原田泰造×コトブキツカサの「深掘り映画トーク」

シリーズ初心者でも楽しめて、かつ集大成にふさわしい物語 『X-MEN ダーク・フェニックス』

ネプチューンの原田泰造さんと、映画パーソナリティーのコトブキツカサさん。映画が大好きなオトナのお二人が、新作や印象に残る名作について自由にトークする対談企画です。今回は、6月21日に日本で公開されたばかりの人気シリーズの最新作X-MEN ダーク・フェニックス』についてたっぷり語ります。

<ストーリー>

特殊能力を持つミュータントたちで結成されたX-MENは、人類と共存し平和を守っていた。そんなある日、メンバーのひとりジーン・グレイは、NASA乗組員救出の宇宙ミッション中の事故によって謎の熱放射を浴びてしまい、心の闇に潜んでいた彼女のもうひとつの人格“ダーク・フェニックス”を覚醒させてしまう…。

X-MEN ダークフェニックス

© 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

コトブキ 「X-MEN」はメインシリーズがこれで7本目の映画となりますけど、泰造さんは何本ぐらいご覧になっていますか?

原田  全部かどうかはわからないけど、かなりの数を観ていると思うよ。ヒュー・ジャックマンが演じてたウルヴァリンが好きだったね。スピンオフの『ローガン』も、すごく面白かった。

コトブキ 『ウルヴァリン』シリーズは3本あって、あの『デッドプール』もX-MENのスピンオフ作。この流れをぜんぶ把握するのは難しいですよ。

原田 同じキャラクターを、違う役者さんが演じてたりもするしね。

コトブキ 5作目の『フューチャー&パスト』でタイムスリップして、そこから時系列が別れたというか、パラレルワールドになってるんですよね……。なので、そういう細かい世界観は今回は置いておいて、この『ダーク・フェニックス』という作品について語りたいと思います。

原田 そういう意味でいうと、『ダーク・フェニックス』はX-MENシリーズを初めて観る人でも、すごくわかりやすくて面白い作品になってると思った。「ダーク・フェニックス」こと、ジーン・グレイのキャラクターにフォーカスされてるし、物語も彼女が中心に進んでいくから。

原田泰造さんとコトブキツカサさん

コトブキ ジーン役のソフィー・ターナーは、泰造さんのお好きな『ゲーム・オブ・スローンズ』でブレイクした女優さんですよね。

原田 スターク家のサンサだよね。シーズン1の頃はまだ子供で、その頃からずっと観てるから成長したなって思うし、この作品では貫禄まで感じたよね。

コトブキ X-MENはキャストが豪華ですけど、ソフィー・ターナーも含めて、このシリーズに出たことで、みんなどんどんメジャーになっていく感がありますよ。ビースト役のニコラス・ホルトなんていまや主役級ですし、ミスティーク役のジェニファー・ローレンスとかも、よく出てくれてるよねって感じですよ。

アカデミー賞級俳優たちの本気の演技が作品に力を

原田 ジェニファー・ローレンスが、あの青いメイクで、ちゃんとこういう作品に出続けてくれてるのはうれしいよね。

コトブキ 昔だったら降板してますよ(笑)。でも逆に、こういうタイプの作品でも手を抜かないというか、すごい演技をみせてくれていて。昨今のスーパーヒーロー映画のレベルがあがっているから、とも言えますけど、プロフェッサーX役のジェームズ・マカヴォイとか、マグニートーを演じてるマイケル・ファスベンダーとかも、本気でやってくれてるじゃないですか。

原田 『アベンジャーズ』のほうも、ハルクのマーク・ラファロとか、キャプテン・マーベルのブリー・ラーソンとか、アカデミー賞レベルの役者さんたちがやってるんだもんね。

コトブキ 少し前までは、ハリウッド俳優がこういうタイプの作品に出るのって勇気がいることでしたし、ファンからもちょっと批判が出るような雰囲気があったじゃないですか。あのイケイケだった頃のジョニー・デップが『パイレーツ・オブ・カリビアン』に出るときも、「いや、たまには俺の子供が喜ぶような作品をやろうと思って」とか、わざわざ理由を語ってましたから。

