インタビュー

藤巻亮太39歳 ソロとして「レミオロメン」を歌う意味

藤巻亮太がニューアルバム「RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010」を発表した。このアルバムは彼がボーカル&ギターをつとめるバンド「レミオロメン」の楽曲をアコースティック中心のアレンジで再レコーディングしたものだ。

レミオロメンは2000年に結成され、12年に活動を休止した。代表曲「粉雪」は今もカラオケで歌われ続ける名曲。映像にコメントを直接投稿できる動画サイト「ニコニコ動画」で“弾幕”(画面を同じコメントで埋め尽くす行為)が生まれたのも、この「粉雪」からと言われている。オリジナルアルバムは軒並み好セールスを記録し、彼らは00年代のJ-POPを象徴するバンドの一つとなった。

「レミオロメンは僕にとって20代そのものでした。高校時代からの仲間であるメンバーとずっと一緒にいて、ツアーに出て、制作して。すべてがバンド内で完結していて、メンバーは家族よりも濃い関係でした。でも、徐々に自分の中にジレンマが生まれてきたんです」

藤巻亮太39歳 ソロとして「レミオロメン」を歌う意味

「レミオロメンはもちろん、『粉雪』も『3月9日』も多くの人が知ってくれていた。でも藤巻亮太は? バンドや代表曲の肩書きがなくなっても、僕のことを知っている人がどれだけいるか。これは僕にとって重い事実でした。『僕ってなんなんだ?』って。レミオロメンとは違うところで、藤巻亮太という個人の思いを音楽で表現したいと思うようになって、2012年にソロ活動をスタートしました」

やりたいこと”ではなくやるべきことがある

藤巻がソロ活動を始めたころ、音楽業界の環境は激変していた。音楽を聴く手段がCDからデータに移行し、スマホの普及でさらに加速した。またYouTubeでの視聴も広がった。

「ソロ活動を始めて、レミオロメン時代の僕が、どれだけ恵まれた状況にあったかを知りました。周囲のスタッフに手厚くサポートしてもらえることを当たり前のように思っていましたが、そうではなかったんです。

思い通りにいかない現実を前に、僕は周囲を変えようとあがきました。でも状況は全然変わらなかった。当然ですよね。音楽業界を取り巻く状況も変化していて、変わらなければならないのは僕自身だった。それに気づいたとき、これまで支えてくれた皆さんに、自然と感謝の気持ちが湧いてきました」

藤巻亮太39歳 ソロとして「レミオロメン」を歌う意味

2012年8月、藤巻はソロとして初のアルバム『オオカミ青年』をリリースした。バンド時代には出すことのなかった自身のパーソナリティーを存分に表現すると、ソロアーティストとしてのモチベーションが満たされた。さて、バンドを再開しよう。そう思ったとき、他の二人は既にそれぞれの活動に打ち込んでいた。

「ソロデビュー当時、やりたかったことは1stアルバムですべて実現してしまった」。ひとつの大きな目的を果たした藤巻は、ソロアーティストとして、その先何を表現すべきか迷っていた。ファンからは「レミオロメンの曲をライブで聴きたい」と言われることも多かった。しかしその言葉をすぐに受け入れることができなかった。

「レミオロメンの曲だけじゃなく、ソロ藤巻亮太の楽曲にも興味を持ってほしいと思っていました。でも、バンドが休止している今、僕が歌わない限り、お客さんはあの曲たちを生で聴くことはできない。その事実と向き合ったとき、『自分がレミオロメンの曲を歌うべきなんだな』と思い至りました。“やりたいこと”じゃなくて“やるべきこと”があるんだなって。

一度気持ちが切り替わると、『レミオロメンの曲をライブで聴きたい』と言ってもらえることのありがたさに気づきました」

藤巻亮太39歳 ソロとして「レミオロメン」を歌う意味

バンドもソロも地続きだった

レミオロメンの曲を久しぶりに歌った藤巻は、あることに気づいた。それは、全く別物と区別していたバンド活動とソロ活動が、実は自身の音楽人生の中で地続きにある、ということ。

「ソロになって、歌うべきことを模索する中で、いろいろなことを学び、人と話し、たくさんの本を読みました。『禅』の思想に出会ったのもそんなときです。地元山梨の禅寺の和尚さんから、『自縄自縛』『無縄自縛』という言葉を教えていただいて。

『自縄自縛』は過去の経験で自分自身を縛ってしまうこと。『無縄自縛』はありもしない勝手な思い込みで自分をしばること。どちらも『自分はこういう人間だ』と自分で自分にバイアスをかけてしまう状態を表現した言葉です。

僕はレミオロメンという太い縄で自分を縛っていたのかもしれないと思いました。ソロ活動を始めた頃、活動のテーマはまさにその縄をほどくことだった。でも歌ってみたら、縄なんて最初からなかった。確かに節目はあったけど、別にそこで何かが変わってしまったわけではない。そう思えたら、肩の力が抜けて、音楽をやることがすごく楽しくなりました」

