MY KICKS

スニーカー好きは高級アイテムだけを求めているわけではない ゼンラロックが語る「X-TOKYO」

や、スニーカーは私たちの生活に欠かすことの出来ない“生活必需品”。どんな人にも愛着ある一足があり、そこには多くのこだわり、思い出、物語が詰まっているはず。本連載では、様々なスニーカー好きたちが「MY KICKS(=私の一足)」をテーマに語り尽くす。

ZEN-LA-ROCK(ゼンラロック)さん
1979年生まれ。10代の時にラッパー、DJ としてのキャリアをスタート。2018年にはラッパーの鎮座ドープネス、シンガーソングトラックメーカーのG.RINAと音楽ユニット『FNCY』を結成し、精力的な活動を行っている。ファッションデザイナーとしても活躍を続けており、自身のブランド『NEMES(ネメス)』は今年10周年を迎える。

スニーカー好きは高級なアイテムだけを求めているわけではない

スニーカー好きは高級アイテムだけを求めているわけではない ゼンラロックが語る「X-TOKYO」

2016年、アメリカの若者の間で不思議なブームが起きた。会員制大型スーパー「コストコ」が手がけるオリジナルブランドのスニーカーKirkland 11’s」が大流行したのだ。鈍重なシルエットと20ドル(約2000円)足らずという低価格で、当初は半ば笑いのネタとしてネット上で人気を獲得していったが、やがてクールなアイテムとして世の中に受け入れられていくことに。時を同じくしてブレークしたナイキの低価格スニーカーAIR MONARCH(エア モナーク)4」と並んで、ダッドシューズ(=中高年男性が好みそうなやぼったいスニーカー)ブームの先駆けであったと言えるだろう。

このユーザー発のブームに、一流ファッションブランドが次々に参入すると状況は一変する。高価格帯のアイテムが雨後のタケノコのごとく現れ、ユーモアと低価格が魅力だったダッドシューズが、良くも悪くもスノッブな存在となってしまったのだ

そんな高級ダッドシューズ人気が頂点に達した2018年、日本のSNSユーザーの間で、どこのブランドが作っているのかも定かでない謎に満ちたスニーカーが話題となる。どこかで見たことがあるディテールがちりばめられたインスパイア系スニーカー「X-TOKYOだ。見た目こそ「ダッド(おっさん的)」ではないものの、そのユーモラスなルックスと2000円前後という低価格は、クールで希少性が高いスニーカーに対するカウンター的存在だった初期のダッドスニーカーを思い起こさせる。

今回は、そんな「X-TOKYO」の魅力について、インスタグラムを通じてブレークのきっかけを作ったラッパーのゼンラロックさんにお話を聞いた。

インスパイア系スニーカー「X-TOKYO」との出会い

「中高生時代はスニーカーショップをこまめにチェックして、気になるモデルが安くなっているタイミングで買ってましたね」とゼンラロックさん

「中高生時代はスニーカーショップをこまめにチェックして、気になるモデルが安くなっているタイミングで買ってましたね」とゼンラロックさん

実家近くに靴の大型量販店があったことから、幼い頃からスニーカーのチェックが生活の一部になっていたという人気ラッパーのゼンラロックさん。小学生にして早くも、親に買い与えられる機能優先のスニーカーを「違う」と思っていたそう。

「振り返れば、僕は子どものころから流行を追いかけるのではなく、自分のセンスやタイミングを大事にしてきました。おしゃれに目覚めた中高生時代は上野のスニーカーショップや高円寺の古着屋に行っては、ちょっと変わったものを買ってましたね。根底にあるのは『みんなと同じものは身につけたくない』という思いです。メインストリームには行かないという姿勢は、自分で作っている服はもちろん音楽に関しても一緒。ポリシーでありアイデンティティーであると思っています。このX-TOKYOに目をつけたのも、そういう僕のスタンスからだと思います」(ゼンラロックさん)

「最初は『久々にすごいもの見つけちまったな』って思いましたよね(笑)。しかも調べてみたら名古屋のメーカーが作ってるのに『X-Tokyo』と名乗ってるんですよ」

「最初は『久々にすごいもの見つけちまったな』って思いましたよね(笑)。しかも調べてみたら名古屋のメーカーが作ってるのに『X-Tokyo』と名乗ってるんですよ」

ゼンラロックさんが、名古屋在住の友人を通じて、謎めいたムードを漂わせるスニーカー「X-TOKYO」を「発見」したのは2018年の夏ごろ。無名ブランドの製品であるにもかかわらず、既視感に満ちたデザインに一瞬で心を奪われてしまったのだとか。

「ハッキリ言ってしまうと、いろんな名作スニーカーのデザインがちりばめられているんですよね。ひと目で心を奪われましたよ(笑)。僕は昔から流行(はや)っているものではなく、それに『インスパイア』されて作られたものが好きなんです。例えば、ニューヨークに80年代からグッチやヴィトンに『インスパイア』されたオーダーメイド服を作っているダッパー・ダン(Dapper Dan)さんというテイラーの方がいらっしゃる。でも彼が作っている服は決して『フェイク』ではなく、ちゃんと本人の視点が入っているそうやって質の高いインスパイア系アイテムを作ってきた結果、昨年ついにグッチからオファーを受けてコラボレーションしたんですよ。ここ数年ファッションの世界では、そういった価値の変動がたくさん起きています。もしかするとX-TOKYOも、その流れの中にあるのかもしれないですね……って本当かな(笑)」(ゼンラロックさん)

