗帆布鞄ブランドの一澤信三郎帆布では、常に修理を受け付けています。そして、味わい深い傷などは、あえて残し、今後しばらくしっかり使い続けられる修理をしながら、思い出も残るような修理を意識されていました。

2. 価格が適正である

「オープン価格」(編集部注:小売店などが自由に値段をつけて売ること)が1990年代前半ごろから一般化する前には、「メーカー希望価格」という値崩れを防ぐメーカー側の考えた価格がしっかりとありました。ざっくりと言ってしまうと、作る側に売る際の意識がありました。やがてメーカーから販売が切り離されていき、売る側に力が移っていきました。そして、私たち生活者はメーカーの意思としての「価格」から、「なるべく安く買いたい」という欲求が一般化します。本当はいろんなものづくりの思いの終着点として「価格」にそれは込められてきました。

ロングライフデザインな商品は、ほとんどこうした量販店、ディスカウント店などでは販売されていません。メーカーに「価格を自由にしてもいいから、どんどん売って欲しい」という意思よりも「しっかり長く、ものづくりを伝えて欲しい」という気持ちの方が強く、つまり、価格に込めた思いを「定価」で販売してもらうことで、続けられるという考えがあるのです。僕は思います。もちろん、欲しいロングライフデザイン商品があったとしたら、少しでも安い方が個人的にもいいです。しかし、メーカーや世の中のことを考えたら、そうして値崩れしていくことは、いい状況を生みません。

つまり「定価」には意味があり、それを販売店とともに生活者が理解、支持することで、実直なものづくりが継続するのです。「安いところではなるべく買わない」というのは、相当な勇気がいります。しかし、値段を下げるということが何を意味しているのか、考えたいところです。

なるべく作っているところの近くで定価で買う。それが「長くつづく」を実は作り出しています。

三重県四日市市の老舗餃子(ギョーザ)店。独自のルールで一見(いちげん)さんを一瞬、戸惑わせるが、長く続く店の楽しみは実はそこにもある。ルールを解読した時、店への愛着が一瞬で増す。店名は、長く続いて欲しいのでご勘弁を

三重県四日市市の老舗餃子(ギョーザ)店。独自のルールで一見(いちげん)さんを一瞬、戸惑わせるが、長く続く店の楽しみは実はそこにもある。ルールを解読した時、店への愛着が一瞬で増す。店名は、長く続いて欲しいのでご勘弁を

ロングライフデザインの10か条(前編) ナガオカケンメイ「定価には意味がある」

3. 意思がある売り場で買う。意思がある売り場との関係がある

上記した「価格」のことと絡んできますが、生活者は「どこで買うのが正解か」をもっと考える必要があります。安い店でみんなが買えば、売り場がそうした意識を持ち、作るメーカーに大きな負担を要求し始めます。当然、働く人の賃金にもダイレクトに影響します。

いい売り場は、ただ物を並べているだけでなく、メーカーのものづくりを代弁できます。ちなみに、僕らの店「D&DEPARTMENT PROJECT」の名前は昔の百貨店の姿勢に敬意を持っているからです。百貨店は都会から離れた場所で真面目にしっかり作られたものを、人口の多い都市でちゃんと作り手に代わり伝えて紹介してきました。デザイン性の高いものも、そうしてしっかりと思いを代弁してあげれば、みんなが幸せになる。そうした「意識のある売り場」はどうしても重要だという思いから、DESIGN(デザイン)のDEPARTMENT STORE(百貨店)を、作ろう(PROJECT)としました。

D&DEPARTMENT北海道店スタッフ。北海道のものづくりの思いを、しっかりお客様に伝えようと、意識している。ぜひ、全国各店へ!

D&DEPARTMENT北海道店スタッフ。北海道のものづくりの思いを、しっかりお客様に伝えようと、意識している。ぜひ、全国各店へ!

1926年(大正15年)に柳宗悦、河井寛次郎、濱田庄司らによって生まれた生活文化活動「民藝運動」は、「その土地の原材料で作られた素朴な生活雑器に美を見いだす」ことをしました。そこでも売り場としての「民芸店」がそうした作り手の創作を応援していました。例えば、支持している陶芸家の作品は、窯開きする前から、すべてを買い取ったりしていました。

つまり、焼き上がりがどうであれ、買い取って応援し、創作を続けさせてあげる。その代わり、その作家はその民芸店でしか販売しないという、信頼関係で続いていく。

web storeで便利に時間の制約を受けることなくものを安く手にいれられる今という時代だからこそ、正しい「ものづくり」は「売り方」(売り場)次第でもあるということも、知ってほしいです。

6月発売のロングライフデザイン誌「d news」の中に作ったシリーズページ。緩やかに継続的に、新しい感覚で伝える。ものは昔からあるロングセラーなので、使うシーンを常に若返らせることが必要

6月発売のロングライフデザイン誌「d news」の中に作ったシリーズページ。緩やかに継続的に、新しい感覚で伝える。ものは昔からあるロングセラーなので、使うシーンを常に若返らせることが必要

