MY KICKS

コンバースのチャックテイラーは「裏切らない」、「WORM TOKYO」大草良平さんの1足

今や、スニーカーは私たちの生活に欠かすことのできない“生活必需品”。どんな人にも愛着ある一足があり、そこには多くのこだわりや思い出、物語が詰まっているはず。様々なスニーカー好きたちが「MY KICKS(=私の一足)」をテーマに語り尽くします。

大草良平さん
1984年生まれ。ファッション専門学校在学中にスニーカーの世界に飛び込み、バイヤーとしてLAと東京を往復する日々を送るようになる。現在は世界トップレベルの品ぞろえを誇るスニーカーショップ「WORM TOKYO(ワーム トウキョウ)」の代表。

「ストリートファッション=ボリューミーなスニーカー」という思い込み

あなたがスニーカー好きならば、一度は「WORM TOKYO(ワーム トウキョウ)」の名を耳にしたことがあるだろう。「エアジョーダン1」に代表される80年代のビンテージ・スニーカーからナイキやアディダスの最新モデルまで幅広い品ぞろえで知られる同店は、一部のマニアたちの間で「あの店に行けば欲しいスニーカーが必ず見つかる」とまで評されている。その評判は海外にもとどろいており、来日アーティストがお忍びで来店することも。

そんなワーム トウキョウ代表の大草良平さんがマイキックスに挙げてくれたのは、最新スニーカーでも希少なヴィンテージモデルでもなく、コンバースの定番スニーカー「オールスター」の復刻モデル「CTAS(チャックテイラー・オールスター) 70’s」だ。

コンバースが1917年から製造していたバスケットボールシューズ『キャンバス・オールスター』にバスケットボール選手チャック・テイラー氏の助言を加えて、1922年に発売されたのが「チャックテイラー・オールスター」

コンバースが1917年から製造していたバスケットボールシューズ『キャンバス・オールスター』にバスケットボール選手チャック・テイラー氏の助言を加えて、1922年に発売されたのが「チャックテイラー・オールスター」

ご存じの通り、オールスターは、発売当初から現在まで、ほぼデザインが変わっていない。だが100年にわたる歴史の中で、シルエットやディテールに関しては細かな仕様変更が加えられてきた。CTAS 70’sは、1970年代に流通していたオールスターを復刻した一足だ。

1984年生まれの大草さんとスニーカーの出会いは、中学2年生の時に初めて自分で選んで買ったナイキの「エアフォース1」の「ジュエル・スウォッシュ」モデルだったという。中高を通じてスニーカーにハマり続けた大草さんは、並行して「Swagger(スワッガー)」や「MackDaddy(マックダディ)」をはじめとするドメスティックブランドがリードした「恵比寿系」ストリートファッションに夢中になっていく。

現行モデルと同じく足首の保護のために圧着された円形のパネルには「CONVERSE ALL STAR(コンバースオールスター)」「Chuck Taylor(チャック テイラー)」のロゴが入る

現行モデルと同じく足首の保護のために圧着された円形のパネルには「CONVERSE ALL STAR(コンバースオールスター)」「Chuck Taylor(チャック テイラー)」のロゴが入る

今も昔もストリートファッションの足元といえば、ボリュームのあるスニーカーが定番。大草さん自身も中学時代に購入した「エアフォース1」を皮切りに「エアジョーダン3」など、存在感の強いスニーカーを履くことが多かったという。しかし今回、大草さんが選んでくれたのは、ローテクスニーカーの代表的選手であるオールスターの復刻モデル。その理由を尋ねると次のように答えてくれた。

「“フォース1”も“ジョーダン3”もモノとしてはカッコいいんですが、結局のところ僕には似合わなかったんです(苦笑)。それでも僕が十代の頃は定番ということで履いていたんですが、20歳ぐらいの頃に雑誌を読んでいたらスワッガーのデザイナーでラッパーのIGNITION MAN(イグニッションマン)さんが、コンバースのオールスターを履いていたんですよ。肩の力が抜けていて、すごくオシャレに見えました。僕は『無理してでもゴツいスニーカーを履かなければ』と思い込んでいたので衝撃でしたね」(大草さん)

ビンテージ、高級ライン…… 「オールスター」の中で一番しっくりきた「CTAS 70’s」

70年代のオールスターは一般的なオールスターと比べてトゥキャップが小さい(画像は「CTAS 70's」)

70年代のオールスターは一般的なオールスターと比べてトゥキャップが小さい(画像は「CTAS 70’s」)

ストリートファッションにローテクスニーカーをこんなにかっこよく合わせることができるのか――その衝撃が冷めないうちに、大手スニーカーショップを訪れた大草さんは、オールスターの価格にも衝撃を受ける。それまで履いていたナイキのスニーカー1足分の予算で、3〜4足も買うことができるのである。

「まずリーズナブルな価格や豊富なカラーバリエーションにひかれました。さらに驚いたのが太さや丈の長さを問わずどんなパンツとでも合うこと。でも当時流通していたオールスターは作りという点では値段相応だったし、街を歩いていると人とかぶることが多い。そこで僕は古着屋でアメリカ生産モデルのオールスターを探すようになったんです。パッと見だと現行モデルとほとんど変わらないように見えますが、シルエットやヒールパッチのデザインが違っていたりします。もちろん海外限定のカラーもたくさんあります。シンプルだけど、すごく奥が深くて、あっという間にハマってしまいました」(大草さん)

