マッキー牧元 うまいはエロい

<79>肉団子が食べたくなったら「老四川 飄香小院」へ! 歓声が上がるサイズ感と幸福へいざなう美味

ある日突然肉団子が食べたくなる時がある。特に中国料理の肉団子である。あの柔らかく肉の香りに満ちた肉団子に、甘酸っぱいあんがかけられた料理はたまらない。格好のご飯の恋人である。

だがこの肉団子を昼時に食べようと思っても、なかなか出合えぬことが多い。昼の定食は、麻婆豆腐や炒め物中心で、肉団子を用意している店が少ないのである。

おそらく、揚げてからあんをかけるという工程が、昼の忙しい提供時には難しいのだろう。揚げたものを用意しておけばいいじゃないかという話もあるが、それでは固くなってしまうし、肉汁も損失するし、ロスも出ることになろう。

しかしここには必ずある。六本木ヒルズにある「老四川 飄香小院 (ラオシセン ピャオシャンショウイン)」である。

ランチタイムの料理の一つに「紅焼獅子頭」(大きな肉団子のしょうゆ煮込み)である。「わあっ」。運ばれた時に必ず歓声が上がるほど大きい。

威風堂々としながら、黒く輝いて、思わずつばが出る。箸で割ると、抵抗なくすっと箸が入っていく。そしてほの甘い湯気が立ち上って顔を包む。

見た目の凜々しさとは裏腹に柔らかな肉団子

見た目の凜々しさとは裏腹に柔らかな肉団子

薄桃色の肉団子の断面を半透明な汁が流れ出て、「早く食べて」と誘う。すかさず口にすれば、ふんわりと柔らかく、ほの甘い脂の香りと肉のうまみが口の中に広がって、どうにも幸せな気分となる。

煮込んだしょうゆの煮汁も、見た目ほど濃くはなく、肉団子の優しいうまみをそっと支えている。何よりもこの団子の食感がいい。

凜々しい姿なのに、かめばもろく崩れて、舌にキスをする。たくましさとはかなさの両面を持った女性の魅力にとりこになるような、そんな趣がある。この食感はおそらく、団子が作りたてだからだろう。このところに、この店の誠実さがあふれている。

いや、メインの料理だけではない。昼はこの料理に、前菜は、豚肉の唐辛子ジャム添え、ウサギ肉の薬膳ミカン煮、自家製押し豆腐の薫製、鶏肉の四川風ソースといった、上等の前菜がつき、ご飯と自家製泡菜(中華風おしんこ)、鴨(かも)だしとトマトのスープ、デザートなど、他にはない、手の込んだ四川風の料理がつく。すべてに手抜きがないのである。

こりゃあまた肉団子を食べたくなったら、ここだな。

本場四川の麻婆豆腐

本場四川の麻婆豆腐

<連載のバックナンバーはこちら>

老四川 飄香小院(六本木ヒルズ店)

ランチタイムは肉団子の他に、野菜を細く同寸に切った仕事が見事な「季節野菜と豚肉の豆板醤炒め」(1836円)、泡辣椒という酸っぱく辛い自家製発酵唐辛子を使った「目玉焼きと鶏肉の発酵唐辛子炒め」(1836円)や、各種麺料理など、他店では出合えぬ、四川家庭料理が味わえる。「紅焼獅子頭」は、前菜とスープ、ご飯、デザート付きで1944円。「本場四川の麻婆豆腐」(1836円)も素晴らしい。

【店舗情報】
東京都港区六本木6丁目10-1 六本木ヒルズ森タワーウェストウォーク 5F
東京メトロ日比谷線「六本木」駅、1C出口コンコースより直結、都営地下鉄大江戸線「六本木」駅より徒歩4分
050-3177-4848
営業時間:ランチ11:00 ~ 15:00(L.O. 14:30)/ディナー17:00 ~ 23:00(L.O. 21:30)
定休日:火曜
公式サイト:www.piao-xiang.com/

<連載のバックナンバーはこちら>

PROFILE

マッキー牧元

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

<78>罪悪感はナシ! 大量の炭水化物を摂取する幸福/有楽町「ジャポネ」

トップへ戻る

<80>札幌でラーメンを食べるなら? 「喜来登」「高級麺料理 昼膳 無聊庵」で味わう圧巻の一杯

RECOMMENDおすすめの記事