マッキー牧元 うまいはエロい

<80>札幌でラーメンを食べるなら? 「喜来登」「高級麺料理 昼膳 無聊庵」で味わう圧巻の一杯

食通・マッキー牧元さんが、日々開拓している飲食店の中から、とびきりおいしいメニューを“官能的”に紹介する連載「うまいはエロい」。今回は札幌で食べたい二つのラーメン(……片方はラーメンの枠に収まらない料理?)です。

    ◇◇◇

札幌はラーメンの街である。普段はあまりラーメンを食べない僕も、札幌に行くと、無性にラーメンが食べたくなる。

定番のみそラーメンで好きなのは、「喜来登(きらいと)」である。これでもかとネギをてんこ盛りにし、もやしがたっぷり入ったみそラーメンは、余計なことをなにもしていない、素直さがある。そして食べ進むに従って、優しい味から次第に濃い味に変わっていく不思議がある。

<80>札幌でラーメンを食べるなら? 「喜来登」「高級麺料理 昼膳 無聊庵」で味わう圧巻の一杯

ネギが山のように積まれた喜来登のみそラーメン

麺料理の枠を超え、もはや「北海道の大地」と言うべき一杯

こうしたオーソドックスな一杯もいいが、今もっとも面白いのは、「高級麺料理 昼膳 無聊庵(ぶりょうあん)」だろう。ラーメンも、スープも、上にのせる具も、営業形態も「変態」ぶりを発揮している。

何しろ昼しかやっていない。予約制で、10人限定だという。メニューは6種類だが、ホゲット、エゾジカ、キャビア、ウニ、長芋、山わさびなど、果たしてラーメンかと思う食材名が並んでいる。

その中から選んだのが、「足寄町石田めん羊牧場さんのホゲット肉のグリル、羊骨と鰹出汁の熱々麺」(3000円)である。頼むと、一人厨房(ちゅうぼう)を切り盛りする太田了光(のりみつ)店長が、「少々おまちください」といって、肉を焼きだした。もう一度言う。肉を焼きだしたのである。

日本には、数多くのラーメン屋があるが、注文後に肉を、しかもホゲット(羊肉の親と子の間、つまりマトンとラムの間の肉)を焼く店があろうか。

よく考えれば、ここをラーメン屋と考えるのはおかしいのであって、どこにもラーメンとは書いてないし、メニューにもない。高級麺料理とあるだけである。

「高級麺料理 昼膳 無聊庵」の人気メニュー「足寄町石田めん羊牧場さんのホゲット肉のグリル、羊骨と鰹出汁の熱々麺」

高級麺料理 昼膳 無聊庵の人気メニュー「足寄町石田めん羊牧場さんのホゲット肉のグリル、羊骨と鰹出汁の熱々麺」

さあ、いざ食べよう。どどうっ。汁を飲み、麺をすすり、肉にかじりつく。

どどうっ。どどうっ。食べるたびに、大地が鳴動する。これはもはや麺料理ではない、北海道の凜々(りり)しき大地である。

生命力のたくましさにうなり、豊かな味わいに笑う。ホゲットの肩ロースをソテーし、鴨だし中華そば専門店「ダックラーメンエイジ」の店主が作ったオリジナル麺をゆで、羊の骨とアキレス腱(けん)、かつお節でとったスープを張り、特別な白アスパラと緑アスパラを乗せる。

スープを飲めば、かつお節の香りの向こうから羊の大群がやってきて、味覚を鼓舞する。麺をすすれば、小麦の甘い香りが立ち上り、噛(か)んで噛んでいくと、ほのかな甘みが顔を出す。そしてホゲットにかじり付けば、勇壮なる滋味が舌に滴り落ちる。

アスパラも厳選されたものなのだろう。香り高く、緑と白それぞれにミネラルが満ちて、感謝の言葉を述べたくなる。

ああ体が熱くなってきた。鼻息が荒くなってきた。

「俺は、食らっているぞお」。できれば立ち上がって、そう叫びたい。そんな麺料理なのである。

昼だけ限定10食で予約制というのもわかる。全神経を集中して、太田さんが作られるので、「10食でも、もういっぱいいっぱいです」という状況なのである。

確かに高級で、デザート3種とハーブティーがつくにせよ、3000円は高価である。でも断言しよう。原価をかけすぎて、あまりもうかってはいないと思う。

だからといって、趣味ではない。北海道の厳選した食材に敬意を払って、「変態プロ」が作り上げた傑作である。

「せたな町ファームブレッスドウィンドさんの放牧黒豚 ローストポークと季節の野菜、トンコツと鰹の合わせ出汁」(2000円)もうまかったぞ。

同じく「高級麺料理 昼膳 無聊庵」の人気メニュー「せたな町ファームブレッスドウィンドさんの放牧黒豚 ローストポークと季節の野菜、トンコツと鰹の合わせ出汁」

こちらは「せたな町ファームブレッスドウィンドさんの放牧黒豚 ローストポークと季節の野菜、トンコツと鰹の合わせ出汁」

店舗情報

喜来登

北海道札幌市中央区南二条西6丁目3-2
札幌市電山鼻線「資生館小学校前」駅より徒歩3分、同「西8丁目」駅より徒歩5分、札幌市営地下鉄東西線「大通」駅より徒歩4分
011-242-6070
営業時間:11:40〜21:30(L.O)
定休日:木曜

 

高級麺料理 昼膳 無聊庵

札幌市中央区南二条西4丁目 oyoyo valley2階 Magazzino内
札幌市営地下鉄「大通」駅より徒歩2分
080-9617-5430
営業時間:11:50〜13:45
定休日:日、月、火 *臨時休業あり
FBページ:www.facebook.com/buryouan/

PROFILE

マッキー牧元

1955年東京生まれ。立教大学卒。年間幅広く、全国および世界中で600食近くを食べ歩き、数多くの雑誌、ウェブに連載、テレビ、ラジオに出演。日々食の向こう側にいる職人と生産者を見据える。著書に『東京・食のお作法』(文藝春秋)『間違いだらけの鍋奉行』(講談社)。市民講座も多数。鍋奉行協会顧問でもある。

<79>肉団子が食べたくなったら「老四川 飄香小院」へ! 歓声が上がるサイズ感と幸福へいざなう美味

トップへ戻る

<81>酸味と辛みで食欲増進 インドのカレー料理「ポークビンダルー」がうまい!(渋谷「ポークビンダルー食べる副大統領」)

RECOMMENDおすすめの記事