密買東京~遭遇する楽しみ

定番アイテムの一部を切り取り巨大化した服 ANREALAGEのコレクション「DETAIL」

異例の情報公開――。パリコレで発表された、ANREALAGE(アンリアレイジ)の2019-20 A/Wコレクションでは、なんとショーに出る服が事前にインスタグラムで公開されました。

そこに登場したのは、コートやシャツの襟、パーカやコートのフード、セーターやブルゾンの袖など。コレクションのテーマ「DETAIL」を象徴するような、服の部分的なアップの画像たちでした。

ショーの前に服の写真が公開された、異例のスタイル。現れたのは、一見とてもオーソドックスな姿をしている服でした

ショーの前に服の写真が公開された、異例のスタイル。現れたのは、一見とてもオーソドックスな姿をしている服でした

初期のコレクションでは、「神は細部に宿る」というテーマのもと、まるで神に捧げる儀式のように、圧倒的な時間と手わざを注ぎ込み、見たこともないような服の数々を世に送り出してきたANREALAGE。

その再来を感じさせる手法と、テクノロジーによって生み出された素材との組み合わせで新たな次元に達した前回のコレクション「CLEAR」。5000以上もの樹脂のパーツが、手作業で服に縫い付けられていました。

約3倍の大きさで作られた、巨大な服。モデルが着ているのも、全く同じサイズの服です

約3倍の大きさで作られた、巨大な服。モデルが着ているのも、全く同じサイズの服です

それに続く今回のコレクション。デザイナーの森永邦彦さんと話した時にも、前回のコレクションをとても気に入っていると語っていたのが印象的で。

その流れで「DETAIL」というテーマを見れば、いやが応でも初期の渾身(こんしん)の手仕事を期待してしまうところですが……。

ショーの前にインスタグラムに現れた画像に写っていたのは、そんな想像をあざ笑うかのような、スタンダードな服。

トレンチコート、パーカ、デニムシャツ、セーターと、どれも名前を聞いてすぐにその姿を思い浮かべられるような“普通”の見た目をした服でした。

トレンチコートのポケットの服(左)と、シャツの襟の服(右)

トレンチコートのポケットの服(左)と、シャツの襟の服(右)

さて、すでに画像を見てお気づきだと思います。今回のコレクションで発表されたのは、もちろん事前にインスタグラムに登場したのと全く同じ服ですが、着た姿はどれもイメージを覆すものでした。

なぜならどれも一般的なサイズの3倍ほどの大きさで作られた服だったから。

つまり服の一部が写っていると思っていた画像は、実は服の全体像。切り取られた大きな服の一部を着るようにデザインされたのが、今回の服なのです。

MA-1の袖のスカート(左)と、ダウンのポケットの服(右)

MA-1の袖のスカート(左)と、ダウンのポケットの服(右)

となれば当然ながら、着方は元のサイズの服と同じにはなりません。

シャツやコートの襟のように、大きくなっても同じ位置に首を通して着るものもあれば、袖口が肩やウエストの位置に来たり、ウエストやポケットが肩に来たりと、一目見ただけでは元の服がイメージできないような、意外性のある着方をする服も、かなりあります。

極言すれば服は“筒”だと語る森永さん。袖口を3倍するとウエストのサイズになるという気づきから始まり、同じ倍率がさまざまなパーツに応用できることに気づき、服のイメージを拡大しては体に重ねてみることで、バリエーションを膨らませていったのだとか。

さらに東京で発表したショーでは、メンズのコレクションも登場。こちらは1.5~2倍の拡大によって作られ、レディースとは異なり元のシルエットを意識させるデザインでありながら、独特な世界観を強く感じさせる服たちでした。

パリと東京で行われたショー。東京ではメンズも発表されました。サイズは1.5~2倍で作られています

パリと東京で行われたショー。東京ではメンズも発表されました。サイズは1.5~2倍で作られています

拡大による相似形の服が生み出した、思いがけない形との出会い。実は「DETAIL」というタイトルが、ANREALAGEの初期のコレクション群を想起させるのと同様に、もう一つこのブランドの歴史を思い起こさせるものがあったのです。

「クラフトの時代」とも呼ばれる、圧倒的な手わざを武器にした初期のコレクション。それに続くのが「造形の時代」と呼ばれる時期でした。

2009 S/Sの「○△□」から始まる一連のコレクションは、服が作られる過程に目を向け、当たり前だと思われていた服の形を疑うことで、鮮烈な造形を次々と生み出した時期であり、ブランドへの注目が一気に高まった時期でもありました。

ANREALAGEの服作りが大きな波のように、その姿を変えた時代。それを思い起こさせる「CLEAR」から「DETAIL」への流れは、果たして相似形を描くように新たな時代の幕開けを告げるものとなるのか。

「パリでは思ったよりもエレガンスが重視されているのを感じた」。5年前に初めてのパリコレを終えた森永さんは、そんな風に語っていました。

しかしそんな空気に流されることなく、ブランドの個性を貫いた今回のコレクションに、かなりの手応えを感じられたという、パリでの10回目のコレクション。ANREALAGEからますます目が離せなくなりそうです。

(文・千葉敬介 写真提供・ANREALAGE)

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