ファッションは語る

転写プリントでファッションの伝統を残す  気鋭のブランド「TOLQ」の試み

近、服好きの間で話題の「TOLQ(トルク)」。大阪を拠点とする5シーズン目の新しいブランド。代表的なアイテムは、一見、ビンテージデニムに見える転写プリントが施された、まるでだまし絵のような素材のジャケットやパンツだ。「昔からなぜか古いものに惹(ひ)かれる」というTOLQデザイナーの中垣拓也さんは、近年、価格高騰が著しいビンテージデニムを伝統として残したいと考えて、このアイテムをつくったそうだ。

転写プリントでファッションの伝統を残す  気鋭のブランド「TOLQ」の試み

特徴のあるシワや色落ちをしたビンテージデニムなら、10万円超えは当たり前。100万円という例も珍しくない。新品を古着風に加工したデニムは市場に出回っているが、やはり、本物のビンテージは経年変化にストーリーが宿る。何より、ビンテージは一着一着が唯一無二だ。

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転写プリントでファッションの伝統を残す  気鋭のブランド「TOLQ」の試み

「本物のビンテージデニムって、本当に魅力的でかっこいいんです。でも、普通はとても買うことができません。そして、本物が減っていくことはあれど、今後増えていくものではない。だから僕は、新しい残し方として“ビンテージを転写プリントした服”を作ってみようと思いました。本物のかっこいいビンテージを転写プリントした生地で作った服は、レプリカの解釈を広げた“新しいレプリカ”。そうやって、僕たちは若い世代に気づきを与えるブランドでありたい」

「一発で理想通りのプリントに仕上がることはないから、50枚、60枚と写真を撮り、調整しながら何度もプリントしてみて、ディテールは僕自身が確認します。大変な作業ですが、ここは絶対に手を抜けない作業。見た目と触った時のギャップに驚いていただけたら、うれしいです」

古着好きの聖地、アメリカン・ビンテージショップ「ベルベルジン」の藤原裕さんがほれ込んだ服を転写プリントで再現したコラボアイテムも人気だが、単にそのままプリントで再現したレプリカばかりでは面白くない、と考えている。

転写プリントでファッションの伝統を残す  気鋭のブランド「TOLQ」の試み

「大喜利感覚の面白さを大切に、TOLQの服を手に取った時に思わず声が出てしまうような服を作りたい」と語る中垣さんが作る服には、活動の拠点が大阪の人らしい洒落(しゃれ)っ気が欠かせない。たとえば、スウェットに虎のスカジャンが転写プリントされたオーガンジーを重ねたブルゾン。視覚的にとてもユニークだが、パターンはシンプルなので、実は着やすい。これ一枚羽織れば、コーディネートが決まる便利な一着になる予感がする。さらに、ビンテージ以外のオリジナルプリントにも「大喜利感覚」の洒落っ気を秘かに仕込んであるのも、TOLQの個性として見逃せない。

「このシャツのカムフラージュ柄はよく見ると、いろんな体位の男女なんですよ(笑)。『ヌードカモ』と呼んでいるんですが、もし気づかれなくても構わない。でも、気づいたら、やっぱりクスっと笑えて楽しいでしょう? これ見よがしで、すぐわかる柄だとつまらないから、気付いたときにクスっと笑えるくらいのサジ加減がいいと思っています」

転写プリントでファッションの伝統を残す  気鋭のブランド「TOLQ」の試み

シーズンごとに新しいアイテムを発表し続けることは、服飾ブランドにとって避けて通れない道だ。TOLQももちろん、毎シーズン、テーマを掲げていて、それはこれからも続く。ただし、どのシーズンの服もタイムレスにいつまでも楽しんで着てもらいたい、という。

中垣さんは最新の技術を生かしたプリント生地という「新しさ」を追求すると同時に、丁寧な縫製、質の良い生地といった基本をおろそかにすべきではない、とも考えている。だから、その両方を実現させるために、日本各地の工場や職人を訪ね、より良い服作りを協働できる取引先を常に探している

誰かから耳寄りな情報を聞けば、足を運び、自分の目で確かめ、TOLQがやりたいことを伝える。それもまた、彼の大切な仕事だ。そうした草の根の活動を続ける彼は、「keep heritage and get departure(伝統や遺産を、現代や未来の技術で昇華し、残していく)」というコンセプトを軸に、斬新なアイテムを次々と発表していく。

「納品まで弊社が責任を持ってやります。だから、あまり規模を拡大できない(笑)。ありがたいことに、コラボも増えました。でも、質を落としたり、僕自身が『なんだか気持ちが悪い』と感じる仕事に手を出したりはしたくない。その感覚はこれからも変わらず、持ち続けると思います」

「新しいこと×古いモノ。この掛け合わせに興味がある。こういう仕事をしていると、音楽や映画に詳しい人と思われがちですが、実は全然詳しくないのがちょっとコンプレックスで。ただ、友達がすすめる音楽は聴いてなんとなく頭の中に入っています。僕が得意なのは、『あれとあれを組み合わせたら面白そう』といった独自の企画を思いつくこと。面白いものを編集したいという感覚があり、常に手札を増やしたいと考えているんです。だから、ネタ帳にいろいろメモしてあります」

転写プリントでファッションの伝統を残す  気鋭のブランド「TOLQ」の試み

今後は、世に残っている希少なビンテージを転写プリントで複製していくコレクションは「ARCHIVES」として継続し、オリジナルのコレクションと分ける予定だ。

「『ARCHIVES』は今後もずっとやっていきますが、それ以外のコレクションアイテムも増えてきたので、分けることにしました。僕自身、昔の服やプロダクトを見て感動することは今でも変わらないので、その感動を、TOLQの服を通してたくさんの人に与えていきたいと思っています」

転写プリントでファッションの伝統を残す  気鋭のブランド「TOLQ」の試み

買った一年後には捨てられてしまう服もあれば、クローゼットにずっと残り続ける服もある。ときめかないものは容赦なく断捨離し、無駄な消費をおさえることが、これからの暮らし方であるとすれば、求められるのは、クローゼットに残り続ける服だろう。つまり、何度手にとっても、ときめきを感じる服だ。そうした志向を持つ人に訴求する魅力をTOLQは持っている。強い意志と洒落っ気がほどよく混ざった、このブランドの「面白さ」に、ぜひ注目してほしい。

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(取材・文/中沢明子 写真/持田薫)

TOLQ オンラインストア:http://tolq.jp/

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