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リュックを着る? 都会の生活にフィットした異色のアウトドアジャケット

ファッションディレクター・山口壮大さんによる連載エッセー_&_」。誰もが知っているモノや価値観をかけ合わせて生まれた、ユニークなファッションアイテムを紹介します。

今回のアイテムは、山口さんが愛用するコム ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン」と「ザ・ノース・フェイス」のコラボジャケット。背面にバッグ(リュック)が取り付けられた異色のアウトドアジャケットです。 

機能とデザインがせめぎあう“秀逸なコラボレーション”

リュックを着る? 都会の生活にフィットした異色のアウトドアジャケット

僕がこのジャケットに出会ったのは、1年前の、まだ肌寒い春のこと。

コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マンとザ・ノース・フェイスという、現代のファッションをデザイン面でも機能面でも牽引(けんいん)する二大巨頭がコラボレートしたこのアイテムは、数々のメディアで紹介され、発売前から多くのファッションピープルの関心を集めていました。

僕はファッションには強く関心があるものの、トレンドが大好きかと言われたら、そうでもありません。ただし、このアイテムに関しては、話は別です。

一般的にファッション性(≒ビジュアルの美しさや独創性)と機能性はデザインのセオリーが異なり、片方を追求するともう片方が失われる関係性にあります。ところがこのコラボジャケットは、従来のアウトドアジャケットを解体、再構築したようなファッション性を強く打ち出していながら、高い機能性も有しています。

この相反しがちな二つを両立させてしまう両ブランドのマインドとプライドに感動して、めずらしく発売日にショップを訪れ、念入りに試着し、その飛び抜けて高価な金額(20万円!)に驚きながらも、ブランドへの敬意を示したくて購入しました。

購入から1年が経ちましたが、当たり前に存在する物事をかけ合わせて新しい価値を創造したこのジャケットへの感動がいまだに色あせてないことから、今回取り上げることを決めました。

街着に、旅行に、出張に、様々なシーンで愛用してきた僕なりの視点で、魅力をお伝えします。

タウンユースで大活躍“スタイリッシュなガジェット感”

リュックを着る? 都会の生活にフィットした異色のアウトドアジャケット

こんなアイテムを紹介しておいて何ですが、そもそも僕はファッションアイテムとして、アウトドアジャケットにあまり魅力を感じていませんでした。機能性が優れているのは理解していますし、デザインとしてスタイリッシュなことも分かります。

しかし、アイテムとして優等生過ぎて、ファッションという価値の移り変わりが激しい不確かなものではなく、プロダクトのような安定感のあるモノと捉えてしまって、なんだか物足りない気持ちになってしまっていました。

ところがこのジャケットは一味違います。従来のアウトドアジャケットは機能性を見せびらかさない、ミニマムなデザインを施しているのに対して、このジャケットは、機能性の高さを誇張したデザインを採用しています。便利なプロダクトというよりも、斬新なガジェットと言った方がしっくりくるようなデザイン。そんな実験的なデザインでありながら、奇跡的に使いやすさも備えています。

都会での生活を便利に支えながら、デザイン面でも主張がある。コーディネートにおける華々しい主役も、味のある脇役も1着でこなしてくれるからこそ、袖を通す度に違った魅力を感じさせてくれるのかもしれません。

ビジネスシーンにもスマートに対応 デザイン性の高いリュックサック

リュックを着る? 都会の生活にフィットした異色のアウトドアジャケット

このジャケットが最も実力を発揮するのは、ビジネスシーンかもしれません。緊張感のある高密度で織り上げたナイロン素材は、ビジネスルックとも相性が良く、小型のガジェットの持ち運びにも役立ちます。

さらに、電車やバスなど、移動の際にも大活躍。混雑する公共機関の中で、“リュックを下ろして、アウターを脱いで抱える”なんて、考えただけでも煩わしいですが、このジャケットであれば問題なし。

