小川フミオのモーターカー

ラグジュアリーなパーソナルカーという分野を開拓した初代サンダーバード

モータージャーナリストの小川フミオさんが、過去に世界各地で製造・販売された数々のクルマの中から、印象に残る名車を紹介する連載です。今回は、1954年に発売された米国フォードのサンダーバードを振り返ります。

米国車のなかで、日本でもっとも知られた名前は? というと「サンダーバード」を挙げるひとも少なくない。でも、どんな形? と重ねてたずねると、意外にはっきりとした答えは返ってこない。その理由は、サンダーバードはデザイン変更が頻繁だったからだ。しかし、ベストのモデルを挙げるならば、なにはともあれ、1954年に発売された初代だろう。

(TOP画像はフロントバンパーの形状が変更された第1世代最終の57年モデル)

全長4.5m程度の比較的コンパクトな車体(モデルイヤーごとに全長も変わった)に、2人乗りの小さなキャビン。ボディーはテールフィンを備え、躍動感を感じさせるものだ。デビューして翌年にはマイナーチェンジが行われ、スペアタイヤをリアにかつぐような“コンチネンタルスタイル”が採用され、デザイン上の特徴となっている。

サンダーバード

ポートホールと呼ばれる丸窓つきのハードトップは56年モデルに用意された

サンダーバード

コンチネンタルスタイルと呼ばれるスペアタイヤをリアに搭載したスタイルは56年モデルから

当初は、シボレーが53年に発売したコルベットに刺激されて企画された。ただしスポーツカーは目指さず、大パワーのラグジュアリーパーソナルカーという独自の分野を開拓した。

エンジンは4.8リッターのV8が用意され、2.59mと短めのホイールベースと、1.7トンという(当時の米国車のなかでは比較的)軽めの車体には、充分以上のパワーを供給したのだった。

さきにベストのモデルと書いたが、初代サンダーバードのなかでも、もっとも人気の高いモデルが、2人乗りのボディに、5.1リッターのパワフルなV8エンジン搭載の1957年モデル(第1世代の最終年型)だ。「サンダーバード・スーパーV8」と呼ばれたこのエンジンは大きな気化器を2連で備え、272馬力を発生した。

たっぷりのクロームが使われたインテリアは当時の日本人の憧れだった

たっぷりのクロームが使われたインテリアは当時の日本人の憧れだった

サンダーバード

パワフルなV8搭載の2座オープンスポーティモデルとして企画された55年登場の最初のモデル

さらにチューンナップした仕様もあり、ひとつは286馬力、さらにスーパーチャージャーを備えて300馬力を超える最高出力を誇る57年型サンダーバードも少量が生産された。

マニアはこれを「Eコードのサンダーバード」あるいはTバードというサンダーバードの愛称をもじって「Eバード」と呼んだりする。Eコードとは、車台番号に「E」というアルファベットが入っているからで、同じフォードの「マスタング」における高性能モデル「Kコード」に相当すると言っていいだろう。

58年型として登場した第2世代は、4灯式ヘッドランプのフロントマスクに低さと長さが強調されたスタイリングとなった。なにより、「ひとが乗れない」「荷物をたくさん積めない」という市場の声に応えるかたちで4シーターになり、車体も5mを超えるまで大型化。スポーティーモデルからラグジュアリーモデルへと完全に変身したのだ。

ラグジュアリーなパーソナルカーという分野を開拓した初代サンダーバード

初期モデルは全長4.45mとコンパクト

サンダーバード

エグゾーストパイプがバンパーと一体型になるのは56年型

「スポーティーなパーソナルカーを作ろう」という当初の目論見はピュアだったので、第1世代は明確なキャラクターのモデルとなった。しかし、“顧客がこう言うから……”と、いろいろ付け足していくと、プロダクトのコンセプトは曖昧(あいまい)になる。難しいところだ。

(写真=Ford Motor Company提供)

PROFILE

小川フミオ

クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない……のが悩み(笑)。

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