<FOCUS>DAZN解説者の視点

世界三大ツール開幕! 宮澤崇史さんに聞く『ジロ・デ・イタリア』の楽しみ方

DAZNのさまざまなスポーツ中継の解説者の皆さんに、各競技の魅力や今季の見どころを聞く企画。今回は、開幕が目前に迫った自転車ロードレースの最高峰・世界三大ツールのひとつ『ジロ・デ・イタリア』について、元プロロードレーサーの宮澤崇史さんにお話をうかがいます。宮澤さんは、イタリアを舞台に21日間にわたり繰り広げられるレースの観戦ポイントや注目選手、そしてロードレースとワインの素敵な関係まで、幅広く語ってくれました。

(TOP画像:2018年のジロ・デ・イタリア=gettyimages)

ジロは昔からイチかバチかの賭けをするような選手が多い

宮澤崇史さん

――いよいよ『ジロ・デ・イタリア(以下、ジロ)』の開幕ですね。ジロは世界三大ツールのひとつに挙げられますが、どのようなレースですか?

宮澤 『ツール・ド・フランス(以下、ツール)』という名前を聞いたことのある方は多いと思います。それに『ジロ・デ・イタリア』、『ブエルタ・ア・エスパーニャ(以下、ブエルタ)』を加えた自転車ロードレースが、世界三大ツール(グランツール)と呼ばれています。ツールとジロは100年以上、ブエルタは84年の歴史をもつクラシックレースで、ヨーロッパでは絶大な人気を誇ります。

今年のジロは22チーム176名の選手が参加。3週間で総距離3518.5kmを走りぬき、総合優勝のバラ色のジャージ「マリア・ローザ」を賭けて戦うタフなレースです。

三大ツールは、それぞれが独自のコース設定をしています。ツールは、なによりもお客さんにレースを楽しんでもらうための“ファン目線”を大切にしています。良く言うとレース展開がわかりやすく、悪い言えばあまり波乱が起きないコースづくりや、レース展開になりやすいので、大きなサプライズは起きないレースです。

一方、ジロとブエルタは地元の選手が力を発揮しやすく、それだけ波乱も起きやすいコース設定です。例えば今年のジロのコースには、非常に勾配のきつい登りや、道幅の狭い場所があります。山岳の入り口が狭いコースには特に注目してほしいです。入り口に先に入った選手ほど、その後のレース展開で主導権を握りやすくなるので、お気に入りの選手はどのポジションにつけたのかを探してみましょう。登りの手前から視聴者がワクワクできる面白さがあります。

――ロードレースは、レース内容はもちろんですが、ヨーロッパの景色を見るのも楽しみのひとつですよね。

宮澤 今年のジロでは、レオナルド・ダ・ヴィンチの没後500年を記念して、第3ステージのスタート地点に、ダ・ヴィンチの生誕地ビンチ村が選ばれました。

また10年前に大地震で大きな被害を受けたラクイラが第7ステージのゴールです。

こういった各地に込められたイタリアのメッセージを読み解くのも、ジロの見どころのひとつですね。解説の中でも随時お話ししていきます。

――ジロに参加する選手の特徴はありますか?

宮澤 ジロは昔からイチかバチかの賭けをするような選手が多いです(笑)。

昨年クリス・フルーム(イギリス/当時チームスカイ)が80kmを単独で逃げて大逆転をしましたが、ジロの長い歴史を思い起こさせるような展開でした。ツールではクールなレース運びをするフルームが、ジロでは本性を現したようでした。これがジロらしさなんだなと感慨深かったですね。

101st Tour of Italy 2018

2018年のジロ・デ・イタリア=(Photo by Tim de Waele/Getty Images)

――今年のコースの特徴を教えてください。

宮澤 今年のジロは、ほぼイタリア国内だけでレースが行われる「本物のイタリア式ジロ」です。まずポイントとなるのは、タイムトライアル(以下、TT)が3ステージあること。初日と第9ステージ、そして最終日に設定されています。とくに第9ステージのヒルクライムTTは今年のジロの行方を占う、非常に重要なステージになると予想します。

1週目は位置どりやチームでまとまる事で落車を避けながら走ることが求められます。第3、第7ステージの上りゴールではライバルに差をつけられないように走ります。そして第9ステージのヒルクライムTTでタイム差をつけさせないことが最も重要ですので、精神的な疲労がピークに達しているところで好調をキープできている選手は、ライバルに差をつける絶好のチャンスです。ここでライバルとの差を1分~1分半以内につけていることがポイントになってくるでしょう。

ジロでは毎年のようにきつい山岳コースが設定されますが、今年は山頂ゴールが5ステージあるのも見どころですね。最終日の手前第20ステージは、スタート直後から標高1000m以上登って下って、さらに2000m近く登るという獲得標高がとても大きいステージです。

獲得標高が大きいということは、連日の疲労がたまってきているところに、どんどんジャブのように疲労がたまって、足が痛くて動かないのに動かさなければいけないということです。そういう状態でもライバルに差をつけるチャンスを見つけなければいけない過酷なステージです。ここまで上位をキープしてきたのに、大崩れする選手がいるかもしれませんね。

 

優勝候補はイェーツ、ログリッチェ、デュムラン。西村・初山選手の活躍にも期待

宮澤崇史さん

――それでは、今年のジロの注目選手を教えてください。ズバリ優勝候補は?