原田 確かにね。ちょっと照れがあったというか。

コトブキ それがいまやノリノリですもんね。旧シリーズでストーム役をやってたハル・ベリーだって、アカデミー賞主演女優賞を獲得した後に『キャットウーマン』に出たことで、いろいろ批判されたわけじゃないですか。それでもまたX-MENに出ている、みたいな。

原田 ホントにみんな演技に手を抜いてないよね。逆にこういう荒唐無稽な世界だからこそ、しっかりした演技力がないと伝わらないし、リアルに感じられないんだと思う。いまこれだけヒーロー映画が増えて、しかもジャンルとして根付いてきたのは、一流のスタッフと役者達が本気でやったからという理由が一番大きいと思う。

コトブキ 今作でいえば、謎の女を演じているジェシカ・チャステインも雰囲気出てましたね。

原田 良かった。『モリーズ・ゲーム』のときは、役柄のせいかもっとガッチリした印象だったけど、今回はエっと思うくらい痩せていて、ミステリアスな印象だったね。

原田泰造さん

X-MENたちには、妖怪人間ベムと同じ哀愁が漂う

コトブキ 『ダーク・フェニックス』は、作品として僕は面白かったですけど、ファンの間ではけっこう賛否両論なんですよね。

原田 そうなんだ。やっぱりみんなヒーローものを見過ぎちゃってるんじゃないかな。贅沢になってると言うか。

コトブキ 『アベンジャーズ』とかの、街が大破壊されるとか、宇宙を賭けた争い、みたいな作品とくらべると、まぁちょっと地味というか、淡々としてると感じるかもしれないですね。ただやっぱりX-MENっていうのは、このムードなんですよ。キャラクターたちに影があって、それぞれの主張をぶつけあっていくというか。

原田 確かに『アベンジャーズ』は派手だし、本当にスーパーヒーローって感じだけど、このX-MENは、例えるなら『妖怪人間ベム』。特殊な能力を持ってしまったミュータントたちの悲しみが軸になってるというか、哀愁が漂ってるんだよね。

コトブキ  泰造さん、まさにそれですよ。本来ならば「ギフト」って「才能」という意味ですけどX-MENのミュータントたちは、そこを飛び越えて、持ってしまった者たちの悲しみや生きにくさまで描いてるわけじゃないですか。

原田 そういう哀愁を背負ったヒーローって、日本人は好きなはずだよね。だからX-MENはブレずにもっとそれを出せばいいと思うんだよ。ヘタに最近のヒーローっぽさを出そうとすると他のシリーズと対比が生まれない。

コトブキ 今作も、ミュータントを集めて人間と共存していこうというプロフェッサーXと、ミュータントだけで生きていこうとするマグニートーの対立が描かれるじゃないですか。

原田 面白いのは、プロフェッサーXの下にいるメンバーの中にも、それが正しいと思ってない人たちもいるし、みんなそれぞれ考えがあるというのがいいよね。

コトブキツカサさん

コトブキ プロフェッサーX は、人類のためにヒーロー活動して、なんとかいい方向にしようとしてるじゃないですか。大統領や政府に接近して、仕事も引き受けて。でも、その行動にも、ちょっと悲しみの匂いがするんですよね。

原田 今回は時代設定が1992年だよね。話のとっかかりが、人間が作ったスペースシャトルが宇宙で事故を起こして、それを X-MENが助けに行くのだけれど、このX-MENたちが乗ってる宇宙船がすごいんだよ。もう未来の技術が満載というか。だったら最初からこの宇宙船を政府に貸してあげればよかったのに(笑)。

コトブキ 確かに(笑)。そうすれば、そもそも事故は起きなかったですからね。まぁ、X-MENたちは表舞台に立つ機関じゃないからってことでしょうね。

原田  X-MEN同士は無線で通信してるのに、プロフェッサーXと大統領はダイヤル式の電話で話してたりとかね。でも、そういう世界観が面白い。

コトブキ あれはさすがにギャグなんじゃないですか(笑)。

原田 あと、映画の中でミスティークがプロフェッサーXに反発して、「そろいのユニフォームを着てヒーロー気取り?」って、ちょっと自虐的に言うシーンがあるじゃない。そのあと、あのユニフォーム姿でみんなが出てくると、確かにちょっとダサいんだよね(笑)。

