口福のランチ

懐かしさだけではない、進化する和風パスタ「壁の穴」(東京・渋谷)

変わりゆく渋谷において、昭和の時代から営業し続ける「壁の穴」は、和風パスタの代表格、たらこパスタの発祥の地だという。創業当時、パスタといえば、あらかじめゆでておいた麺を、ケチャップで炒めるナポリタンが主流。ゆでたてのパスタを提供するスタイルも斬新だった。

渋谷道玄坂小路本店を訪れると、現在も人気は衰え知らず。平日は午前11時30分から午後11時のクローズまで客足が途切れることはない。看板メニューのたらこパスタを筆頭に、イカやイクラを使った和風パスタから、ボロネーゼやカルボナーラなどの洋風パスタまで、数えきれないほどのメニューがあり、920円から食べられる。

“おすすめメニュー”という文字が目にとまり、今回は「たらこ・しらす・しそ(1320円)」をオーダー。タラコの塩気と粒々感、シラスの甘みとしっとり感が絶妙な組み合わせ。たっぷりのシソもいい具合だ。

今が旬のシラスと緑鮮やかなシソがたっぷりのった「たらこ・しらす・しそ」

今が旬のシラスと緑鮮やかなシソがたっぷりのった「たらこ・しらす・しそ」

もうひとつ、「たらこ・いくら・おろし(1650円)」も絶品。2種類の魚卵をしょうゆ味の大根おろしがさっぱりとさせ、最後まで飽きることはない。ベースが同じタラコでも、組み合わせる素材によってこんなに違うのかと驚かされる。

タラコが絡んだクリーミーな麺と粒々のイクラが好対照の「たらこ・いくら・おろし」

タラコが絡んだクリーミーな麺と粒々のイクラが好対照の「たらこ・いくら・おろし」

かつては乾麺を使っていたが、現在は生麺に変更され、さらにパワーアップ。乾麺のアルデンテの食感とは異なる、もちもち感が何ともいえない。通常は加水率が50%のところ、30%にまで減らしたオリジナルの生パスタは、そうそうたるラーメン店の麺を数多く手掛ける浅草の超有名製麺所「浅草開化楼」に特注したもの。もちもちとして心地よい弾力には、中華麺に近いニュアンスがあり、具やソースの味わいを邪魔することなくよく絡む。乾麺の方が相性のよい、いくつかのソースを除いて、現在はほとんどがこの生麺を使用している。

独特の弾力があるやや太めの生麺が和風ソースとよく絡む

独特の弾力があるやや太めの生麺が和風ソースとよく絡む

総料理長として各店を取り仕切るのは、壁の穴での勤務歴が25年以上の柳田慎一さん。麺にとどまらず素材に対するこだわりも半端ない。タラコは名産地・北海道の虎杖浜から、アサリは熊本から、いずれも鮮度抜群のものを冷凍せずに生のまま仕入れる。ソースには化学調味料を一切使用しないため、素材の味が命。特に魚介類は鮮度によって味わいがまるで違う。うまみが逃げ出すことなくぎゅっと凝縮する。現在のおすすめメニューの淡路産の天然釜揚げシラスもかなりの上物だ。

昭和、平成そして令和と営業を続ける老舗で、おいしさと懐かしさが同居する和風パスタをぜひご堪能あれ。

道玄坂と文化村通りをつなぐ細い路地に面している

道玄坂と文化村通りをつなぐ細い路地に面している

壁の穴(渋谷道玄坂小路本店)
東京都渋谷区道玄坂2-25-17 カスミビル 1F
03-3770-8305
http://www.kabenoana.com/

PROFILE

森野真代

ライター&エディター。徳島県出身。外資系ジュエリーブランドのPRを10年以上経験した後にフリーエディターに。雑誌やWebを中心に、旅、食、ファッションなどをテーマに執筆中。無類の食べもの好きでもあり、おいしい店を探し当てる超(?)能力に恵まれている。自分の納得した店だけを紹介すべく、「実食主義」を貫く。酒好きが高じて「唎酒師(ききさけし)」を取得したが、おいしいワインの探索にも余念がない。

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