小川フミオのモーターカー

どのグレードにも違った走りの楽しさがある 新型スープラの3モデルを乗り比べ

楽しいクルマに乗った。トヨタの新型「スープラ(GRスープラ)」はすばらしい出来のスポーツカーなのだ。電気自動車(EV)へシフトが進む世の趨勢(すうせい)に逆らうような、自動車が本来持っている楽しさを前面に打ち出したプロダクトで、クルマ好きには大いに歓迎されそうである。

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ここ数年ずっと話題になっていたクルマで、私も海外の自動車ショーでは実物と対面していたが、ようやく乗れたのは、2019年5月の終わりだった。

新型スープラには三つのモデルがある。トップモデル「RZ」は3リッター直列6気筒エンジン搭載モデルで、250kW(340ps)の最高出力と500Nmの最大トルクを持つ。「SZ-R」と「SZ」はともに2リッター4気筒だ。出力が異なっていて、前者は190kW(258ps)と400Nm、後者は145kW(197ps)と320Nmとなる。エンジンをフロントに縦置きし、オートマチック変速機を介して後輪を駆動するレイアウトはすべてのモデルに共通だ。

ひとことで説明すると、三つのモデルはまったく異なるキャラクターを有している。トップモデルのRZは、公道では真価を味わえないほど速い。怒濤のパワーが尽きることなく湧きだしてくる感じがある。

回転の限界であるレッドゾーンまで一気に回るこのエンジンのキャラクターを堪能したいなら、ドライブモードセレクターで「スポーツ」を選択するか、ステアリングホイール背後に設けられたパドルシフトによるマニュアル変速を試してみるといい。衝撃的な加速感が味わえるはずだ。

どのグレードにも違った走りの楽しさがある 新型スープラの3モデルを乗り比べ

サーキットではなく、日常的にドライブが楽しめればいいという人は、4気筒のSZ-Rがいい。258馬力もあるだけあって、こちらもかなり速い。4気筒エンジンも6気筒と同じくBMW製である。

小さなコーナーを飛ばすと、6気筒よりエンジンが軽いせいだろう、よりスムーズで軽快な感覚が強い。GRスープラの開発者が「開発時は、SZ-Rが販売のボリュームゾーンになると考えて作っていた」と話すぐらいで、スポーツカーの良さがそろっている。

RZとSZ-Rに共通するのは、サスペンションにモンローの電子制御ダンパーを使っていることだ。モンローが買収したスウェーデンのオーリンズの技術により、ダンパー内部のピストンの動きを制御した結果、乗り心地はしなやかである。

このダンパーの効果を強く感じたのは、これを持たないベースグレードであるSZに乗ったときだ。こちらは足が硬い。試乗コースには荒れた路面もあったので、ことさらゴツゴツと感じる場面も多かった。モンローのダンパーのおかげで、RZもSZ-Rも、長い距離を走るグランドツアラーとしても性能が高そうである。

SZは、では見るべきところがないのかというと、ピュアなスポーツカーとして抜群の魅力を持っているのだ。エンジン出力こそ3モデル中もっとも低いが、アクセルペダルへのレスポンスはいい。ハンドリングは敏感だし、ブレーキだってしっかり効く。クルマとドライバーの一体感はもっとも強いモデルといってもいいだろう。マツダ・ロードスターやスバル・BRZあるいはトヨタ・86などが好きなひとなら、SZが気に入るはずだ。

タイプの異なる三つのグレードが存在し、それぞれに味があるというのは、すごいことだと試乗して感心した。

ご存じのように、スープラは、BMWの新型Z4と並行して開発されたモデルだ。車両の設計はBMWが担当したが、トヨタの開発者たちもいろいろな点にこだわったそうだ。

「ニュートラルステアにとことんこだわり、最後までフロントタイヤのグリップが残り、(カーブで外側に膨らむ)アンダーステアが出ないようにしたかったのがひとつです。そこでスタビライザーの径を変えてもらいました」

GRスープラ・プロジェクトのマネージャーを務めた福本啓介氏はそう教えてくれた。

使うエンジン(ここで触れている6気筒と4気筒)は決まっていたが、アクセルペダルを踏んだときのレスポンス、ブレーキング時の変速タイミング、シフトアップを行うタイミングは、GRスープラ独自のものだそうだ。

「Z4はソフトトップのオープンですが、GRスープラはクーペ。たまたまですが、同じ車型にならなくてよかったです」

福本氏は笑いながらそう語った。スタイリングへのトヨタのデザイナーのこだわりも半端なく、8人がドイツ・ミュンヘンのスタジオに常駐し、モデルを仕上げていったという。

トヨタのデザイナーが使っていたスタジオは面積が限られていたので、離れた場所から見てスタイリングの検証をしたいときなどは、BMWのスタジオに持ちこんだそうだ。そうやって生まれたのがリアフェンダーの凝った造型である。生産を手がけるオーストリアのマグナシュタイアの技術者は、この形状を実際の製品として生産するために苦労したそうだ。

GRスープラ

トヨタ独自デザインのリアフェンダーの造形が徹底したこだわり

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実車をみると、そのリアフェンダーのボリューム感に圧倒される。ものごとは突き詰めないと感動を生むものは作れないのだと、感じさせるものだ。

トヨタにはクルマを開発する際の独自の評価シートがあって、たとえばスポーツカーでも騒音レベルが低く規定されているとか、相反しがちな項目も載っているとか。今回はBMWとの共同開発ということで、いつもより思い切りよくスポーティーに振り切れたはずだ。それがよくわかる、いいとこどりの仕上がりが好ましい。

“EV前夜”のような雰囲気が漂う昨今だが、GRスープラは、過ぎゆこうとしている石油の世紀に対して、強く後ろ髪を引かれる思いをもたせる、出来のいいスポーツカーである。

価格はSZが490万円で、SZ-Rが590万円、RZが690万円と100万円ずつ高くなっていく。現在のところ最も予約が多いのはRZで、「このあと、4気筒の存在が認知されるようになると販売割合も変わっていくでしょう」とトヨタの担当者は語っていた。

(文・写真=小川フミオ)

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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