オトナたちに捧げる、現代インターネットのススメ。

「食べること」が「生きること」にもっとつながっていく、新しい時代

最近、「フードテック」の話をよく聞く。

GW中には、ビヨンド・ミート(Beyond Meat社の上場も話題になった。ビヨンド・ミートは大豆などの豆類を原料としたステーキやソーセージを製造している会社で、見た目も味も匂いも本物の肉にそっくりなのだという。

ビヨンド・ミートの場合は「肉」を代替するサービスだが、「食」を代替するサービスは他にもある。栄養素という意味で言えば、ミドリムシの栄養素を活用して食品を作っている「ユーグレナ」の名前を聞いたことがある人もいるかもしれない。タンパク質が豊富でも低糖質であるという「昆虫食」も近年注目されている。

フードテックとはつまり、最新のテクノロジーを食の領域に生かしている分野を指す言葉なので、そこに含まれる事業は「食材の代替」に限らず様々だ。みなさんも聞いたことがあるだろう、フードデリバリーの「Uber EATS」もフードテックに含まれる。他にも農業の業務改善や、飲食店のフードロスを減らすサービスを作ることも同様に「フードテック」だ。

フィンテック(金融サービス+情報技術)やIoTで社会や生活の様々な分野でインフラが変わっていく中、“衣食住”の「食」の基盤もまた変わろうとしているのが「令和」という時代なのかもしれない。

SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)という米国テキサス州で今年3月に開かれたテクノロジーの祭典では、日本の企画も話題になった。企画の名前は「スシ・シンギュラリティ」である。

スシ・シンギュラリティは3Dプリンターで自由な形のスシを印刷物のようにプリントアウトするというもので、食べ物を自由に制作できることを表現している。実際にサービス提供開始も予定されており、その際には初回に自分の生体検査キットを提出することを求められているそうだ。思想として、各人の健康データを遺伝子レベルで最初に取得し、その人に究極的にパーソナライズされた料理をプリントアウトすることで、本当にその人に適した食体験を提供することを目指しているのだという。

変わっていく、私達の「食べる」理由

このようなテクノロジーの進化によって、私達の「食」に関する価値観も変わっていく。

大きな歴史の話をすれば、人類と食の歴史の前半における憧憬の対象は「満腹感」であった。「お腹を満たすために、何かを食べたい」というのが「食欲」と呼ばれていたのだ。しかし、長持ちする加工食品や製造技術によって、現代は飽食の時代。私達は、「美味しいもの」を求めた。

そして美味しいものを食べ過ぎた我々は、最近では「健康のために食べる」ようになってきたのである。いつからだろう、コンビニの陳列棚にサラダチキンがあんなに大量に置かれるようになったのは。最近では、コンビニスイーツのパッケージデザインの表側に大きく「糖質○○g」と書かれているものも少なくない。

そして、私達の健康意識は、テクノロジーによって、今後どんどんアップデートされ続けていくだろう。

これまでは、「健康のためには運動と栄養バランスの良い食事!」だったが、これからは、「健康のためには、運動と自分の遺伝子情報にあった食事!」になるかもしれないのだ。“食べる目的”の粒度はどんどん細かくなっていく。テクノロジーによって。

「食べること」が「生きること」にもっとつながっていく、新しい時代

テクノロジーとともに、「食べる」が変化する

食に関して変化しつつあるのは、食べる目的や、その粒度だけではない。食べるものに関する価値観も、テクノロジーの進化とともに、いろんな面で変化していく。

例えば今、「親は子供のために手料理をすべきか?」という議論がある。いまは手料理を良いものと考える人が多いかもしれないが、もしかしたらミライでは、「人間が取るべき栄養素は、プログラムが厳格に管理すべき。人間が作るのは栄養管理が不完全になり、不健康だ」という主張が出てくるかもしれない。

そもそも、「今晩何食べようかな」と人間が考えること自体を否定される時代が来るかもしれない。「健康な食生活をしたいならば、自分が食べるものはAIに任せたほうがいい」となることもありえる。

大豆由来の肉が出てきたら、ベジタリアンだけでなく、「動物の肉を食べるのは嫌だ」という人も増える可能性だってある。反対に、新しい製造技術によって作られた食品群を「人工のもの」として忌み嫌う人たちも出てくることだってきっとある。

私達の食に関する価値観はきっと、この数年で大きく変わっていくのではないだろうか。何しろ、「肉を食べたい」と思ったときに「鳥? 豚? 牛?」と聞かれていたのが、「動物のお肉? 植物のお肉?」と言われることになるのだし、「ご飯を食べたい」と思ったのならば、「私がつくる? 外食?」ではなく、「好きなものを食べる? それとも自分の体に適したものを食べる?」となるのだから。

「食べること」が「生きること」にもっとつながっていく、新しい時代

新しい時代とともに、「食欲」のアップデートが必要になるかもしれない

食べることは、生きること、だ。

私達の「食べること」に対する意識は、(今のところ)年を追うごとに高次化している。「食欲」は、今や生きるためのアラートではなく、生き方の選択を迫るリマインドのようだ。

人生の選択はいつも思慮深くすべし、しかし、選んだ後は楽しむことがいちばん、ということだけが普遍の事実なのではないだろうか。

「食べたい」を通して、わたしと、そしてあなたは一体、どんな人生を表現するだろう。新しい時代に取り残されないように、ではなく、新しい時代なのだから、時代は気にせず自分の意思で選び取っていきたいものである。

PROFILE

りょかち

1992年生まれ。京都府出身。神戸大学卒。学生時代より、ライターとして各種ウェブメディアで執筆。「自撮ラー」を名乗り、話題になる。新卒で某IT企業に入社し、アプリやWEBサービスの企画開発に従事。現在では、若者やインターネット文化について幅広く執筆するほか、若年層に向けた企業のマーケティング支援も行う。著書に『インカメ越しのネット世界』(幻冬舎)。

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