インタビュー

小林涼子「結婚はまだ先。今は芝居に集中したい」

映画『TAP -THE LAST SHOW』で監督デビューを果たした俳優の水谷豊さん。監督2作目となる『轢き逃げ 最高の最悪な日』では脚本も水谷さんが担当、ひき逃げ事件を舞台に人間の本性をあぶり出す濃密なドラマを描いている。この作品で、主人公の妻、白河早苗を演じているのが小林涼子さん。驚くほどの小顔とつぶらな瞳が印象的な小林さん。取材場所だったホテルの一室にある大きなベッドを前に「飛び込みたくなっちゃう」と少女のような笑顔を見せてくれた。小林さんに撮影時のエピソードや、30歳を目前にした今の思いをインタビューした。

ひき逃げ加害者の妻役。「台本を読んで、先が読めなかった」

物語は、結婚式の打ち合わせに車で向かう宗方秀一と同乗した友人の森田輝がひき逃げをしてしまうシーンから始まる。小林さん演じる白河早苗は、宗方秀一の婚約者。序盤では、結婚を前に明るく陽気な一面を見せているが、中盤から終盤は犯罪者の妻という複雑な心境を抱えた役を演じる。

「早苗は、秀一が勤める会社の副社長の娘。お嬢様だけど、堅苦しく嫌みっぽいお嬢様ではなくて、チャーミングでユーモアがあって。帰国子女のような自由な雰囲気がある子だと、撮影前に(水谷)監督と話をしました。役を作り込むというより、現場の雰囲気、秀一と輝の雰囲気になじむように撮影に入りました」

小林涼子さん

水谷豊さんから多くを学んだ小林さん。「またぜひご一緒したいですが、次はもっと成長した姿を見せたいので、ちょっと先がいいです」【もっと写真を見る】

役のオファーがあった時、渡された台本を読んだ。早い段階で主人公がひき逃げをして捕まってしまう展開に、「この分厚い台本の後半には何があるのか?」とわくわくしたそう。

「普通ひき逃げが題材の物語と聞くと、犯人が逃走する話を想像すると思うんですけど、一切逃げないし、捕まってしまうし(笑)。台本の後半まで読むと、『こんな物語があったんだ』と、とても面白くて驚きました。監督が脚本も書かれたと聞いて、さらに驚きました」

ディナーシーンではオペラに挑戦。ベッドシーン、実は…!?

早苗は、秀一の罪を知らずに結婚する。結婚式前夜、2人がレストランで食事をするシーンでは、明るい早苗と終始渋い顔の秀一が対照的だ。

「レストランの場面は音がないシーンで、私がただおどけているように見えるのですが、実はオペラを歌っているんです。撮影15分前に監督から『何も知らない早苗が、式を楽しみにしている姿が伝わるように、オペラを歌おう!』と急きょ決まったシーンです。オペラと言っても曲や歌詞もなく、ラーラーと私が即興で歌ったので、正直緊張して恥ずかしいシーンでもありました。終わってから監督が『ブラボー!』と言ってくれ、うれしかったです」

(C)2019映画「轢き逃げ」製作委員会

(C)2019映画「轢き逃げ」製作委員会【もっと写真を見る】

ディナー後のベッドシーンについて触れると、「実は、私は一切脱いでいないんですよ」と予想外の答えが返ってきた。

「秀一役の中山麻聖さんは、高校の1年先輩なんです。中山さんが前貼りをしていて、人生で初めて前貼りを見たんですが、高校の先輩の前貼りだから、『いけないものを見ちゃった!』というドキドキ感が強かったですね。ベッドシーンのきれいなお尻は、実は中山さんのです(笑)。みんなから『涼子ちゃんのお尻だよね?』って言われるんですが、あれは中山さん。ぜひ中山さんの美しいお尻を堪能してください(笑)。私からのサプライズとしては、化粧台の前で香水をつけているシーンは、すっぴんでやらせてもらいました。婚前のときめきを詰め込むように丁寧に撮っていただいたので、ぜひ見てみてください」

小林涼子さん

神戸港を一望する美しいシーンでは、被害者の母親役・檀ふみさんと小林さんが共演している。「戸惑いを全面に出して演じました。檀さんが私を受け止めて、導いてくださいました」【もっと写真を見る】

水谷豊さんはチャーミングでユーモアがある人。「とても幸せな時間でした」

監督と脚本を手がけ、被害者の父親役として出演もする水谷豊さん。劇中では、2階から転げ落ちる激しい乱闘シーンにも挑戦し、鬼気迫る演技で葛藤する父親を熱演している。

「水谷さんはシリアスなシーンが多かったのですが、ご本人はとても明るくユーモアのある方。私の芝居を見て、一緒に考えてくださったり、監督目線からアドバイスをいただいたり。素晴らしい先生と一緒にやらせていただき、とても幸せでした。多くの時間を一緒に過ごして、芝居や仕事に対する姿勢を見せていただけてうれしかったです」