4. メーカーに愛がある

僕らの店では「作っている現場」を見せてもらえないものは、極力販売しません。これはもちろん一つのたとえです。それとは「メーカーがショップや使い手(生活者)に関心があるか」ということです。一見、当たり前のように思うかもしれませんが、ヒットした商品をコピーしたり、トレンドをマーケティング(調査・分析)して、短期間に労働者の人件費の安い国で大量に作り、売るということの方が多い時代。メーカーは効率良い「製造と売り上げ」にだけ集中し、例えば、作っているものが「生活道具」なのに、「生活」とそれを購入して使う「生活者」とのコミュニケーションをとらない、関心のないメーカーは多いのです。

メーカーに愛があるか。それはすぐにわかります。先ほど書いたように「生活」に関心があり「生活者」に関心があるかどうかを見ればすぐに分かり、感じられます。そこに時間を割いてくれる。生活者との交流の時間を自ら考え、企画したりしている。そういうメーカーには多くのファンがいます。叱咤(しった)激励もちゃんと受け止める。その「メーカーのものづくりへの愛」に注目して、メーカーを応援したいと思える関係性こそ、結果、上質な生活者が多く暮らす豊かな国ということになるのではないかなと、思うところです。

中国でいま大人気の岐阜県の陶芸作家の安藤雅信さん。東京の小さな企画展でご本人が店番をする様子。思いは結局、自身でしか伝えられないということを、大切にしている

中国でいま大人気の岐阜県の陶芸作家の安藤雅信さん。東京の小さな企画展でご本人が店番をする様子。思いは結局、自身でしか伝えられないということを、大切にしている

最近、メーカーはクレームに怯(おび)えてこの大切なコミュニケーションをそつなく、問題が起こらないように、回避はしませんがシステム化しています。ちょっと乱暴に言うと、生活者の私たちが、メーカーの冒険心を削いでしまっているところがあります。メーカーに冒険心があった1960年を中心にする戦後のものづくりが元気だった時代には、本当に夢のある製品がたくさん生まれていました。ユニークな自動車や家電もたくさん。そんな時代がもう一度、来たらいいなぁと思います。

渋谷ヒカリエ8階にある僕の店「d47食堂」の接客。食材をつくる農家などの思いをリアルタイムで伝える。週末は混みますが、ぜひ!

渋谷ヒカリエ8階にある僕の店「d47食堂」の接客。食材をつくる農家などの思いをリアルタイムで伝える。週末は混みますが、ぜひ!

5. 使いやすいこと 最新機能を売りにしていないこと

私たちは「最新」という言葉に弱いです。僕ももちろん。多くの製品は「使いやすさ」を「最新機能」として語り、販売しています。それらの多くは実は購入後、ほとんどの機能は使いこなすこともなく、ただ「最新型を買った」という意識だけがあり、半年も経たないうちに現れる次なる「最新型」の存在によって、自分の買い物が「旧式」である負い目のようなものにとらわれ始めたりします。要は「自分らしく使いやすい」ということが重要で、そこを見抜いて、快適に使うことこそ、豊かな買い物と言えそうです。

今や「使いやすさ」も多様性の時代。人の使いやすさは、自分の使いやすさと違ったりしますが、ポイントはやはり「最新」と「使いやすさ」をごちゃ混ぜに見ないということじゃないかと思うのです。

「使いやすさ」とは実はとても本質的でシンプル。ロングライフデザインなもののそれとは、いつの時代にも通用する機能だと思います。

ざっくりと言うと「最新機能を売りにしたもの」は買わない。それよりもロングライフデザイン性のある高性能、単機能に「使いやすさ」を見極めるといいのではと思うのです。ハイテクに頼るものは、アッと言う間に次なる魅惑的なハイテク機能をまとって現れます。それよりも道具としての使い勝手の本質があるものを選ぶ。そこにある用の美は、最新を意識しなくても済む、どっしりと腰を据えた生活の景色にもなるのではないでしょうか。

倉敷段通の座敷。生活工芸を教える学校の生徒によるもの。量産品ではないものは、ロングライフデザインを感じやすい。人の想(おも)い、気配があるもので、暮らしたいですね

倉敷段通の座敷。生活工芸を教える学校の生徒によるもの。量産品ではないものは、ロングライフデザインを感じやすい。人の想(おも)い、気配があるもので、暮らしたいですね

さてさて、今回は「ロングライフデザイン」の10か条の前半を書いてみました。後半は「安全」「計画生産」「使い手」「環境」「デザイン」で、次回すべてを紹介してみます。そしてそして、なんと、10か条を意識していった結果、現れ集約されていった「4か条」をその次の回でご紹介します。お楽しみに!!

PROFILE

ナガオカケンメイ

デザイン活動家・D&DEPARTMENTディレクター
その土地に長く続くもの、ことを紹介するストア「D&DEPARTMENT」(北海道・埼玉・東京・富山・山梨・静岡・京都・鹿児島・沖縄・韓国ソウル・中国黄山)、常に47都道府県をテーマとする日本初の日本物産MUSEUM「d47MUSEUM」(渋谷ヒカリエ8F)、その土地らしさを持つ場所だけを2ヶ月住んで取材していく文化観光誌「d design travel」など、すでに世の中に生まれ、長く愛されているものを「デザイン」と位置づけていく活動をしています。’13年毎日デザイン賞受賞。毎週火曜夜にはメールマガジン「ナガオカケンメイのメール」www.nagaokakenmei.comを配信中。

流行に背を向け、時代はしっかり見る。ナガオカケンメイの思考

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