「しかもこのスニーカーって2000円ちょっとなんです。昨今の高級化するスニーカー事情を考えると、もはやタダみたいなもんですよね」とゼンラロックさん

「しかもこのスニーカーって2000円ちょっとなんです。昨今の高級化するスニーカー事情を考えると、もはやタダみたいなもんですよね」とゼンラロックさん

不思議なスニーカーとの出会いに興奮気味のゼンラロックさんが2018年の7月13日にインスタグラムに「X-TOKYO」の画像をポストすると、多くの人々から「意外と良い」「お値段以上」との反響が寄せられ、ちょっとしたブームが巻き起こる。このポストがきっかけで、安売り量販店の片隅にひっそりと並べられていた「X-TOKYO」が、一気におしゃれスニーカーへと昇格してしまったのだ。

この「異常事態」に気づいた「X-TOKYO」の製造元企業コマリヨーは調査を開始。騒ぎの源がゼンラロックさんであることを突き止める。

「インスタグラムにコマリヨーさんから『ご愛用ありがとうございます。我が社にぜひいらしてください』的なメッセージがきたんです。ショールームに行ってみたら、昔ながらの靴メーカーでしたね。とにかく靴と名のつくものならば何でも作っていて、むちゃくちゃいっぱい自社ブランドを持っている。あまり考えすぎずにスピード感重視で新製品を作りまくっているから、時々X-TOKYOみたいなカッコいいスニーカーが奇跡的にできてしまうんだろうな、と。でもそれってちゃんとした製造インフラや、それを売る販路を持ってる、ちゃんとした企業だからこそできることなんですよね」(ゼンラロックさん)

偶然生まれたカッコよさに新たな視点を加え、必然的な名作に

担当者からアドバイスを求められたゼンラロックさんは、カラーやサイズの展開など様々な提案をする。そんな流れの中で生まれたのが、FNCYと「X-TOKYO」のコラボスニーカー「FNCY TOKYOだ。

アッパー、ソールなど、すべての配色をオリジナルのものから変更。「インスパイア」感は消え、クールな一足に生まれ変わった。「実はアッパーに使っている素材も変えてるんです」(ゼンラロックさん)

アッパー、ソールなど、すべての配色をオリジナルのものから変更。「インスパイア」感は消え、クールな一足に生まれ変わった。「実はアッパーに使っている素材も変えてるんです」(ゼンラロックさん)

僕が培ってきたスニーカーやファッションについての経験や知識が詰まったモデルです。靴をつくるときに使用する足の形に成形したラスト(靴型)やアッパーやソールを成形する金型こそ変更していませんが、素材やカラーなど変えられる所は全ていじってます。値段の安さというのもこのプロダクトの魅力だと思うので7500円で売ることにしました。本当はもっと高くしないともうからないんですけどね(苦笑)」(ゼンラロックさん)

タンにはデザイナーの石黒景太氏がデザインした「FNCY」ロゴ。Xロゴにはリフレクター素材を採用

タンにはデザイナーの石黒景太氏がデザインした「FNCY」ロゴ。Xロゴにはリフレクター素材を採用

インソールにもオリジナルのデザインを採用した

インソールにもオリジナルのデザインを採用した

ヒールには「FNCY」ロゴの刺繍

ヒールには「FNCY」ロゴの刺繍(ししゅう)

ゼンラロックさんは、「世の中で注目されていないものに自分なりの視点や提案を加えて、より良いものにしたい」と語る。昨年は、犬のイラストで知られる不良ご用達のブランド「ガルフィー」とコラボレーションを行い、同ブランドのイメージを大きく変えた。そしていま、X-TOKYOは若者からの注目を集め、若手クリエーターからのコラボ依頼も舞い込んできている。ゼンラロックさんは、X-TOKYOの魅力について次のように語る。

「今の世の中って、みんな間違えないように生きているじゃないですか?人に突っ込まれたくないんだと思います。X-TOKYOに関しても『いいね』って言ってくれる人がたくさんいる半面、『元ネタになってる高級スニーカーの方が良い』って言う人も多い。でも、どんな形であれ反応をくれるんですよ。そこから『このデザインどっかで見たことがあるよね』『2000円のスニーカーを通販で買ったことある?』という会話が生まれる感じがうれしいじゃないですか。これはそういう一足なんです。ただ会話のネタにするという意味では、『FNCY TOKYO』はカッコ良過ぎるのかも。その辺りのバランスって、すごく難しいんですよ(苦笑)」(ゼンラロックさん)

「残念ながらFNCY TOKYO』の受注はすでに終了していますが、通常モデルの『X-TOKYO』は色んなお店で買えるはずです」

「残念ながら『FNCY TOKYO』の受注はすでに終了していますが、通常モデルの『X-TOKYO』はいろんなお店で買えるはずです」(ゼンラロックさん)

「ボリュームのあるヒールがイイんですよ。だから斜め後ろからの角度が好きなんです」

「ボリュームのあるヒールがイイんですよ。だから斜め後ろからの角度が好きなんです」(ゼンラロックさん)

【動画】「X-TOKYO」を着用して撮影に臨んだFNCYのMV。 FNCY – DRVN’ (Prod. : G.RINA) ZEN-LA-ROCK / G.RINA / 鎮座DOPENESS

ZEN-LA-ROCK公式サイト
http://www.zenlarock.com/

NEMES公式サイト
http://nemes.buyshop.jp/

株式会社コマリヨー公式サイト
http://www.komaryo.co.jp/

取材・文/吉田大
撮影/今井裕治

PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年に渡り執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

ミズノ社内がざわついた「ウエーブライダー 1」の復刻 

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