小川フミオのモーターカー

生産終了後に再評価された若者向けの1台 フォルクスワーゲン「タイプ181」

フォルクスワーゲン・ビートル(タイプ1)には派生モデルが多い。ひとつが、4ドアでかつフルオープンのモデル「タイプ181」だ。軍用のクーリエカー(資材や郵便物などの配送に使う)として開発された車両を、市販向けに仕立て直したモデルである。

1969年に発売され、爆発的ヒットとはいかなかったものの、78年まで生産された。コンセプトはユニークで、実用車とファンカーの最小公倍数という感じである。最大公約数と言ってもいいかもしれないが、魅力が増えていると思い「公倍数」とした次第だ。

独立したフェンダーを持つビートルのイメージを生かしつつ、ボディーはほとんど平面のパネルで構成されている。美しいとはいえないが、ボディーパネルに強度を上げるために波状の補強が施されているところには、少なくとも機能的な美は感じられる。

Volkswagen type 181

発売された当時はこんなかんじの乗り方も許された

先述したように、当初はクーリエカーとして開発されたが、米国なら若者を中心にマーケットが開拓できるのでは、とフォルクスワーゲンは見込んでいたようだ。

しかし、あまりにミニマルだった。ポリ塩化ビニール製の幌(ほろ)は直射日光は防げても寒さには弱いし、サイドウィンドーは巻き上げ式でなく差し込み式だったので雨風も容赦なく室内に入ってきた。北米市場でも敬遠されたとフォルクスワーゲン自身が記録している。

結局、米国では2年ほどしか販売されなかった。私は70年代に日本に並行輸入された車両を見て面白いと思ったが、鉄板むき出しのダッシュボードなどを見て、自分で乗るのは尻込みした。

type181

これはおそらく最終型でビートルのパーツが各所に使われている(バンパーから排気管が出ているのが面白い)

生産終了後に再評価された若者向けの1台 フォルクスワーゲン「タイプ181」

ワイパーモーターまでむき出し(ただし防水加工はされている)

全長3780mmでオリジナル・ビートルよりコンパクト。エンジン排気量は1.6リッターあったとはいえ、ハンドリングを含めてそのまんまビートルである。英国のモーガンのようなスポーツカーなら運転の楽しさと引き換えに、雨にぬれることも我慢できるが、181ではおそらくそこまでの価値がない、というのが私が当時思ったことだった。

今ならば、こういうクルマに乗るのも楽しいかなと思う。ベースになったビートルだって魅力的に見えているし。いまは、速く走ればいいというわけではなく、あえてスローペースで走るのが、気分に合っているのだろう。自分なりの楽しみを見出す時代だと思う。

フォルクスワーゲン・タイプ181

エンジンはリアにあり、フロントにはスペアタイヤや燃料タンクが収納されている

米国では80年代あたりから再評価されて、中古車市場での人気が高いという。181が発表された69年といえば、米国では「ウッドストック・ミュージック&アート・フェスティバル」が開かれたり、映画「イージーライダー」が公開されたりして、カウンターカルチャーの熾火(おきび)がまだまだ熱かった時代だ。当時の若者文化への郷愁も手伝っているのかもしれない。

フォルクスワーゲン タイプ181

(写真=Volkswagen AG 提供)

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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