しかしアメリカ製オールスターは当時既に生産が終了しているため、希少性が高いモデルには10万円近い価格がつくことも珍しくなかった。そこで大草さんが目をつけたのが、今回マイキックスとしてあげてくれたCTAS 70’s70年代に生産されていたオールスターを忠実に復刻した海外限定モデルだ。

「僕から言わせれば、オールスターって気兼ねなくガンガン履くスニーカーなんです。ビンテージや当時人気を集めていた高級ラインの復刻モデルは、ラフに扱うにはちょっと値段が高かった。そんな時に出会ったのが海外限定の復刻モデル『CTAS 70’s』でした。現行のオールスターよりもソールが厚かったり、トゥキャップが少し小さめだったり、あとは昔のモデルに比べて履き心地が良くなってるんですよね。2003年にアメリカのコンバースがナイキの傘下に入った影響もあるんでしょう」(大草さん)

「CTAS 70’s」に魅せられた大草さんは買って買いまくり、現在自宅には「CTAS 70’s 」だけで50足をストックしているという。今回はその中から紫色のハイカットモデルを選んでくれた。

現行のオールスターよりも、5ミリほどソールが厚いため、ややボリューム感があるのも人気の秘密

現行のオールスターよりも、5ミリほどソールが厚いため、ややボリューム感があるのも人気の秘密

「黒や白も良いんですが、定番として常に出ているんです。でもこのパープルは、それまで復刻モデルにはない色だったので、思わず3足も買ってしまったことを覚えています。しかも、僕の知る限りその後リリースされていないレアカラーなんですね。そういう楽しみ方が出来るのも『CTAS 70’s』のいいところだと思います」(大草さん)

ナイキの最新スニーカーに勝るとも劣らない「裏切らない」1

大草さんのオフィスには、激レアスニーカーがところせましと積み上げられていた

大草さんのオフィスには、激レアスニーカーがところせましと積み上げられていた

「ワーム トウキョウ」では、最新のハイテクスニーカーや高級ブランドとのコラボレーションスニーカーなど、流行のスニーカーを大量に入荷する。全世界のスニーカーヘッズ垂涎(すいぜん)のアイテムに囲まれて働く大草さんだが、日々履いているのはこれ以上ないと言うほどシンプルなCTAS 70’sだという。目移りすることはないのだろうか。

「僕は本当にスニーカーが好きで、特にナイキやジョーダンはコレクトしてもいます。ただCTAS 70’sを含むコンバースのオールスターって、ナイキの最新スニーカーに勝るとも劣らないアイテムだとも思っているんです。実は時々『お客様に薦めるために自分でも履いてみよう』と考えて、ハイテクスニーカーで出勤することもあるんですよ。でも事務所に着く頃には『やっぱり自分にはチャックテイラーだ』と思ってしまう(笑)。ですからオフィスには常に2〜3足のCTAS 70’sを置いています」(大草さん)

大草さんは日々新たに生まれる流行の最前線に身を置きながらも「流行(はや)りものが自分に似合うとは限らない」と言い切る。大草さんは収集物としてのスニーカーを深く愛している。が、それ以上にスニーカーを履くことを愛しているようだ。

「今はほぼ毎日『CTAS 70’s』を履いていますね。どんな服にでも合うし、定番アイテムだから汚れやソールの減りを気にすることなくガンガン履ける安心感もある。その日に着る服を決めたら、あとは靴の色だけ選べばいい。面倒くさがりな僕にぴったりな絶対に僕を裏切らない一足なんです」(大草さん)

取材当日も大草さんはエメラルドグリーンの「CTAS 70's」を着用していた

取材当日も大草さんはエメラルドグリーンの「CTAS 70’s」を着用していた

大草さんのベストアングルはバックショット。現行モデルのヒールパッチは白地に「ALLSTAR(オールスター)」のプリントが入るが、「CTAS 70's」のヒールパッチは黒字に「Chuck Taylor(チャックテイラー)」の文字

大草さんのベストアングルはバックショット。現行モデルのヒールパッチは白地に「ALLSTAR(オールスター)」のプリントが入るが、「CTAS 70’s」のヒールパッチは黒字に「Chuck Taylor(チャックテイラー)」の文字

「家のげた箱に『CTAS 70’s』を箱から出して、靴の上に靴を積み重ねて収納しているんですよ。ナイキのスニーカーではできないことですよね。でも、そうやって気兼ねなく使える感じがいいんです」と大草さん

「家のげた箱に『CTAS 70’s』を箱から出して、靴の上に靴を積み重ねて収納しているんですよ。ナイキのスニーカーではできないことですよね。でも、そうやって気兼ねなく使える感じがいいんです」と大草さん

コンバースのチャックテイラーは「裏切らない」、「WORM TOKYO」大草良平さんの1足

WORM TOKYO
渋谷区神宮前のスニーカー専門店。知識豊富なスタッフがユーザーから買い取ったスニーカーを販売している。ショップ内には世界的に入手が困難なレアスニーカー、マニア垂涎(すいぜん)のオールドスニーカーから最新流行スニーカーまで常時1000足以上のスニーカーを展示。スニーカーの博物館さながらの物量で来店客を迎える。

公式サイト
https://wormtokyo.jp/

撮影/今井裕治

PROFILE

吉田大

ライター・編集者。大学卒業後、児童書出版社勤務を経て、フリーランスに。ファッション、アート、音楽、ストリートカルチャーから、政治経済、社会問題、テクノロジー、グルメに至るまで、多岐にわたるジャンルにおいて、長年に渡り執筆活動を続けている。趣味は自転車と立ち食いそば店めぐり。お酒や煙草を嗜まないストレート・エッジな生活を送っている。

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