“アウターを脱いで、抱える”だけなので、公共の場でもスマートに使うことが出来ます。

机に備え付けられた、かばん専用のフックにもこの通り。高機能素材は汚れにも強いので、床に直置きしても平気です

机に備え付けられた、かばん専用のフックにもこの通り。高機能素材は汚れにも強いので、床に直置きしても平気です

さらに特筆したいのが、首元にハンガーループを模してデザインされた、リュックサックの“持ち手”部分。様々なハンガーに掛けられることはもちろん、手で持ったり、フックにつるしたり、たくさんの場面で使える優れものです。

新しい服 “リュックサックジャケット”としての可能性

リュックを着る? 都会の生活にフィットした異色のアウトドアジャケット

リュックサックの歴史をたどれば、背負う、掛ける、持つ、をはじめとする、様々な携帯方法が生み出されています。

一方でジャケットの歴史をたどれば、背中に大きなポケットが付いている狩猟用のジャケットから、大小様々なポケットが付いているアウトドア用のジャケットまで、数多くのデザインが生み出されています。

しかし、あくまでもそれぞれが“かばん”と“服”の領域に収まっており、どこのブランドも双方の境界を超えるデザインを生み出し、プロダクトに落とし込むまでには至らなかった、というのが実情ではないでしょうか。

65リットルの大容量を誇る、ノース・フェイスの大型バックパックのスタンダードモデル”TERRA 65”の収納力はこの通り。2層に分かれた背面部分は、左右から別々にアクセスが可能。A4サイズがすっぽり収まります

65リットルの大容量を誇る、ノース・フェイスの大型バックパックのスタンダードモデル”TERRA 65”の収納力はこの通り。2層に分かれた背面部分は、左右からアクセスが可能。A4サイズがすっぽり収まります

ここからは僕の勝手な臆測ですが、恐らくこのリュック&ジャケットは、今の日常生活に必要だから考案された代物ではなく、純粋に“ファッションとしての格好良さ”を求めて生まれたアイテムだと思っています。

僕もこのジャケットが、“役立ちそう”だから購入したわけではなく、“格好良さそう”だから着こなしてみたいと思い、購入しました。

撥水(はっすい)性の高い生地は雨にも強く、随所に設けられたベンチレーション(通気孔)を開閉することで換気や体温調節も簡単に

撥水(はっすい)性の高い生地は雨にも強く、随所に設けられたベンチレーション(通気孔)を開閉することで換気や体温調節も簡単に

ガジェットが目覚ましい進化を遂げているのは、格好良さそうだから多くのユーザーが使いこなし、そこで寄せられた様々なフィードバックを生かした結果だと思いますし、スポーツをはじめとする機能が優先される分野の服にも、同じことが言えるかもしれません。

情報伝達の加速につられるように消費者はモノを購入してはすぐに手放し、メーカーはその消費スピードに追いつかれないよう生産性を高めている——これが世界で最も格好良いはずの“ファッション”を取り巻く現在の流通サイクルです。果たしてこのような現状で、モノや文化は進化するのでしょうか?

ガジェットが新たな可能性を拡張し続けるように、ファッションの世界でも、現代の日常をスマートに生きるための新しいデザインを僕は見てみたい。“_&_”なアイテムには、その可能性が詰まっているのではないかと思っています。

(スタイリング/山口壮大、撮影/上西由華、ヘアメイク/ 豊田陽介、モデル/影山友哉、Louis Ségard〈トップ写真・左 〉、 Makko Henkelman〈同・右〉

アイテム情報

THE NORTH FACE × COMME des GARCONS JUNYA WATANABE MAN 2018 S/S

TERRA 65 JACKET

*昨年発売した製品なので、正規店では現在取り扱いがありません

PROFILE

山口壮大

1982年生まれ。文化服装学院卒業 (第22期学院長賞受賞)。2006年よりスタイリスト、ファッションディレクターとして活動開始。様々なファッション媒体でのスタイリングを経て、大手百貨店などのショップディレクション及び、商品企画を務める。既存の概念に捉われない、新感覚のファッションを提案している。

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