小川フミオのモーターカー

クルマ好きをひきつける多目的車、ダイムラー「ウニモグ」

クルマ好きは、スポーツカーやSUVにばかり惹(ひ)かれるわけではない。トラックもいいし、巨大な車輪と大きなエンジンがむきだしになった農業用トラクターにも、魅力を感じるひとがいるのでは? 「ウニモグ」もクルマ好きを惹きつけるモデルだ。

(TOP写真:当時のウニモグの宣伝用素材で、このころ同車の生産はダイムラー・ベンツではなかった)

1946年のプロトタイプ

1946年のプロトタイプ

独ダイムラーが手がける高機能多目的車がウニモグである。プロジェクトのスタートは1944年。そのときはダイムラー・ベンツ社(当時)で航空エンジン設計部門の長だったアルベルト・フリードリヒの夢に近かった。ドイツが第2次世界大戦で敗北して深刻な食料危機に陥った45年に、多くの機能を有する農業用作業車として提案され、占領軍から開発にゴーサインが出た。

1946年10月に木材を搭載したプロトタイプを山間でテストドライブする設計者のハインリヒ・レーシュラーと、隣りに「ウニモグ」の名称を考えたハンス・ツァーベル

1946年10月に木材を搭載したプロトタイプを山間でテストドライブする設計者のハインリヒ・レーシュラーと、隣りに「ウニモグ」の名称を考えたハンス・ツァーベル

ウニモグ(UNIMOG)とはドイツ語の「UNIversal-MOtor-Gerät」の頭文字をとっており、ダイムラーによる英訳だと「universally applicable motorized machine」。日本語にすると「農業用のエンジン付き多目的作業機械」となるだろうか。

1950年代にウニモグの生産はダイムラー・ベンツの工場で行われるようになりスリーポインテッドスターがフロントについた

1950年代にウニモグの生産はダイムラー・ベンツの工場で行われるようになりスリーポインテッドスターがフロントについた

当初のスペックスとして、「最高速は農業用トラクターの倍の時速50キロ」「車軸はつり下げ式でダンパーも装着」「全輪駆動でディファレンシャルロックは前後に装備」「前後にブレーキ搭載」「フレームの設計は一般車あるいはトラックに準じるものに」「荷台には1トンの積載量を」「前後の重量配分はフロントアクスルに3分の2、リアアクスルに3分の1」「パワーテイクオフシャフトを前後と中央に設ける」などが上がっていた。

当初のウニモグ(前)の前輪ホイールには足をかけて運転席にのぼるステップになるアウターホイールが設けられている

当初のウニモグ(前)の前輪ホイールには足をかけて運転席にのぼるステップになるアウターホイールが設けられている

農作業の効率アップ、が当初のウニモグの使命である。66の農耕機具が接続できたウニモグはドイツの大規模農家にとって不可欠の存在となっていく。

ウニモグのシャシーは、エンジンと変速機を中央よりやや右寄りに搭載し、プロペラシャフトとまっすぐにつながるようにしたレイアウトを特徴としていた。ドライブシャフトともっとも適切な角度で接続できるため、動力軸に用いるジョイントは四つで事足りた。効率のよい設計で、それはいまでも受け継がれているほどだ。

ダイムラー・ベンツのガゲナウ工場でウニモグが作られるようになってから60周年を祝う2011年のイベントでは、こんなデザインスタディもお披露目された

ダイムラー・ベンツのガゲナウ工場でウニモグが作られるようになってから60周年を祝う2011年のイベントでは、こんなデザインスタディもお披露目された

50年代には早くも広範囲の作業車としての可能性が追求されはじめた。やがて、林業、土木、鉱山、鉄道、高所作業、災害救助、軍用など目的に応じた車両が開発されるようになったのだ。現在では装着できるアタッチメントの数は1000を超える。

注目すべき技術のひとつは「ホイールハブドライブ」だ。ドライブシャフトが車輪の中央位置でなく、上のほうに接続されていて、ホイール内のギアを介して車輪を駆動するシステムである。これにより46センチのバリアーもまたいで走行できるのだ。“どこでも可能なかぎりまっすぐ走る”がウニモグのコンセプトと聞いたことがある。

ウニモグにはファンが多くドイツで行われたイベントでは多くの車両が集まった(細いタイヤに注目)

ウニモグにはファンが多くドイツで行われたイベントでは多くの車両が集まった(細いタイヤに注目)

現在では30ものバリエーションが存在している。高機能化の開発も継続しており、一例が最新モデルの「バリオパイロット」だ。ハンドルを左右へスライドできる機構である。それによって右ハンドル車にも左ハンドル車にもなる。作業条件によっては、安全確認や乗降性の面で、ありがたい装備のようだ。こういう機能性がウニモグの魅力だなあと改めて思う。

写真=Daimler提供

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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