原田泰造×コトブキツカサの「深掘り映画トーク」

強盗を実行した学生たちの葛藤や“カッコ悪さ”を描く実話『アメリカン・アニマルズ』

映画好きのお二人、ネプチューンの原田泰造さんとコトブキツカサさんが、最近観た作品について語る対談企画。今回のテーマは、5月17日公開の『アメリカン・アニマルズ』について。前回の『運び屋』に続き、実話を映画化した作品です。

<ストーリー>

アメリカ・ケンタッキー州で退屈な大学生活を送るウォーレンとスペンサーは、自分が周りの人間と同じ“普通の大人”になりかけていると感じていた。ある日、二人は大学図書館に時価1200万ドルを超える画集が保管されていることを知る。「その本が手に入れば、莫大な金で俺たちの人生は最高になる」、そう確信したウォーレンとスペンサーは、大学の友人を巻き込み、『オーシャンズ11』『スナッチ』などの犯罪映画を参考に強盗計画を立て……。

2004年に実際に起きた事件を元に、事件を起こした本人たちも出演するという映画史上類をみない手法で描かれたハイブリッド・クライム・エンターテインメント。

 

コトブキ この作品は気になってたんですよ。実際にあった強盗事件の映画化ということで、チラシには「最高! こいつら『レザボア・ドッグス』!」(ローリング・ストーンズ)とか、「『オーシャンズ11』のような実話」(バニティ・フェア)とか、有名雑誌のコメントが書かれている。こういうジャンルの映画が好きな僕にはたまらないわけですよ。それに、宣伝ビジュアルは完全に『トレインスポッティング』を意識してますからね。

原田 でも、実際に作品を観るとイメージが違ってくるよね。すごくドキュメンタリータッチだし、若者たちが犯罪に向かっていってしまう雰囲気をすごくリアルに描いている。

コトブキ  この監督はドキュメンタリー系の監督で、これが初の劇映画になるんですよね。今作が特徴的なのは、映画はフィクションで、役者さんがドラマを演じているんですけど、実際に事件を起こした本人たちも出てくるところです。

原田 しかも、役者さんと本人が同じシーンで出てくる。劇中で、ある人物が、ある場所へ本当に行ったのかわからないという場面があって、それぞれの証言に基づいて何パターンか見せるという演出があるんだけど、その意見の食い違いを役者と本人を共演させることで表現しているんだよね。

コトブキ フィクションとドキュメンタリーをまたいでいるというか、再現ドラマの世界での“第4の壁”を超えたような感覚ですよね。

原田泰造さんとコトブキツカサさん

原田 なにが真実なのかは、観客に判断させようっていうことなんだろうね。でも、あのシーンを観て思ったのは、罪を犯した本人の方が役者っぽい雰囲気が出てるんだよ。それに役者側から考えると、どんな気持ちで共演したのかも気になる。

コトブキ 実話モノの「ご本人登場」は、映画のエンディングではよくあると思うんです。本人の写真や、現在の姿を見せたりする。『ハドソン川の奇跡』とか『アイ,トーニャ』、あと『グリーンブック』もそういう演出がありましたよね。

原田 『アイ,トーニャ』のご本人は迫力あったね。役者さんたちはすごくいい演技してるんだけど、やっぱり本人たちが出てきちゃうとのまれてしまう部分はある。

コトブキ リアルさという点では、本作では犯罪を実行するまでの学生たちの心理も丁寧に描写されていますね。

原田 俺がこのぐらいの年齢で、友達から「一緒に盗もうぜ」って誘われたら、もしかしたら……って思わされたよ。若い時って、毎日がいまいち面白くなくて、何かを変えたくてイライラしてるから、犯罪でもなんでもいいからデカいことをしたくなるっていうのは、なんとなく自分の中にもあったような気がする。

コトブキ 強盗計画が進んでいくんだけど、学生たちはそれぞれ、「まさか本当にはやらないよね」って思ってて、途中で誰かやめないかなと思いながらもズルズル行ってしまうという、あの感覚も分かりますよね。

原田 それと、実際にヤルっていう時の、あの無駄な高揚感もわかる。『レザボア・ドッグス』を観て、盛り上がっちゃってね。老人のメイクをしている時とかも滾(たぎ)っていたと思うよ。

