小川フミオのモーターカー

地味でも、乗る人のことを徹底的に考えて作られたセダン プジョー504

いま「フランス車」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。「ルノー」という言葉であれば、「ゴーン元会長の」となるかもしれないが。多くのひとにとっては、フランスのクルマに対するイメージはそれぐらいかもしれない。私は1980年代まで、「フランスの自動車メーカーといえば、いいセダン」と連想したものだ。

その代表格がプジョーが1968年に発表した「プジョー504」である。一見なんてことはない、むしろ退屈とも言えるスタイリングの4ドアセダンだ。しかし私はこのクルマが大好きで、いまでも所有したいと思っているほどだ。

プジョー504

トランクリッドが“尻下がり”になっているのが特徴

では、504のどこが良いのか。ひとつは乗り心地である。もうひとつは室内が広くて快適なことである。全長は4490mmと、たとえばトヨタのプリウスよりも短いのに、ホイールベースはもっと長くて2740mmもある。パッケージングのよさは驚異的だ。

シートはクッションが分厚くて座り心地は極上だった。欧州の家具の伝統がしっかり生きている、と思ったものだ。一方でサスペンションの設定も絶妙で、ソフトで快適である。いかなる路面の段差でも、ふわりとこなしてしまう。ショックはほとんど感じない。サスペンション各部に衝撃吸収用のゴムをうまく使っているからだ。

プジョー504

ラリーなどにも積極的に参戦して好成績を収めた

日本で販売されたのはディーゼルエンジン車が中心で、はっきり言ってアクセルを踏んでからの出足は驚くほど遅かった。しかもエンジンがかかるまでキーをひねってから1分以上かかった。ディーゼルエンジンが圧縮着火式で、燃焼室を余熱しないと爆発が起こらなかったからだ。当時のディーゼルエンジン車はみな同じだった。

わずかだけ輸入された1.7リッターガソリンエンジン車(コラムシフトだった)に80年代に乗ったことがあるが、こちらも瞬発力は物足りなかった。

プジョー504

プジョー504

ピックアップも作られた

それでも走り出してしまえば、たとえば高速での巡航時は、さきにも触れたとおり、ふわりふわりとした上下動と、路面のショックをすべて吸収してしまう柔らかいシートのおかげで、最高の気分になれた。

当時のプジョー車では標準仕様といってもよかったスライディングルーフを手で引いて開けると、風が気持ちよく入ってくる。凝ったメカニズムというのは、複雑な仕掛けのことをいうのではなく、乗るひとのことを徹底的に考えぬいた作りのことをいうのだ、と私は悟ったのだった。

プジョー504

ピニンファリーナはクーペ(写真)とカブリオレも手がけた

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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