建物完成後の「住人の暮らし」を映像作品に 建築家・中山英之の個展「, and then」

東京・乃木坂にある「TOTOギャラリー・間」にて、建築家・中山英之さんの個展「, and then」が8月4日まで開催されている。中山さんは初めて手がけた住宅が、建築家の登竜門とよばれる「吉岡賞」や「SD Review2004」(鹿島出版会主催)で「鹿島賞」を受賞するなど、近年注目を集める建築家のひとりだ。今回の展示では、会場全体をミニシアターにするというユニークな試みに挑戦している。

展示スペースは二つのフロアとテラス部分で構成され、3面のスクリーンが設置された4階ホールが「メイン会場である映画館」(中山さん)となる。この映画館では、異なる監督がこの展覧会のために撮り下ろした短編映画5作品と、急きょ追加で撮影が決まったシークレット作品1本を含む、合計6作品が上映されている。いずれも、中山さんが設計を手がけた建物で住人たちがどのような日常を送っているのかを記録した作品だ。

4Fの映画館では、6作品を上映。3面のシアターは、まるで建物の中にいるかのような臨場感を与えてくれる

4Fの映画館では、6作品を上映。3面のシアターは、まるで建物の中にいるかのような臨場感を与えてくれる/© Nacása & Partners Inc.

3Fには、映画のメイキング資料や建築のドローイング、模型などが展示されている

3Fには、映画のメイキング資料や建築のドローイング、模型などが展示されている/© Nacása & Partners Inc.

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エレベーターを降りてすぐ、3階の展示室で来場者が目にするのは、4階で上映されている映画に関する資料や、撮影が行われた建築物の模型、ドローイングだ。

フロア全体は、映画館へ向かうロビーをイメージした空間となっている。詳細な資料だけでもかなり見応えがあるが、あくまでもここはロビー。「お目当ての映画を鑑賞する前の、高揚感を感じて欲しい」と中山さんは語る。壁には各映画のポスターまで展示されていて、来場者を楽しませようとする気配りを感じる。

3階と4階をつなぐテラスには、ベニヤ板にプリントを施した「きのいし(木の石)」が展示されている。ともすれば来場者に唐突な印象を与えてもおかしくない巨大なオブジェは、不思議なほど周囲の風景と調和し、違和感を感じさせない。

会場は二つのフロアに分かれた構成で、4FのGALLERY2はホール全体がミニシアターとなっており、3FのGALLERY1は映画館へと続くロビーの役割を果たしている/© Nacása & Partners Inc.

会場は二つのフロアに分かれた構成で、4FのGALLERY2はホール全体がミニシアターとなっており、3FのGALLERY1は映画館へと続くロビーの役割を果たしている/© Nacása & Partners Inc.

中山さんは、既存の建築物よりも映画や文学といった創作物に多くの影響を受けているという。

「建築と出会うまでは、文化的なことへの興味が全然ない人間でした」

高校生の時、それまで平凡な日常を過ごしてきた少年は偶然、とある建築専門のギャラリーに足を踏み入れる。会場で購入した書籍には、建物だけでなく、哲学や自然科学、歴史、そしてアートにいたるまで、目にしたことがない膨大な情報が書かれていた。

「建築への興味、という扉が開かれた瞬間に、僕の中で、新しい何かがはじまった気がしました。映画を見ることがすごく楽しくなったし、文章を読んで、世界がどういう風に組み立てられたのかを観察するようになりました」

6本の短編映画は、休憩時間を入れて1時間ほどで全作品を見ることができる。

「建築物はひとりではつくれないもの。実際に建物が完成するまでは、オーナーと打ち合わせを重ね、施工業者など各分野の専門家と協力して、細部を調整しながら作業を進めていきます。出来上がった建物が、設計時の想定とは異なった使われ方をすることもあります。さまざまな人の解釈が加わり、予想しないことが起こるのが建築の面白さです」

完成した後の建物で流れる時間や、そこに住まう人々。建築家の思想とは関係なく、住人たちそれぞれの時間軸で続いていく「日常」という物語を通し、建築物を新たな視点で眺めることができる展覧会に、あなたはいったい何を感じるだろうか。

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(文・写真 山田敦士 トップ写真・© Eizo Okada)

PROFILE

中山英之(なかやま・ひでゆき)

1972年福岡県生まれ。1998年東京芸術大学建築学科卒業。2000年同大学院修士課程修了。伊東豊雄建築設計事務所勤務を経て、2007年に中山英之建築設計事務所を設立。2014年より東京芸術大学准教授。

http://www.hideyukinakayama.com

BOOK

建築のそれからにまつわる5本の映画 , and then: 5 films of 5 architectures
(2019年5月発行)

https://jp.toto.com/publishing/detail/A0381.htm

EXHIBITION

中山英之展「, and then」

2019年8月4日(日)まで開催
TOTOギャラリー・間
〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
開館時間:11:00~18:00
休館:月曜・祝日
入場料:無料

【動画】中山英之展「, and then」

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