宮澤 今年のジロの優勝候補を絞るのは難しいですね(笑)。

昨年ブエルタで総合優勝したサイモン・イェーツ(イギリス/ミッチェルトン・スコット)、プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア/チーム ユンボ・ヴィスマ)、トム・デュムラン(オランダ/チーム・サンウェブ)はレースを盛り上げてくれるでしょう。

イェーツは昨年絶好調でジロに臨み、前半からガンガン攻めてステージ優勝を3回獲得しましたが、最後にガタガタと崩れていったんですよ。もっとうまく分散させればいいのになと思いました。昨年の教訓を生かして、今年は攻めどころを見極めて優勝を狙うでしょうね。チームもすごく強いので期待大です。

ログリッチェも今年の前半から非常に体調がいい。直前の『ツール・ド・ロマンディ(スイス)』では、TTを含むステージ3勝を挙げ、堂々の2年連続での総合優勝を果たしています。今年はTTがキーになるので、要注目選手です。体調が21日間保つかがポイントですね。

地元で一番期待されているのが、どちらも「バーレーン・メリダ プロサイクリングチーム」のヴィンチェンツォ・ニバリと小柄ながらもTTが強いドメニコ・ポッツォヴィーヴォ。この二人はきついステージでも必ず残ってきますので、どちらにも個人総合優勝のチャンスがあると思います。

私のイチ押し、ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア/アスタナ・プロチーム)には優勝してほしいな。25歳とまだ若く、勢いがあります。ジロを得意としていて、山岳の急こう配や細い道は彼の攻撃スタイルに合っているんですよ。すごくキレのある走りをしますが、体調のムラがあり、平均して良いパフォーマンスを出せずに終わってしまうことがよくあるので、そろそろ狙ってもらいたい。

――日本人選手が所属するNIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネも招待チームとして参戦しますね。

宮澤 日本とイタリアの合同チームです。エースのマルコ・カノラ(イタリア)はガチガチの山岳ステージよりは短い登りのゴールが非常に得意な選手です。ニコラ・バニョーリ(イタリア)は逃げが得意な選手なので、もしかしたら山岳賞を狙いにいく可能性も。

西村大輝(ひろき)選手は、どちらかというとオールラウンダーの選手です。これまでグランツールに参戦した日本人選手同様、何か大きな武器を持っていて勝てる選手ではないけれども総体的に高い能力を持ち、チーム内でアシストとして活躍するような選手なので、西村選手にはジロへの参加で、ここから世界に出て行く、スタートラインに立つチャンスをつかんでもらいたいですね。

世界三大ツール開幕! 宮澤崇史さんに聞く『ジロ・デ・イタリア』の楽しみ方

2018年のジロ・デ・イタリア(Photo by Justin Setterfield/Getty Images)

宮澤さんのオススメ観戦術はレースと地元のワイン

――初心者でもすぐにアツくなれるロードレース観戦術を教えてください。

宮澤 ジロに限らず、イタリアのレースは地元のワインにちなんだステージが用意されるんですよ(笑)。今年は第9ステージに「サンジョヴェーゼ・ワイン・ステージ」というステージが設定されていて、近くで製造されるワインがフォーカスされると思います。私はイタリアワインが好きで、中でもサンジョヴェーゼは一番好きなぶどう品種です。そのほかにも地域毎に素晴らしい個性的なワインが多いので興味深いですね。

レースを観ながら、その地域のワインを楽しむのが私のオススメ観戦術です。テレビを通してレースは楽しめますが、残念ながらその場の空気感や風は感じられないんですよ。でもワインには、その土地の空気や味が瓶の中に封じ込められていますよね。

クラフトビールもおススメです。いまイタリアでは色々な地域のクラフトビールが流行していますし。その地域の空気感を少しでも感じられるものに触れて、レースを楽しんでみてください。きっとイタリアの風を感じていただけると思います。

宮澤崇史さん

(文・碓氷健、写真・&M編集部)

宮澤崇史さんプロフィール
元自転車プロロードレーサー。リオモ・ベルマーレ レーシングチーム監督。
1978年、長野県生まれ。3歳から自転車に親しみ、中学生の時にテレビで観た「ツール・ド・フランス」に感動し、プロの自転車選手を目指す。高校卒業後は渡欧してイタリアのチームに所属し、ロードレーサーとして歩み始める。23歳の時、母の命を救うため生体移植で肝臓の半分を提供。チームを解雇されるもアマチュアチームから再スタートしてプロに復帰。北京オリンピック日本代表。32歳の時に日本チャンピオンのタイトルを獲得。34歳で世界最高カテゴリーのプロチーム「サクソバンク」に所属。在籍中にリーダージャージ(個人総合時間賞)・ポイントジャージ(スプリントポイント賞)に日本人選手として初めて袖を通した。2014年に36歳で引退。
現在レース解説、選手育成、自転車イベントの出演など自転車競技の発展に努める一方、生体肝移植後プロ復帰に成功した経験を生かし、教育や医療分野での講演会、チャリティー活動を行う。

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