小川フミオのモーターカー

ファンを徹底的に楽しませたこだわりの数々 ホンダS2000

ホンダというのはじつに多角的なブランドだ。日本では軽自動車の販売で強い一方、米国ではSUVが好調だ。そして、もうひとつ得意としているのはスポーツカーである。1999年2月に発売した「S2000」はホンダらしさが凝縮したようなモデルだった。

(TOP画像は1998年発表のプロトタイプ)

全長4135mmとコンパクトなボディで車重は1.2トンと軽量だ。フロントエンジンで後輪駆動、それにターボでない自然吸気のDOHCエンジンと6段マニュアル変速機を持っていた。しかもソフトトップのフルオープン2シーター。伝統的なスポーツカーの王道をいく組み合わせと言える。それを磨きあげていったのがホンダ開発陣のこだわりである。

ホンダS2000

2000年に発売されたハードトップ仕様

ホンダS2000

重心を低くできるうえ、音を逃がしてくれるソフトトップはじつはスポーツカー向き

前後50対50の重量配分や、効果的に補強を入れた高剛性の「ハイXボーンフレーム」を使ったボディーで走りの基本性能は高かった。加えて、6秒という驚異的な速度で開閉可能な電動ソフトトップや、ボタン式のエンジンスターターなど、細部にも凝っていた。

ホンダS2000

シンプルなコクピットに、パーフォレーテッドレザーを使ったステアリングホイールと、スポーティな仕上げ

凝っていたといえば、最大のこだわりはエンジンだろう。このクルマのために開発された2リッターエンジンは、8300rpmで250馬力の最高出力を得られるという“超”がつくほどの高回転型(最大回転数は9000rpm)で、準レーシングカーのようなキャラクターだった。

ホンダS2000エンジン

専用に開発された2Lエンジンはパワフルで、さらにCO、HC、NOxすべてで「平成12年排出ガス規制値」を50%以上下回っていた低公害性も特徴

ローラー同軸VTECロッカーアーム、アルミ鍛造ピストン、薄肉ピストンリングなど、エンジンの各部品にも並々ならぬ注意が払われている。レーシングエンジンを組み立てているオーストリアの会社に開発を委託したといわれていた。

当時、九州石油が扱っていたハイオクガソリンが、この車には最適とされていたことを筆者は記憶している。市販では最もオクタン価が高いため、S2000のデリケートなエンジンに向いているというのが理由だ。真相はどうだったのだろう? こうした“伝説”を残すのもアイコニックなクルマゆえである。

初期モデルは足まわりの設定も硬く、腕に自信のあるひとでなければ怖い思いをすることもあった。マイナーチェンジで少しソフトになり、後にトラクションコントロールも設定され、万人向けのスポーツカーになったが、最初はちょっとやり過ぎるというのも、ホンダらしいといえるではないか。

ファンを徹底的に楽しませたこだわりの数々 ホンダS2000

低いボンネットによるウェッジシェイプが印象的

2000年にはステアリングギア可変式の「タイプV」が追加され、2005年にはエンジン排気量が2.2リッターへと上がった。同時に足まわりが強化された「タイプS」も設定された。2009年に生産を終了するまで、ファンを徹底的に楽しませてくれたスポーツカーだ。

(写真=ホンダ提供)

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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