コトブキ あえてのアナログ感というか、ヒーローものの伝統と折り合いをつけた結果でしょうね。それに、今回は92年という舞台設定だから、ファッションも含めて微妙に古臭く見えてしまうのかもしれません。

原田 ただ、アクションはそのアナログ感が逆に新鮮で、迫力あったよね。ジーン・グレイとマグニートーがヘリコプターをパワーで押し合うシーンとか、すごかったよ。でも、あの時点でジーンのパワーがマグニートーを超えつつあることが示されていて、ストーリー的にもちゃんと意味がある。悩みながらもパワーと折り合いをつけて、自分が何をするべきかを模索していくところは、X-MENならではのテーマだよね。

コトブキ スーパーヒーロー映画って、やっぱりその時々のブームがあって、ちょっと前までは悩めるヒーローと言うか、ヒーロー自身が内省的に自分のアイデンティティを掘り下げる作品が多かったんですよ。次はその反動で、悩まない痛快なヒーローが出てきたり、タフな女性や前向きで意思の強いキャラクターが増えてきたりとか、いろいろな流れがあるんです。その一方で、X-MENはそういうところにブレないでずっと同じテーマを掘り下げてるから、老舗の安心感みたいなものがありますよね。

原田泰造さんとコトブキツカサさん

X-MENのサイクロップスのバイザーをつけてヒーロー気分

原田 だから、今作は本当に集大成だよね。原点回帰と言うか、シンプルな内容になっていてラストにふさわしいというか。

コトブキ その意味でいうと、ちょっと業界話になってしまいますけど、「X-MEN」シリーズを製作してきた20世紀フォックスをディズニーが買収したっていうことが現実に起こったわけじゃないですか。それが、映画の内容にも多少は影響してますよね。キャッチコピーに「これが最後のX-MEN」って出てますけど、これはストーリーの最終章というだけじゃなく、20世紀フォックスが作った最後のX-MENという意味もあるわけで。

原田 なるほどね。でも、そんな上の事情に左右されてしまうのが、X-MENらしいよ。

コトブキ そんなタイミングで、シリーズを脚本やプロデューサーとして支えてきたサイモン・キンバーグが初監督したっていうのはいい話ですよね。抑えのピッチャーが、最後に勝利投手になるというか、ずっとやってきた人にちゃんと花を持たせてあげるのはいいことですね。

原田 でもX-MENシリーズは本当に終わるのかな? こんなに魅力的なキャラクターがいるのに、やめるわけないでしょ。

コトブキ ディズニー傘下に入って、同じMARVELの「アベンジャーズ」とクロスオーバーした映画になっていくのかどうかですよね。

原田 そういうクロスオーバーにワクワクするっていうのはあるけど 個人的にX-MENX-MENで続けていってほしいなと思う。X-MENだけでアベンジャーズに匹敵するくらいキャラクターがいるんだし、これ以上混ざるとわかんなくなっちゃうから(笑)。

X-MEN ダークフェニックス

© 2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

 

『X-MEN ダーク・フェニックス』

監督・脚本:サイモン・キンバーグ

出演:ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ニコラス・ホルト、ソフィー・ターナー

PROFILE

  • 原田泰造

    1970年、東京都出身。主な出演作に、WOWOW「パンドラⅣ AI戦争」(18)、映画「スマホを落としただけなのに」(18)、NHK「そろばん侍 風の市兵衛」(18)、映画「ミッドナイト・バス」(18)、NHK連続テレビ小説「ごちそうさん」(13-14)、NHK大河ドラマ「龍馬伝」(10)など。

  • コトブキツカサ

    1973年、静岡県出身。映画パーソナリティとしてTV、ラジオ、雑誌などで活躍中。年間映画鑑賞数は約500本。その豊富な知識を活かし日本工学院専門学校 放送・映画科非常勤講師を務める。

韓国の主役級俳優たちの演技は見応えあり 『神と共に 第一章:罪と罰』

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