藤木直人、不惑を超えてからの自己評価「僕は“かっこいい”の対極にいる人間」
多くの人が憧れる「イケメン」と呼ばれる俳優たち。彼らはなぜ「かっこいい」のか。その演技論や仕事への向き合い方から、ルックスだけに由来しない「カッコよさ」について考えたい――。
現在放送中の朝ドラ『なつぞら』でヒロイン・なつの義理の父を演じている藤木直人さんは、以前テレビ番組で、「43歳でイケメンと呼ばれる自分はどうなんだ」という葛藤を吐露していた。そんな藤木さんにとって「かっこいい」とは何なのか。返ってきたのは、意外な言葉だった。
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「イケメン」という評価を目にしなくなった
――現在、連続テレビ小説『なつぞら』で、主人公・奥原なつ(広瀬すず)の育ての父・柴田剛男を演じられています。この役を藤木さんはどうとらえていますか?
藤木 僕は婿養子で、草刈(正雄)さん演じる泰樹さんという絶対的な義父に対して顔色をうかがいながら、泰樹さんの実の娘ではっきりものを言える妻・富士子ちゃん(松嶋菜々子)の間に挟まれている立場です。そんな姿がチャーミングに見えればいいなと思って演じています。
――「チャーミング」がキーワードだったんですね。
藤木 自分で言うとおかしいですけど(笑)、おもしろく見えればいいな、と。

撮影:尾藤能暢
――デビューから間もない1999年に、朝ドラ『あすか』で主人公の相手役を演じて注目を集めました。それから約20年たって、今度は朝ドラで父親を演じるということについてはいかがですか?
藤木 そうですね、デビューからわりと早いタイミングで朝ドラに出ることができました。その後大河に出演できたときもそうなんですが、NHKって幅広い方が見てくださるので、親をほっとさせられたと思いましたね。今回に関しては、朝ドラの記念すべき100作目に呼んでもらえたのはうれしかったです。でも父親を演じるという意味では、そこまで特別ではないです。以前も『母になる』(日本テレビ系/2017年)とか、何作かで父親役をやっていますからね。
――剛男さんは義父の泰樹さんに気を使っていましたが、草刈さんとは現場ではどう接せられていたんですか?
藤木 草刈さんって、そんなにお話しになるわけではないんですけど、ふとしたときにしゃべりかけてこられることがあって。いきなり「こないだゴリラを見たんだ」という話をしてくださいました(笑)。『世界の果てまでイッテQ!』(日テレ系)で、イモトアヤコさんとゴリラを求めてルワンダに行ったときのお話でしたね。あの番組に出てらっしゃった草刈さんが、ご本人そのままですよ。おおらかで、ときどき斜め上をいくところがあって、同時にお芝居に対して情熱のある方です。
――草刈さんが若いころに世に出てきたときの印象と、藤木さんがデビューされてからの印象は、少しイメージが重なる部分がある気がします。
藤木 いやいや、草刈さんは「美男子」の代名詞ですから。もちろん僕は年齢的に当時のことをちゃんとは知らないですけど、「草刈正雄」という言葉が独り歩きするくらいだったわけですよね。僕みたいに平々凡々とした人間とは違うんじゃないですかね。

撮影:尾藤能暢
――藤木さんも「イケメン」と言われることが多かったと思いますが、以前『アナザースカイ』(日テレ系/2015年放送)に出ていらしたとき、「43歳でいまだにイケメンとしか言われてない自分って、ダメだな」と語られていたのが印象的でした。あれから4年たって、今は「イケメン」という言葉をどうとらえていますか?
藤木 肩書はある程度自分で作るものじゃないですか。そうやって認識してくれるのだったら、ある意味ありがたいですが、一番初めにくる言葉がそれというのはどうなのかな、と当時は思っていました。でも、もうさすがにイケメン俳優とも言われてないんじゃないですかね。僕が目にしてないだけかもしれないですが。とはいえ、だからと言って新しい肩書がついていないんだとしたら、単にイケメンじゃなくなっただけなのかもしれません(笑)。
「かっこいい」とは対極にいる
――藤木さんは今、「かっこいい」とはどういうことだと考えていますか?
藤木 かっこよさ、うーん……なんでしょうね。僕自身は人間的にはそういうところから対極にいる人間だろうなと思っています。そこを突き詰めようとか追いかけようとはしていない気がしますね。
――ご自身は「かっこいい」の対極にいる、と。
藤木 なんというか、二枚目になりきれないんです。これは人間として、いい部分も悪い部分もあるのだろうなと思います。
――藤木さんにとって「二枚目」はどういう定義ですか?
藤木 いろんな考え方があるとは思いますけど……。以前、宮藤官九郎さんが『おしゃれイズム』(日テレ系)にゲストにいらしたときに、司会の上田晋也さん(くりぃむしちゅー)のことを「心は二枚目だよね」と言われていたんです。実際、上田さんってすごくかっこいい方なんですよ。「かっこよさ」というベクトルの先にあるものを追求しているように思えるし、美学があるというか。僕はそういうものを追求しているかというと……もちろんカッコ悪く見せたいわけではないけど、そこを目指すのは難しいし、そうなれない自分を思い知らされている感じがあります。