藤巻亮太39歳 ソロとして「レミオロメン」を歌う意味

「禅寺では毎朝雑巾がけをするらしいです。単に奇麗にするだけだったら別に毎日拭き掃除する必要はないのに、なぜやるのか? それは『掃除=綺麗にするため』という思い込みをなくすためだそうです。

つまり、雑巾がけをするという行動それ自体に意味があるわけではなく、やりながら自分でどんどん意味を発見していくものなんです。毎日同じことを繰り返しているうちに、どんどん新しい自分が見えてくる。未来にとらわれず、今この瞬間を直視する、というような。この考え方と出合い、『とりあえず曲作ろう』と思いました。それで次の日から毎日スタジオに行くようにしました。一曲もできなくてもとりあえず行く。そしたら徐々に気持ちが軽くなって、曲ができるようになりました」

藤巻が2ndアルバムをリリースしたのは2016年3月。1stから3年半の歳月を要した。一方、3rdアルバム『北極星』のリリースは2017年9月で、制作期間は1年半。見えない縄から自由になったことで、音楽と素直に向き合えるようになった。

音楽には人生を肯定する力がある

そして今年、藤巻はレミオロメン時代の楽曲をセルフカバーしたアルバム「RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010」を制作した。

「このアルバムはレミオロメンの曲を歌い継ごうという思いと同時に、39歳の今、レミオロメン時代の曲を歌ったらどうなるのか僕が純粋に聴いてみたいという思いから作ったものです。ソロアーティストとしての7年の活動の中で、弾き語りをするようになりました。バンドのアンサンブルとは違う環境で歌うと、『こんなふうに歌ってたんだ』『この歌詞でこんな感じ方ができるんだ』といった新しい気づきもあって。弾き語りをすればするほど、楽曲の持つ魅力を再発見することができたんです。レコーディングは本当に楽しくて、いつもはどこかで行き詰まるものなのに、今回はびっくりするくらいはかどりました(笑)」

藤巻亮太39歳 ソロとして「レミオロメン」を歌う意味

「僕はこのアルバムを作って、音楽には人生を肯定する力があると実感しました。ソロをはじめた頃は『レミオロメン』は自分にとって太い縄だったけど、今は自分が一生懸命に生きてきた証だと思っています」

葛藤を乗り越えた藤巻はこの先どこに向かうのだろうか?

「実は去年から、地元山梨で、僕が主催する野外音楽フェス『Mt.FUJIMAKI』を立ち上げました。出演アーティストに電話をかけるところから関わって、ふるさとに新しい風を吹かせることができたと思っています。今年もトータス松本さん(ウルフルズ)、曽我部恵一さん(サニーデイ・サービス)、岸田繁さん(くるり)、ORANGE RANGE、大塚愛さん、ロックバンドのtetoという豪華なメンバーが出演してくれることが決まりました。

『自分』だけで完結する音楽ではなく、『他者』との関係性の中で鳴る音楽をやっていきたい。そんな思いから、旅をしたり、写真を撮ったり、フットサルをしたり、音楽以外の仲間と過ごす時間も増えました。さまざまな経験の中で感じたこと、気づいたことを音楽にして、聴いてくれる人たちとつながっていきたい。今はそんな思いで曲を作り、歌っています」

藤巻亮太39歳 ソロとして「レミオロメン」を歌う意味

藤巻は自分と向き合い、レミオロメン時代の楽曲と向き合う中で、過去でも未来でもなく『今』の重要性に気づいた。そして他者との関係性の中に音楽の希望を見出した。

悩みや迷いを超えた先に、今自分が取り組むべきことが見えてくる。それと真剣に向き合うことが、予期せぬ形で人生の扉を開く。ソロ活動を始めて7年目を迎える藤巻亮太は、今、力強い足取りで、まっすぐに未来を見つめ歩き始めている。

(文・宮崎敬太 撮影・南 阿沙美)

プロフィール

藤巻亮太(ふじまき・りょうた)

2003年にレミオロメンの一員としてメジャーデビューし、「3月9日」「粉雪」など数々のヒット曲を世に送り出す。2012年2月、レミオロメンが活動休止を発表、ソロ活動を開始。同年、1stソロアルバム「オオカミ青年」を発表。以降も精力的にソロ活動を展開し、2016年、2ndアルバム「日日是好日」をリリース。2017年には3rdアルバム「北極星」を発表。2019年春、レミオロメン時代の曲を、アコースティック中心のアレンジでセルフカバーするアルバム「RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010」をリリースし、全国ツアー”In the beginning”を開催。2019年9月29日、自身主催の野外音楽フェス「Mt.FUJIMAKI2019」を、山中湖交流プラザきららにて開催する。

公式HP:http://www.fujimakiryota.com/

リリース情報

『RYOTA FUJIMAKI Acoustic Recordings 2000-2010』

3,000円(税別)

収録曲

01.電話

02.昭和

03.ビールとプリン

04.3月9日

05.五月雨

06.春景色

07.永遠と一瞬

08.粉雪

09.太陽の下

10.茜空

11.もっと遠くへ

12.透明

13.蛍

14.Sakura

15.恋の予感から

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