THE ONE I LOVE

「“愛してる”と言わずに愛を歌いたい」スカート澤部渡が選ぶ愛の5曲

こんな時代だからこそ、愛を聴きませんか、語りませんか――。&M編集部がセレクトした“愛”にまつわる楽曲を紹介する連載「THE ONE I LOVE」。今回は澤部渡さん(スカート)がセレクトした5曲をご紹介。

センスの光るソングライティングで注目を浴び、自身の作品のみならず映画やCMなどの楽曲も手がける澤部さん。藤井隆、Kaede(Negicco)らへの楽曲提供のほか、スピッツ、南波志帆らのサポートミュージシャンとしても多忙を極める、気鋭のミュージシャンだ。

自身のソロプロジェクト「スカート」としては、1年8カ月ぶりとなるメジャー2ndアルバム『トワイライト』をリリース。スタイリッシュでポップな世界と、荒々しさを残すバンドサウンドを融合した力作だ。

今回の取材で澤部さんは、「スカートにはラブソングがないんですよ」とはにかみながら、思い入れのある「愛の曲」について語ってくれた。

 

<セレクト曲>
 1・ スカート「ずっとつづく」
 2・ 柴田聡子「後悔」
 3・ムーンライダーズ「涙は悲しさだけで、出来てるんじゃない」
 4・ 松田聖子「チェリーブラッサム」
 5・RCサクセション「君が僕を知ってる」

 

「“愛してる”と言わずに愛を歌いたい」スカート澤部渡が選ぶ愛の5曲

 

■スカート「ずっとつづく」

ストレートな形ではないにせよ、今回のアルバムでラブソング的な曲っていうのはこれなんじゃないかな。そもそもラブソングがないんですよ。というのも、多くの人が「愛」だとわかる言葉が世の中に少なすぎるんじゃないかと。ズバリ「愛してる」って歌わないと伝わらない。それが僕にはなかなかできなくて。

この曲で歌っているのは、「自分たちの未来は本当に明るいのだろうか」みたいな焦燥にしっかり向き合ってみるべきなんじゃないか、ということ。1人ではできなくても「あなたがいればできるかもしれない」っていう。あるとき少女漫画(※)を読んでいて、「僕もこの世界に入り込んで(登場人物と)結婚したい……なのに、なぜ僕はこの漫画の世界にいないんだろう?」って思ったんですよね。その時の気持ちと、現実の自分の気持ちとをまぜこぜにして書いた歌詞です。

※当時読んでいた少女漫画
岩本ナオ「町でうわさの天狗の子」
草間さかえ「さよならキャラバン」
樹村みのり「菜の花畑のむこうとこちら」
小森羊仔「木陰くんは魔女。」

 

■柴田聡子「後悔」

“ラブソング”と聞いてパッと思い浮かんだのがこれです。(歌詞を読んで)いやあ、完璧ですね。「愛してる」って言葉を使わないラブソングの理想形のひとつです。この歌詞で具体的に好きな部分はですね……全部なんだよなあ(笑)。(冒頭の歌詞)「目深の帽子の奥のまぶたに光が跳ね返る」から、どんどんメロディが駆け上がっていくんですよ。情景描写だけなんですけど、これはもう恋のそれだ、と。で、サビが「ああ、手を取り合うこともないけど 夢のようにただたのしいね」って終わるんですよ。この美しさ! 「たのしいね」ってこういうふうに歌えるんだ、と。

僕もこういう表現をしたいけど、ここまで詩的にはなれない。飛距離のある言葉をバンバン出していやらしくないっていうのは、すごいと思いますよ。それでいて、いま僕が見ているのは、この詞の側面のひとつだと思うんです。もっと違う見方をできる日が来るんじゃないかと思うと、ワクワクしますね。

 

■ムーンライダーズ「涙は悲しさだけで、出来てるんじゃない」

ムーンライダーズはどれも大好きなんですけど、歌詞という観点で無理やり1曲挙げるなら、これかなあ。(鈴木)慶一さんの歌詞が好きなんですよ。この曲は昔で言う“男らしさ”みたいなものと、その対極のものが同居してる感じがカッコいい。たとえば「これは運命なんかじゃない わからない?」って、聞くんですよ。言い切る強さと、それに対する居心地の悪さみたいなものを感じるんですよね。

これも「愛してる」と言わないで、いかに愛情を伝えるかという曲だと思います。直接的に、最短距離で言うことによって取りこぼしてしまうものが絶対にあると思うんです。それだったら、僕は遠回りをして、強い言葉では言わないかもしれない。もしかしたら相手に伝わらないかもしれないけども、そういう風に言わなきゃいけないと思います。

 

■松田聖子「チェリーブラッサム」

怖い曲だなって聴くたびに思います。歌詞がとにかく、強い言葉ばっかりなんですよ。「何もかもめざめてく」もそうだし、「新しい私」もそう。「あなたとの約束が叶う」っていうのもすごく怖いですよね。あまりにもまっすぐに聞こえる。言葉がずっと強く向かってきて、一言も聞き逃せない怖さがあります。

本当にすごい歌詞で、ある種の究極だろうなと。大学生の頃、何もうまくいかなかった時期に毎日聴いてました。当時、この曲と一緒に聴いていたのがトシちゃん(田原俊彦)の「ハッとして! Good」なんですよ。“ハレとケ”だと思うんですけど、それでバランスを取ってたのかな。「ハッとして! Good」のイントロで、ブラスが1音ずつ重なっていくところを聴くと、その瞬間バキッと覚醒するんです。めちゃくちゃ元気になる(笑)。

 

■RCサクセション「君が僕を知ってる」

(忌野)清志郎さんは別格の詩人だと思います。「今までして来た悪い事だけで 僕が明日有名になっても」っていう歌い出しは素晴らしいですよね。完璧すぎて、どうしゃべっていいかわかんないな(笑)。「コーヒーを僕に入れておくれよ」のところもいいですね。ここでバンドの演奏が薄くなって、ぐっとプライベートな距離感になる瞬間がたまらないです。

あと、最後の「わかっていてくれる」のリフレイン。あのメロディと「わ」「かっ」の母音の感じとかが、すげえカッコいいなと思いますね。言葉のリズムの良さと、それをあのメロディに乗せる清志郎さんの身体性みたいなものには憧れます。僕にはできない。清志郎さんが亡くなった後、この曲を聴くだけで泣いちゃうみたいな時期がしばらく続きました。

 

■プレイリスト

 

■スカート最新アルバム『トワイライト』

■Profile
スカート
ソングライター/ボーカリスト/ギタリストの澤部渡によるソロプロジェクト。2006年、多重録音によるレコーディングを中心に活動を開始。16年にリリースしたアルバム『CALL』が各方面で高評価を受ける。17年、『20/20』でメジャーデビュー。近年は映画やドラマ、CMの楽曲制作や他アーティストへの楽曲提供も手がけており、今年、2年ぶりとなるFUJI ROCK FESTIVAL出演も決定している。

<関連リンク>
スカート オフィシャルサイト
https://skirtskirtskirt.com/

澤部渡(skirt_oh_skirt)| Twitter
https://twitter.com/skirt_oh_skirt

スカート | ポニーキャニオン
https://www.ponycanyon.co.jp/artist/31400100

(企画制作・たしざん、ナカニシキュウ)

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