撮影:尾藤能暢
――上田さんは、松田優作さんにすごく憧れているんですよね。藤木さんは、誰かに憧れることはありますか?
藤木 ヒュー・グラントさんみたいな、大人でかっこいいけれどユーモアもある人がすてきだなと思いますね。
――それはすごく納得できます。さっきおっしゃっていたように『なつぞら』もそうですが、藤木さんが出られた作品を見ていると、どこかコミカルな部分を感じることがあります。
藤木 やっぱり人間が出ちゃうんだと思うんですよ。特別な訓練をしているわけではないので、自分に近いところで演じているんでしょうね。自分としては客観的に見られないので、ただその作品が少しでも楽しいものになるようにと思っていますが。
――逆に、本来の自分から離れたタイプの役に対する欲はありますか?
藤木 まあ、どんな役でも自分とある部分は離れているじゃないですか。最近はスーツを着る役が多いですが、会社勤めをしたことはないし、きっちりした性格の役が多いけど、自分の部屋は超汚いし。
――デビュー以来、テレビドラマを中心に途切れることなくお芝居を続けています。ずっと出続けているからこそのプレゼンスの高め方というのは考えますか?
藤木 いくつになっても、オファーがないとできない仕事ですからね。そう考えると、ある程度のスパンで仕事をしてないと不安になるのかなとは思います。もちろん、僕も仕事をジャッジしてないわけじゃないし、このペースがいいのかどうかもわからないんですが。もっと仕事を絞っていいんだったら、絞ってみたいですよ(笑)。でも、そういうふうに絞って出られている方たちとは別のポジションにいると思っているからこその、今のペースかもしれないです。
――続けているという意味では、さきほど話に出た『おしゃれイズム』もそうですよね(2005年から出演)。バラエティー番組で話すのは、最初はどうでしたか?
藤木 苦手でしたよ。今でもどうなのかという感じですけど、でもあの番組は上田さんという素晴らしい方がいらっしゃるので、本当に楽しんでやっています。その前から作品の宣伝でバラエティーにお邪魔させてもらっていましたが、迎える立場になっていろいろ気づかされることもいっぱいありました。とにかく感じたのは、「使われないところが多い」ことへの驚きでした。ドラマは監督が台本をもとにカットを割って、それに基づいて撮っていくので、無駄なカットはひとつもないんです。
一方でバラエティーは、30分の番組でも90分収録することもあります。それに、『おしゃれイズム』では自分から提案してロケに行くようになったんですが、半日行ってもオンエアでは4分とかになる。でも、逆に面白いところだけをピックアップしてくれるので、それで気持ちが楽になった部分はあります。

撮影:尾藤能暢
――自分でロケに出たいと提案されたのはなぜですか?
藤木 スタジオでは上田さん、森泉さんと3人なので、自分がゲストの方と1対1でコミュニケーションを取れる場面があるといいなと思ったんです。それがあの番組の中で自分のできることだな、と。
――これまでやってこなかったことをやることで、経験値を積んでお芝居に還元したいという狙いがあるのかなと思って聞いていたのですが、「番組のためにできることをしたい」という気持ちなんですね。
藤木 さっきも言った通り、「人間」がお芝居に出ると思っているので、基本的に僕が経験したことは全て役者としてためになるとは思います。でも本当は、役者は素を見せないほうが、役として純粋に見てもらえるのかなとも思います。ただ今は、作品の宣伝でテレビに出て素の部分を見せるのが主流ですよね。僕は『おしゃれイズム』ではゲストを迎える側ですが、いろんな方とお会いして経験を積ませてもらうことはプラスになると思います。
――そして藤木さんは、俳優・MCのほかに、ミュージシャンとしての顔もお持ちで、今年で音楽デビュー20周年を迎えます。7月からはライブツアーもありますが、音楽をやってライブでファンの方と直接会うことはやはり意義深いですか?
藤木 いつからなんでしょうかね、こんなに幸せな場所はないと思うようになりました。自分に興味を持って支持してくれて、ちゃんとチケットを買ってきてくれるわけですから。映像作品は見てくださる人の顔はわからないし、舞台だったら、ほかの出演者や作品のファンの方もいらっしゃいます。でも、自分のライブは100%自分のホームだし、温かい空間です。そこに甘えている部分もあるんですけどね。ちょっと間違っても許してくれるかなって(笑)。ありがたいし、幸せな場所ですね。高校2年生のときに初めてギターで音を出したときの衝撃は忘れられないし、今も音を出すのは楽しいです。バンドのみんなでやるともっと楽しいし、それを待ってくれている方がいることもうれしいですね。
(聞き手:西森路代)
プロフィール

藤木直人(ふじき・なおひと)
1972年、千葉県出身。早稲田大学理工学部在学中の1995年に映画『花より男子』の花沢類役で俳優デビュー。99年にシングル「世界の果て〜the end of the world」でCDデビュー。その後、大河ドラマ含め多くのドラマに出演。2005年からはトーク番組『おしゃれイズム』のパーソナリティーを務めている。ルービックキューブが得意。
番組情報

連続テレビ小説『なつぞら』
脚本/大森寿美男 演出/木村隆文、田中正、渡辺哲也、田中健二 出演/広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人、草刈正雄ほか
1937年に東京に生まれ、戦争で両親を亡くした奥原なつ(広瀬すず)は、父の戦友だった柴田剛男(藤木直人)に引き取られて、北海道・十勝で育つ。大自然の中で育ったなつが、やがて「漫画映画(アニメ)」の世界でアニメーターを目指す姿を描く。
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