(C)2019映画「轢き逃げ」製作委員会

(C)2019映画「轢き逃げ」製作委員会【もっと写真を見る】

新婚早々、犯罪者になってしまった夫を支え続ける早苗。けなげなだけでなく、したたかでもある妻という印象を受けたが、小林さん自身の考えは少し違う。

「私が感じた早苗の印象はしたたかというより、しなやかですね。いろいろな出来事が起きる中で、それを受け止め、彼女なりに受け流していく力がある。たくましく、しなやかな女性なんじゃないかと思います。潔くもあり、そこが早苗の好きな部分でもあります。早苗にとって秀一が、初めて好きになった人なんじゃないのかな。ずっとお嬢様というレッテルを貼られ、生きにくさを感じていたはず。その中で、初めて好きになった相手だったからこそ、最後まで添い遂げようとしたんじゃないかなと思います」

【動画】小林涼子「神戸を感じた瞬間」映画『轢き逃げ 最高の最悪な日』完成披露試写会舞台あいさつ(4月16日、撮影・佐藤正人)

嫉妬心を克服するためには「自信をつけるための努力をするだけ」

ストーリーが進むにつれ、明らかになる事件の真実。誰もが持っている隠れた“嫉妬心”が描かれる。

「嫉妬は、私にもあります。近々で言えば、一番仲のいい友達が3カ月語学留学に行って、すごく英語ができるようになって帰ってきました。私も日本で英語を勉強してきた自負がある中で、たった3カ月でうまくなっていたその子がうらやましくてしょうがなくて……。なぜか腹が立つんですけど、これが“嫉妬”ですよね。

自分に自信がなくなるから嫉妬してしまう。自信をつけるためにも、時間を作って改めて英語を勉強し始めました。劣等感からくる嫉妬は、ねちっこくて心の中でしこりになります。嫉妬を繰り返さないために、自信をつけるために、改めて努力しようと思いました」

(C)2019映画「轢き逃げ」製作委員会

宗方秀一と森田輝を演じる中山麻聖(左)と石田法嗣。「現場でもすごく仲のいい2人で、『私も混ぜて~』と一緒によく話をしていました」(C)2019映画「轢き逃げ」製作委員会【もっと写真を見る】

結婚はまだ先。「まだ何もやり遂げていない。今は芝居に集中したい」

現在29歳の小林さん。昔から「女優になりたい」と思っていたわけではなく、自然に導かれるようにモデル、そして俳優の道を進んできた。

「初めてモデルの仕事をしたのが4歳の頃。友達がかわいい服を着ていたから、私も着たい! と始めたのが最初です。ティーン誌『ニコラ』の読者モデルも同じで、中学の時にバレエができなくなったから、じゃあやってみようと始めました。『女優になる!』と意気込んだことは一度もないので、逆にそれが良かったのかも。今が一番燃えているかもしれないですね(笑)。遅めのスタートです」

30歳を目前にした今、仕事、恋愛観や結婚観についてはこんな思いがある。

「結婚とか恋愛とか、そんな質問をされることが増えて、『その選択肢もあったのか』と初めて気づきました(笑)。私自身、まだ何もやり遂げておらず、仕事に納得ができていません。もちろん死ぬまでにはパートナーが欲しいし、子供がいてもいいのかもしれないけど、(恋愛や結婚は)今ではないのかなと思います。私はいろいろなことを同時にできない不器用な性格です。今は、芝居に集中していたいし、できる限界まで芝居をしたい。その中で、結婚や出産という瞬間が来たらいいですね」

小林涼子さん

好きな男性のタイプは、包容力のある人。「ガツガツ系よりは、父のようにほんわかとしたタイプが好き。ぼんやりしていそうに見えて、実はどしっと構えてくれると安心します。父のように家族ファーストでいてほしいです」【もっと写真を見る】

人間の本質に迫る、骨太でスリリングなサスペンスに仕上がっている『轢き逃げ 最高の最悪な日』。最後に小林さんが、映画へのメッセージをくれた。

「嫉妬心は、私もそうですが、誰でも持っているもの。特に5月は新生活が始まって、自信がなくなったり、逆に自信過剰になったり、心も不安定になる時期だと思います。誰かのことがうらやましくなり、嫉妬してしまいそうになったら『轢き逃げ 最高の最悪な日』を見てください」
(文・武田由紀子 写真・花田龍之介)

『轢き逃げ 最高の最悪な日』作品情報

キャスト:中山麻聖、石田法嗣、小林涼子、毎熊克哉、水谷豊、檀ふみ、岸部一徳
監督・脚本:水谷豊
撮影監督:会田正裕(J.S.C)
音楽:佐藤準
テーマソング:手嶌葵「こころをこめて」(ビクターエンタテインメント)
配給:東映
(C)2019映画「轢き逃げ」製作委員会
5月10日(金)全国ロードショー
ウェブサイト:http://www.hikinige-movie.com/

AIを使って表現を更新する写真家・青木柊野がたどり着いた光景

トップへ戻る

柳楽優弥「誰かが見てくれていると信じ、黙々と続けるだけ」

RECOMMENDおすすめの記事