コトブキ 『レザボア』からはすごい影響を受けてましたよね。「ミスター・ピンク」とかお互いをコードネームで呼び合ったりして。要はごっこ遊びなんですよ。

原田 それがリアルなんだと思うよ。考え込んだようで計画も雑だし、犯行時に起きるハプニングにもまったく対応できていない。

コトブキ 逃げるときの動線くらい、ちゃんと確認しとけよって話ですよね(笑)。

原田 カッコ悪いんだよね(笑)。でも、それが実際の犯罪なんだと思う。それに、盗んでからの後悔とか、どんどん追いつめられていく感覚の表現もうまかった。家に帰ってきたらお父さんの誕生日で、楽しそうなんだけど全然音が耳から入ってこない演出。あれ、すごくわかるんだよね。なにか気になることがあると、頭がいっぱいになってそれどころじゃないっていうね。

コトブキ あの苦い焦燥感ですよね。子供の頃に、よくそういう気持ちになったことを思い出しましたよ。家族にあんまり言えねぇな、みたいなことがあってメシも食えないでいるのに、夕食の時に「あれ、食欲ないじゃない?」なんて言われたり……。もうなんでもするから、この気持ち何とかしてくれよって。

原田 だから彼らも逮捕されてホッとしたんじゃないかなって思うよね。

 

強盗を実行した学生たちの葛藤や“カッコ悪さ”を描く実話『アメリカン・アニマルズ』

『アメリカン・アニマルズ』 監督:脚本 バート・レイトン 出演:エヴァン・ピーターズ、バリー・コーガン、ブレイク・ジェナー、ジャレッド・アブラハムソン

コトブキ ちょっとネタバレかもしれないですけど、実話の映画化だからで言っちゃいますね。ご本人たちは捕まって、刑務所に入って、出てきた状態なんですよね。その後は、それぞれ芸術家になったり、俳優を目指したりしてる。やっぱりなにかを表現したかったから、出てきた後もそういう道に進んだということなんでしょうね。まぁ、「なにかを表現したかった」というのは、犯罪の動機としては後付けだと思いますけどね。でも人生なんて、永遠の後付けだから。

原田 でもこれ、本人っていう以前に、刑を終えてはいるけど犯罪をした人じゃない? アメリカってすごいなと思うのが、実際に犯罪をした人を、その人が犯した罪を描いた映画に出しちゃうってことだよね。観た人に悪影響を与えてしまう可能性を指摘する声もあるだろうし。

コトブキ 実際に被害にあった方もいるわけですし、考えさせられますね。でも、この映画を観たら犯罪するのはやめようって思いますよ。大失敗してるし、教訓にもなりますよ。

原田 賛否両論あるけど、やっぱり監督がこの事件を映画にしたいというエネルギーがあって、それを表現するのは本人を出すしかないってことだったんだろうね。

コトブキ 監督がいつ「本人たちを出そう」って思ったかも気になります。この事件を知って、映画にするか、ドキュメンタリーにするのかもそうですけど、たぶん本人たちに取材をしていて、どっかのタイミングで出そうって思ったんでしょうね。

原田 取材してたら向こうから「なんなら俺、出ましょうか?」って売り込んできたかもしれないよね。

コトブキ それも含めて、若者の愚かさを描いてるのかもしれないですね。だからもう1度言っておきますけど、この作品は『レザボア〜』でも『オーシャンズ〜』でもないです。もっとリアルで、あの頃のモヤっとした想いや経験をチクチク突いてくる映画ですよ。

原田泰造さんとコトブキツカサさん

(文/大谷弦、写真/野呂美帆)

PROFILE

  • 原田泰造

    1970年、東京都出身。主な出演作に、WOWOW「パンドラⅣ AI戦争」(18)、映画「スマホを落としただけなのに」(18)、NHK「そろばん侍 風の市兵衛」(18)、映画「ミッドナイト・バス」(18)、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13-14)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)など。

  • コトブキツカサ

    1973年、静岡県出身。映画パーソナリティとしてTV、ラジオ、雑誌などで活躍中。年間映画鑑賞数は約500本。その豊富な知識を活かし日本工学院専門学校 放送・映画科非常勤講師を務める。

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