或る旅と写真

静かな寂寥を含んだ美しさ 謎めくロシア・サンクトペテルブルクを歩く

今回の旅は、ロシアのサンクトペテルブルク。1918年までロシア帝国の首都だった場所だ。圧巻の世界三大美術館のひとつ、エルミタージュがある都市である。北のベネチアとも言われ、数々の世界遺産に指定されている美しき街並みは、夜にひときわ美しく、料理もおいしい。

ロシアの人たちといえばお酒が強いイメージがある。ウォッカを持ったおじさんたちが所狭しと道を歩いている、なんて勝手に思っていたけど……失礼致しました。自分が滞在している間、ウォッカの瓶を持ち歩く人など見かけたことはなく、これでもかという美しきロシアの女性たちがさっそうと歩いてゆく。観光に力を入れている街だけあって隅々まで清掃が行き届いており、自分の勝手なイメージは杞憂(きゆう)に終わった。

エルミタージュ美術館

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全てのスケールが圧巻というのがサンクトペテルブルクでの旅の印象。エルミタージュに関しては、歴史的価値の高い収蔵品が何百万点とあり、全部見るには1週間くらいかかるのではないだろうかと思わせた。

びっくりしたのは、レオナルド・ダビンチ、ラファエロ、レンブラントら巨匠の作品たちが、手を伸ばせば触れられそうな距離に展示されており、スマホなどで気軽に撮影できたこと。日本では厳重に保管され、撮影禁止、手が触れる距離までは近づけないイメージがあるので、正直びっくりした。とにかくすごいのである。こればかりは、ぜひ行って自分の目で確かめていただきたい。

サンクトペテルブルク

ドストエフスキーが住んでいた街であり、いつくつかの映画などの舞台となった悲劇の場所でもある。数々の悲しみの歴史を刻んで、今もどこかその悲しみを含んだ美しさを保ちながら魅了する街、サンクトペテルブルク。ドストエフスキーがこの街を舞台に数々の名作を生み出し活動していたのかと思うと、なんだか感慨深い。

夜の街を歩いていると、もともと気候が寒いということと歴史背景が相まって不思議な気持ちになる。遠くに不思議な動きをする物体が上空に光った。本気でUFOと間違えドキドキしていたのも、ロシアというイメージがそうさせたのであろう。(もちろんドローンである。笑)

サンクトペテルブルク

サンクトペテルブルクでは、24時間お花屋さんが開いている。理由は酔っ払った旦那が奥様に叱られないように花を買って帰るということらしい。なんてロマンチックな国なんだ。ほんまかいなと夜の遅くに街を散策してみると、ちゃんと花屋さんがあちこちで営業していて、少しでも疑った自分が恥ずかしくなる始末。

日本の男性にはあまりない行動であろう。旅をしていて楽しいのが、その国の歴史に触れることはもちろんであるけど、普段の人情味を感じさせてくれる場面を実際に感じられるところだったりもする。

サンクトペテルブルク

幼少の頃から映画が大好きな自分は、ハリウッド映画もよくみていた。そこで必ずロシア人は敵であり、感情がないような人物として扱われることが多い。知らないうちに植え付けられたイメージで、ロシアは怖い場所……なんて勝手に感じてた自分に少し反省しながらも、実際、寒いというのもあるのか人々の歩く姿はそこまで陽気じゃない。でも、日本の通勤時間なんて無表情の塊みたいなもんだから、少し踏み込めば花屋の話のようにとても優しい人々なんだろう。

サンクトペテルブルク

フォトグラファーとしても魅力的な場所であり、飽きることがない。時間が許してくれるのであればずっと散策して撮影していたいと思うくらいに、ただ美しいだけではない魅力がある。

ワインを飲んで、夜の街をぶらぶらと歩く。自分がロシアにいるんだな、という気持ちが、より一層フォトグラファーとしての心をくすぐる。旅としては今までにない感情、フォトグラファーとしては魅力的すぎる街並みに出会った。ロシアはなんかまだちょっと……なんて思っている人にこそ行ってほしい国である。

知らなかった国を知り、人を知り、自分の感情が覆される。これこそ旅の醍醐味(だいごみ)なんですから。

では、また。

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PROFILE

高橋伸哉

人物、風景、日常スナップなど、フィルムからデジタルまでマルチに撮影するフォトグラファー。国内外を旅して作品を発表している。企業案件や広告撮影、技術本の書籍(共同執筆)、ワークショップなども多数。インスタグラムの総フォロワー数は35万人を超える。(@t.1972@s.1972

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